- 2024年7月18日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:表現の自由
アムネスティは世界中で抗議活動が脅かされていることに立ち向かうキャンペーンの一環として、59カ国の13歳から24歳までの人権活動家にアンケートを送り、1,400件の回答を得た。回答から5人に3人がオンライン上で嫌がらせを受けていることがわかった。
調査結果は、若い活動家は憎悪のコメント、脅迫、ハッキング、ドキシング(個人情報の暴露)などの嫌がらせを受けていることを示している。嫌がらせは、しばしば当局によるオフラインでの嫌がらせや政治的迫害に発展する。ソーシャルメディアのプラットフォームを運用するIT大手のほとんどは、この事態に何の対策も取らず、被害者は沈黙を強いられるばかりだ。
嫌がらせを最もよく受けているのは、ナイジェリアとアルゼンチンの人たちだった。
ナイジェリアのLGBTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス)活動家(17歳)は、「自分のことを『彼ら』と呼ぶ理由を知らない人から何度も嫌がらせを受けた。こうしたメッセージを無視するしかない」と答えた。
LGBTIの権利を擁護するナイジェリア人男性(21歳)は、自分のリベラルな考え方に反発する人たちが、その男性のプロフィールからクィアのナイジェリア人だと知って、憎悪をぶつけてきたという。「ティックトックのようなアプリで自分の意見をシェアするのが怖い。インターネットはとても怖い」と話す。また、オンラインでゲイのふりをした男にだまされ、襲われたこともあるという。
回答者の21パーセントが、毎週のように中傷や脅迫を受け、3分の1近くがインターネット上の暴力を受けないよう自己検閲し、14パーセントが人権や活動に関する投稿をすべてやめてしまった。
アルゼンチンの人権活動家(23歳)はX(旧ツイッター)での体験をこう話す。「いつもコメントを投稿する前に言葉を選ぶようにしている。政治的意見を書き込むと、書き込み内容だけでなく、自分の身体、性自認、性別に関するコメントを多く受け取るから」と。
回答者が嫌がらせを受ける頻度をプラットフォーム別にみると、フェイスブックは87パーセント、Xは52パーセント、インスタグラムは51パーセントだった。
最もよくある嫌がらせは、不愉快で挑発的な「荒らし」のコメント(60%)、次は不愉快または脅迫的な個人宛てのメッセージ(52%)だった。
若い活動家の5パーセントが、オンライン上で性的嫌がらせを受け、他人が本人の同意なく親密な画像(実際の画像やAI生成の画像を含む)を投稿したと報告している。
調査に参加した多くの人たちにとって、オンライン活動に関連する嫌がらせはデジタルの世界に限られるわけではなかった。回答者のほぼ3分の1が家族や身の回りの人たちや学校での嫌がらせ、警察の尋問、政治的迫害など、オフラインでの嫌がらせを経験したと答えている。
タイのノンバイナリー(自身の性自認・性表現に「男性」「女性」といった枠組みをあてはめない人)の活動家(20歳)は、子どものころ政治的動機に基づく訴追を5回も受けた。アフガニスタンの活動家(23歳)は、当局にソーシャルメディアでの活動を知られて、病院の仕事を失った。
現在、イスラエルとガザ戦争の話題が、多くのオンライン上の虐待を引き起こす問題として際立っているが、主要な人権問題全般でオンライン上での嫌がらせを受けるおそれは常にある。平和と安全、法の支配、経済とジェンダーの平等、社会的人種的平等、環境保護のすべてが、攻撃を引き起こす話題になる。
しかし、若い活動家が標的にされる理由はさまざまであり、複数の社会的属性に基づく差別と密接に関係しているように見える。そして、被害者はある特定の話題というより、アイデンティティに基づく嫌がらせを受けて傷つけられているようだ。
回答者の21パーセントがジェンダーで、20パーセントが人種や民族で嫌がらせを受けたという。社会経済的背景、年齢、性的指向、障がいに関わる嫌がらせを受けた人も何人かいた。
オンライン上の嫌がらせは、若い人たちの精神衛生に深刻な影響を与えている。回答者の40パーセントが、無力さやイライラを感じ、ソーシャルメディアの利用に恐れを抱く。複数の回答者は、日常的な作業をこなせず、自分の身に危険が迫っていると思っている。若い活動家が最も求めているのが精神的支援であり、迅速な被害通報や法的支援より優先度が高い。
また多数の回答者は、嫌がらせを受けたという報告に対してソーシャルメディアプラットフォームが適切な対応をしていないと批判した。報告後も長期間、嫌がらせのコメントがプラットフォーム上に残されているという。ソーシャルメディアのプラットフォームが自分たちの声を抑え込む役割を果たしていると考える人もいる。何人かは、ガザ戦争に関する投稿が削除されたと報告した。アムネスティは以前、パレスチナの権利を擁護する内容がプラットフォームによって差別的な扱いを受けているという報告をしたことがあったが、今回上がった声はその指摘に付合する。
アムネスティは以前、インド、フィリピン、ベトナムなどの国家がオンライン上の発言を弾圧していると報告した。アムネスティは現在、タイで国家が後押しするオンライン上の暴力を受ける女性とLGBTIの活動家を支援するため、世界的な連帯行動を呼びかけている。
アムネスティ国際ニュース
2024年7月1日