クウェート:ビドゥンの子どもに対する教育差別をやめよ

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2023年9月 1日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:クウェート
トピック:子どもの権利

クウェート政府は、クウェートに生まれ育ちながら国籍がないビドゥンの子どもから平等な教育を受ける権利を奪う政策を取ってきた。その結果、ビドゥンの子どもは市民権を持つ子どもが通う公立よりも質的に劣るとされる私立に通うしかない上、学費負担が親にのしかかっている。

ビドゥンの子どもはクウェートで生まれ、その親の多くもクウェート生まれだがクウェート国籍を認められていない。国籍がないことでビドゥンは多数の社会的経済的不利益を被っている。

何世代にもわたり、政府はビドゥンを「不法滞在者」とみなし、ビドゥンの子どもを無償教育から排除してきた。アムネスティはクウェート政府に対しこの制度を見直し、ビドゥンへの差別を撤廃するよう求める。

満足な教育が受けられない私立学校

クウェートでは、クウェート国籍があれば、初等、中等教育を無償で受けられ、一定の成績を収めれば高等教育も国費で受けられる。

一方、ビドゥンの子どもはエアコンもない狭い教室で、50人以上が肩を寄せ合って授業を受ける。環境は劣悪でも私立学校の授業料は高額で、親には大きな負担がのしかかる。

1987年以来、クウェート政府はビドゥンを、たとえ彼らやその前の世代がクウェート生まれであっても、公に「不法滞在者」とみなしている。ビドゥンの子どもたちが公立学校に通えるのは、親や祖父が軍や警察に勤めているか勤めたことがある場合に限られる。

取得できる身分証明書の組み合わせによってさまざまな行政上のカテゴリーに分類され、その分類により教育の権利をはじめとしたさまざまな権利を受けられるか否かが決まる。

ビドゥンの子どもは自宅の向かいに公立学校があっても、数キロ先の私立学校へ行かなければならず、学校の環境は「不潔で設備が悪い」と生徒に酷評されている。

また、「学費の工面が大変で、数年も通わせる余裕はない」という親が多い。アムネスティの聞き取りに応じた5家族のいずれもが、「少なくとも家族のうちの1人は学費不足か身分証明書がないために教育を受けることができなかった」と語った。

割り当てによる制限

所定の成績を収めたクウェート国民は、同国唯一の国立大学クウェート大学の講義を無償で受講できるし、海外の大学に行く場合も国が学費を負担する。

これとは対照的に、ビドゥンの学生がクウェート大学で学ぶのは容易ではない。入学枠は限られており、さらに政府発行の有効な身分証明書を持つビドゥンしか入学が認められない。多くのビドゥンは身分証明書を発行する政府機関に登録していないか、身分証明書を持っていても恣意的に別の国籍に振り分けられることを恐れて更新をやめている。

4人のビドゥンがアムネスティに、身分証明書の更新時に国籍をイラクなど他国籍に変えられたと語り、その証拠も示した。

ビドゥンが抱える問題の解決策は、政府がビドゥンの無国籍状態を解消することに尽きる。同時にビドゥンの子どもたちがクウェート国籍の子どもと同等の教育を受けられるようにすることも求められている。

背景情報

政府の推計では、クウェート国内に約10万人のビドゥンが住む。

1965年に終った国籍登録は、国の中心部、特に首都クウェート市周辺に集中した。政府は郊外の部族に登録を勧めたり、市民権取得の重要性を訴えたりすることはなかった。

1980年、クウェートが国籍法を改正し、母親がクウェート国籍でも父親が無国籍なら子どもに国籍を認めなくなったため、ビドゥンをめぐる状況はさらに悪化した。

クウェート政府のビドゥン差別は、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約、社会権規約(経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約)などの義務に違反する。

アムネスティ国際ニュース
2023年8月17日

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