南米で市民社会活動を制限する法案相次ぐ

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2024年6月29日
[国際事務局発表ニュース]
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アムネスティは、南米地域の人権を擁護し促進する市民社会団体の活動を抑制し、脅かす法的取り組みの拡大に警鐘を鳴らしている。

パラグアイ、ペルー、ベネズエラそれぞれの議会は現在、市民団体や市民グループを恣意的に制限し、不当に干渉するような法案を審議しているところだ。この地域の特定の国々が採用してきた退行的で権威主義的な問題のある手段に習ったものだ。審議中の法案が成立すれば、市民団体は弾圧を受け、市民による正義の追求が危うくなり、人権の進展を損なうおそれがある。

国家は人権団体の声を封じるのをやめるべきだ。誰もが自由に参加でき、報復を恐れずに自由に意見を表明できる市民社会スペースを制限してはならない。抑圧的な傾向が続けば、この地域の人権は深刻な打撃を受けることになる。

これらの法案が成立すれば、特に結社の自由、表現の自由、プライバシーの権利、政治に参加する権利、人権を促進し擁護する権利に関し、国家の国際的人権義務に違反することになる。

同じ目的を異なる手段で:市民社会の抑圧

ペルー議会はここ数カ月、市民社会団体や国際協力資金を受け取る機関の活動を阻害しかねない6つの法案を審議してきた。これらの法案は6月5日に外交委員会で承認されているが、議会の本会議あるいは常任委員会で検討される可能性がある。

一方、パラグアイの上院は昨年12月以来、「非営利組織の管理、透明性、説明責任」に関する法案を分析しているが、この法案は市民団体の人的資源や資金の利用を不当に制限し、過度の処罰を設ける可能性がある。

ベネズエラでも「非政府団体と関連組織の管理、規制、運営、資金調達」法案が今年1月、議会の予備審議で承認され、国連特別報告者の間で懸念の声が上がった。同法案には、政治的反対意見を封じるために、表現の自由や結社の自由を抑制しようとする最近の動きを補完する狙いがある。

これらの法案の手法はそれぞれ異なるが、いずれの法案にも憂慮すべき点がいくつかある。法案の根拠として、市民社会団体の責任を追及するための規制はすでに設けられているにもかかわらず、透明性を高める必要があるとされているのだ。実際のところ、法案には、市民社会団体の活動・財務情報を恣意的で不当に管理するために、しばしば曖昧で不正確な文言が使われている。このような措置は、市民団体が資金提供を受ける上で必要な人材や時間や許可の確保を難しくするおそれがある。また、団体の活動の独立性を危うくし、その会員や権利擁護を求める人びとの安全やプライバシーを脅かしかねない。

法案が成立すれば、これらの法律に基づく不当な措置に従わない市民社会団体は、正当な手続きもなく解散させられ、ベネズエラの場合、団体の会員が刑事訴追を受ける可能性もある。国際人権法は、いかなる場合でも結社の自由に対する過度の制限は認められず、権利自体を危うくするほどの重い負担になってはならないと定められており、これらの処罰はすべて人権法違反だ。

法案はすべて、幅広い市民の参加を経ずに審議されてきた。市民団体に影響を与える法律を制定する際には、すべての関連団体や当事者と徹底的に協議する必要がある。利害関係者には、人権擁護者や市民団体も含まれるべきであり、いずれの個人も組織も報復を恐れることなく参加できるべきだ。

市民を萎縮させる法律:アメリカ大陸における憂慮すべき傾向

残念ながら、パラグアイ、ペルー、ベネズエラの最近の状況は、3国に限ったことではない。むしろ、この3カ国の動きは、市民社会の行動を制限し、異論を唱える声を封じる法律の成立を他の国が争うようにして真似るという、憂慮すべき地域的、世界的傾向を反映している。この傾向は、ニカラグア、グアテマラ、エルサルバドル、メキシコでも見られ、これらの国々では市民社会に関連する法案が議論されたり、承認されたりしている。

市民団体や市民社会運動は、人権を擁護し、政府機関の独立性を守り、不処罰を阻止する礎になっている。この地域が直面する多くの人権侵害は、暴力や強制移住など国境を越えて起きているため、結社の自由が脅かされるようなことがあれば、たとえ局地的な問題であっても、地域全体の人権状況を悪化させることになりかねない。

アムネスティ国際ニュース
2024年6月21日

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