- 2024年3月25日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:女性の権利
マラウイ、ザンビア、ジンバブエで非公式の国境を越えた取引(以下「非公式貿易」)に携わる女性たちは、ジェンダーに基づく暴力や経済的搾取から保護されず、まっとうな仕事に就く権利も奪われている。
アムネスティの調査で、3カ国で非公式貿易を行う女性は、国境管理当局の職員などから暴行、性的嫌がらせ、脅迫などを受けることが多いことがわかっている。
非公式貿易に従事する女性はさまざまな形の虐待を受けやすく、国の保護を受ける上でも差別的扱いを受ける。しっかりした法的枠組みや法執行の仕組みがないため、非公式貿易の女性に対する不当な対応の問題は深刻になるばかりだ。
アフリカ南部の2018年の非公式貿易額は176億米ドル(約2,625億円)で、貧困状況の改善に大きく寄与する可能性を示している。非公式貿易の担い手は主に女性で、全体の60から90パーセントを占める。
経済的搾取と社会的保障の欠落
アムネスティの調べで、非公式貿易に携わる女性への経済的搾取が横行し、当事者が生計を立てることが困難になっていることが明らかになった。わいろ、窃盗、物品の没収などの搾取がまん延し、国境での性差別や法的保護の欠如が搾取に拍車をかけている。
国の保障を受けられない多くの女性は、最低限の生活水準すら維持できず、体調不良で仕事を休めない、育児面でのサポートをほとんど受けられないといった問題を抱えている。
マラウイ、ザンビア、ジンバブエでは、正規労働者が社会保障制度で優遇される一方、非正規労働者の多くが十分な支援を受けられない。特に女性の場合、非正規労働者に対する出産などの予測できない事態に対応する社会的保護がない。
3カ国は、まずはこれらの問題に対処し、非公式貿易に携わる女性の権利を優先すべきだ。こうした女性の尊厳と権利を保護するために、国際労働機関(ILO)が提唱する「ディーセント・ワーク」(働きがいのある人間らしい仕事)の原則に従った総合的な改革が欠かせない。
非公式貿易は女性が大半を占めるにも関わらず、非公式貿易協会(CBTA)では男性が主導的な立場を取ることが多く、政策についての議論や政策決定の手続きで女性の関与が少ないことも、アムネスティの調査で明らかになっている。
期待と厳しい現実
非公式貿易はアフリカの地域統合を推し進め、食料を確保する上で重要な役割を果たしてきた。アムネスティが聞き取りをした複数の女性は、非公式貿易で家族の健康や教育が改善されたという。1人は、「この商売が、私や家族の希望の光だった。子どもを大学まで行かせることができた」と話した。
仕事の選択肢がない中で非公式貿易に就いた人や、自分や家族が貧困から抜け出せるようにしたいと思ってこの仕事を始めた女性も多いが、その代償は大きい。
さらに、ジェンダーに基づく暴力の被害者は、非難や報復の脅しを受けたり、法的支援に手が届きにくいなど、社会的、文化的、制度的な圧力を受ける。女性の権利保護には、こうした問題への対応が欠かせない。
マラウイ、ザンビア、ジンバブエは、制度上の問題に対処し、人権原則を優先する政策を打ち出し、非公式貿易に携わる女性の安全と福祉を確保すべきだ。ディーセント・ワークの原則に則った相互の協力と総合的改革があってはじめて、地域全体が、女性の尊厳と権利を守る上での一歩を踏み出すことができる。
背景情報
非公式の国境越え取引とは、規定の貿易手続きを経ない国家間のモノやサービスの取引をいう。
女性の権利と労働権に関する人権文書に従って行動することが、非公式貿易の女性を人権侵害から守る上で要となる。女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約(社会権規約)、アフリカ人権憲章に基づく女性の権利議定書(マプト議定書)には、女性の権利が明記されている。
ジェンダーに基づく差別と闘い、南部アフリカの女性の経済的、社会的、文化的権利と働く権利を促進するための文書には、マラウイ、ザンビア、ジンバブエの3カ国も署名している。
アムネスティ国際ニュース
2024年3月8日