COP28開催 気候と人権の大惨事を防ぐため脱化石燃料で合意を

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2023年12月 5日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:気候変動と人権

COP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)で化石燃料の生産・利用停止で合意することが、気候変動による破局を防ぎ、数十億人の権利を脅かす未曾有の人権危機に歯止めをかける上で不可欠だ。

アムネスティはCOP28で、化石燃料の公正かつ迅速な段階的廃止と人権を尊重した再生可能エネルギーへの移行に各国が同意することを求める。

新たな化石燃料計画が進めば、今世紀の地球温暖化を産業革命以前の水準よりも1.5℃以内に抑え、壊滅的な気候被害を食い止めることはできない。COP28は、各国が化石燃料から脱却し、気候被害と人権侵害という恥ずべき記録を葬り去ることに合意する時だ。

化石燃料産業は、少数の企業や国家に莫大な富をもたらし、再生可能エネルギーへの移行を阻み、化石燃料の反対派を沈黙させることに関心がある。手を打たなければ、清潔で持続可能な環境に対する人びとの権利を危険にさらすことになる。

有限な石油や化石ガス、石炭を枯渇させるまで採掘を続ければ、化石燃料がすでに引き起こした甚大な被害を長引かせ、悪化させる事態に陥る。代替エネルギーは身近にあり、再生可能エネルギーの生産量は急速に伸びているが、さらに多くの投資を必要とする。COP28は、化石燃料に依存しない持続可能な未来に向け、迅速で公平な道筋をつけなければならない。

化石燃料と未曾有の人権危機

化石燃料の採掘と燃焼で蓄積された大気中の温室効果ガス(特に二酸化炭素)は地球温暖化の主因である。地球温暖化により、嵐、干ばつ、洪水などの異常気象が激しくなり、かつ頻繁に発生するようになっている。そして、人命が失われ、財産やインフラが損害を受け、生活は破壊され、生態系は崩壊し、生物多様性が減少し、作物が育たなくなって食糧不足となり、資源競争は激化し、紛争と移住ももたらしている。これらはすべてさまざまな人権侵害に関連する。

2020年、化石燃料の燃焼による大気汚染で、約120万人が亡くなった。燃料施設周辺の住民は、呼吸器疾患、妊娠への悪影響、心血管疾患にかかるなどの被害をしばしば受ける。また、石炭採掘は水源を汚染し、石油やガス田からの遊離ガスを焼却処分するフレアリングは、有毒な大気汚染物質を放出する。こうした被害に最もさらされる住民は、さまざまな形の差別に直面している。

また、化石燃料の探査、生産、輸送は、しばしば壊滅的な汚染と環境破壊を伴う。アムネスティは、数十年にわたり、ナイジェリアのナイジャー・デルタでの石油流出による被害を調査し、シェル社やその他の企業が、適切な生活水準や清潔な水、健康に対する地域住民の人権を傷つけていることを公表してきた。企業側は救済を拒否している。

先住民族はとりわけ影響を受けやすい。残された化石燃料の多くが彼らの先祖伝来の土地に眠っているためだ。搾取的な企業は、情報を得る、意思決定のプロセスに参加する、自由意思による事前の十分な情報に基づいて同意する、といった先住民族の人びとの権利を踏みにじることが多い。例えばインドのアディバシの人びとは、適切な協議がほとんどないままに土地を取得され、生態系が破壊され、暮らしが脅かさている。

「清潔で健康的かつ持続可能な環境への権利」は国連人権理事会で承認され、100カ国以上の国の憲法に明記されている。また、「ビジネスと人権に関する国連指導原則」は、企業には「害を与えない」責任があると明記している。

一方で、環境活動家が、ますます標的にされ、殺害されている。化石燃料企業の中には、「市民参加に反対する戦略的訴訟」(SLAPPs)を利用して環境活動家の声を封じようとする動きもある。活動家を処罰する法案を提案するようシンクタンクに資金を提供する企業すらある。

化石燃料企業は、グリーンウォッシング(環境に優しいイメージを装った広告活動)や偽情報を通じて世論を形成し、議員や当局へのロビー活動で規制を逃れようとしている。また、COPのような多国間会議に影響を及ぼすことで、気候危機への各国の対応を遅らせようとしている。COP28の議長をアラブ首長国連邦(UAE)の産業・先端技術大臣でアブダビ国営石油会社の最高経営責任者でもあるスルターン・アル・ジャーベル氏が務めるが、明らかに利益相反だ。

救済とエネルギー転換

アムネスティは化石燃料資源を永久に地中に眠らせておくことを提言する。G20に参加する先進国や温室効果ガス排出量の多い国、化石燃料を生産する高所得国は、石油、ガス、石炭の生産の拡大をやめ、新たな道を切り開くことに同意する必要がある。さらに、プラスチックの製造など、非エネルギー目的での化石燃料の採掘も大幅な削減が求められている。

国家が化石燃料の使用と生産の支援に費やしている巨額の補助金も、社会から疎外されてきた人びとへの適切な社会的保護を確約した上で、廃止する必要がある。

エネルギー関連企業は、炭素の回収と貯留のような科学的裏付けのない技術に頼ることは許されない。ロビー活動や、一般市民が気候変動についての正確な情報を知る上で妨げとなるグリーンウォッシングも控えるべきだ。

金融機関は、化石燃料の拡大につながる投資を控え、既存の資金提供に関しても、今世紀の地球温暖化を1.5℃未満に抑える国際的に合意された目標に沿って、段階的に縮小・廃止しなければならない。

歴史的に温室効果ガスの最大排出国である先進国は、開発途上国に対して十分な気候変動対策資金を提供し、公平で人権に配慮しつつ化石燃料生産の段階的廃止を世界的に達成し、再生可能な電力源への公正な移行を促進するという約束を果たす必要がある。

背景情報

国連気候変動会議は11月30日から12月12日まで、世界有数の石油・ガス産出国であるアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催される。アムネスティのアニエス・カラマール事務総長も出席する。

アムネスティ国際ニュース
2023年11月13日

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