- 2024年5月16日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:気候変動と人権
4月30日、G7加盟国は排出削減対策のない石炭火力発電を2030年代前半までに段階的に廃止することに、合意した。しかし、気候変動への正義と公正の実現には、2030年代前半ではあまりにも遅すぎる。また、合意内容には問題点もある。
石炭火力の廃止は、気候変動の影響を最も受ける人びとにとって待ったなしだ。石炭は、最も多くの汚染物質を排出するエネルギー源の一つであり、特に低所得国や社会から取り残された地域の人びとに重大な健康被害を及ぼしている。
人権を守るためには、資金を投入して緊急かつ公平に、すべての化石燃料を段階的に全面廃止することが不可欠だ。全世界で石炭生産と石炭エネルギーへの融資を停止すると同時に、廃止への移行時は石炭産業労働者への支援も欠かせない。
今回の合意では、全石炭消費の約30パーセントを占める鉄鋼生産での石炭使用は抑制されていないてようだ。「温室効果ガス削減対策がされていない」石炭火力だけが対象になっている点も、他は使用し続けてもいいという印象を与えかねない。また、排出削減は、炭素回収・貯留、アンモニアや水素と石炭との混焼などの技術に依存するが、こうした技術は未検証で何らかのリスクを伴う可能性がある。十分に抑制することが難しい石炭汚染は、使用されるたびに健康と気候に被害を及ぼす。
この合意によって、メタンを主成分とする天然ガスの利用が、代替エネルギーとして推進されるようなことがあってはならない。天然ガス開発は地球温暖化の主因である温室効果ガスの放出につながる。
世界で最も所得が高い国として、また温室効果ガス排出の主要排出国として、G7各国は、低所得国が化石燃料から脱却できるよう支援する重大な責任を負っている。
アムネスティ国際ニュース
2024年4月30日