- 2024年7月26日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:難民と移民
新たに選出された欧州議会の本会議を前に、80を超える人権団体と人道団体は欧州議会に対し、庇護の権利と法の支配の維持に向け、断固とした対応を取るよう求めた。
EUの数カ国が最近、庇護手続きと難民保護をEU域外に移すことで、国際的な法的責任を回避、あるいはEU外の国々に責任を転嫁しようとしている。この動きに対して、アムネスティ、デンマーク難民評議会、ヒューマン・ライツ・ウオッチ、オックスファムをはじめとする80以上の団体が、危機感を募らせている。
管轄下にある人びとは、その管轄内で難民申請の権利を持ち、その申請は公正に審査されなければならないという原則がある。今回の物議を醸す数カ国の動きは、国際的な保護の中核となる原則を破棄しようとするものだ。
庇護希望者に対する義務の他国への移管を試みる動きは、これまでもさまざまな問題があるとして認められてこなかった。英国に入った庇護希望者をルワンダに移送して難民申請を審査するという英国・ルワンダ協定は頓挫している。域外手続きを画策する国々は果たせる見込みもない約束をやめ、非人道的で非現実的な提案による時間とコストの浪費をやめるべきだ。
欧州議会ではこの物議を醸す法案の立法化に向けた手続きが始まるが、EUは難民保護の責務の放棄よりよほど懸命な対応を取ることができるし、取らなければならない。
すでに同様の対応が取られてきたところでは、権利の侵害がはびこり、数多くの人びとが長期間、恣意的な拘束や法的な権利や地位が定まらない状況に置かれ、法的保護や保証を認められない。一方で莫大な税金が費やされている。
世界の難民の75パーセントを低・中所得国が受け入れている中、今回の提案は、EU諸国が法の支配、国際協定、世界的な難民保護体制への責務に欠けるという憂慮すべきメッセージを送ることになる。
今回の声明の中で80以上の団体はEUに対して、既存のEU法と最近合意されたEU移民協定と対照的なこの提案を放棄するよう求めた。その上で、EUは庇護希望者とその受け入れ国双方に利益となる、人道的、永続的、現実的な移民・庇護政策を支持しなければならない。
背景情報
15のEU加盟国が、EU域外で庇護申請を処理する可能性を、EU法の改正を含めて検討することを欧州委員会に求めた。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は6月末、「新たな政治サイクルの中でこのような革新的な考え方は、十分注目に値する」とのコメントを出した。
今回の提案は、EU外の国々との協定を通じてEUへの庇護希望者の入国を阻止するための一連の試みの一環だが、人権への配慮はほとんど、あるいはまったくみられない。
域外の国との提携の事例では、すでに数え切れないほどの人権侵害が起き、移民に関してEU域外の人権基準を監視・執行するEUの能力や関心が限られていることを示している。
アムネスティ国際ニュース
2024年7月9日