COP28:損失・損害基金への拠出 必要額には程遠く

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2023年12月 9日
[国際事務局発表ニュース]
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トピック:気候変動と人権

「損失と損害」基金は、地球温暖化が引き起こしてきた過酷な気象災害に苦しむ発展途上国を支援する目的で設立されたもので、今回の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では初日の11月30日にこの基金へ各国から計4億2000万ドル(約620億円)の資金拠出が表明された。

この日、「損失・損害」基金の運用方針が採択された。地球温暖化の結果として、世界中の人びとや地域がすでに甚大な人権侵害に苦しんでおり、何年もの間その対策に協議を重ねてきた結果、合意に達したこと自体は歓迎すべき一歩だが、実際にはわずか数カ国が資金拠出に応じたにすぎず、拠出額は必要とされる額を大幅に下回る。

この拠出額は、かろうじて基金を稼働できる程度にすぎない。暴風後の自宅の再建が必要な人びと、農作物が壊滅状態に陥った農民、気候危機で永続的に移住せざるを得ない人びとなど、災害に見舞われた人びとや地域に対し実質的な支援を提供するには何十億ドルもの資金が必要である。

昨年、化石燃料企業が気候を破壊しつつ得た莫大な利益や、一部の拠出国がこれまで膨大な量の温室効果ガスを排出し続けてきた事実を考えれば、この初期の拠出額は期待外れなほど少ない。一部の拠出国を含む多くの国は、毎年、化石燃料産業に総額7兆米ドルの補助金を提供しており、それに比べれば微々たる額でしかない。

アムネスティは、特に先進諸国や高所得の化石燃料生産国に対し、気候危機が地球全体に及ぼす脅威と数十億人の人びとへの影響に見合う規模で、新たに基金への追加拠出を約束するよう求める。

基金の運用において人権が一切触れられていないことも深刻な懸念事項だ。特に当初は、人権擁護策の実施において評価の分かれる世界銀行が運営する可能性があり、重大な懸念が残る。

世界銀行に対しては、基金をできるだけ利用しやすくし、途上国の負債拡大を回避するために融資ではなく助成にするよう要請する。

背景情報

昨年のCOP27は「損失・損害」基金の設立で合意したが、今年は、基金の資金調達と運用面での意見の不一致がほぼ通年にわたり続いた。

各国が表明した基金への初期拠出額は以下通り。EU:約2億4,500万ドル(ドイツからの約1億900万ドルを含む)、アラブ首長国連邦:1億ドル、英国:約5,100万ドル、米国:約1,750万ドル、日本:1,000万ドル。

COP28は、11月30日から12月12日までドバイで開催されている。アムネスティの代表団もこの会議に参加している。

アムネスティ国際ニュース
2023年11月30日

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