- 2024年9月 3日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:武器貿易条約
武器輸出大国の中でも数カ国は、武器貿易条約に公然と違反し続けて違法な武器移転を行い、その結果、被占領パレスチナ地域、特にガザ地区、スーダン、ミャンマーなどの紛争地帯で、多数の人命が失われてきた。
武器貿易条約の発効からほぼ10年、アムネスティは同条約に違反し深刻な人権侵害を引き起こす違法な武器移転を明らかにしてきた。
武器貿易条約は2013年4月2日、155カ国の賛成多数で採択され、現時点での締約国は115カ国、署名国は27カ国になる。その中にはロシアを除く武器輸出国上位10カ国も含まれ、この10カ国で世界の武器取引の9割を超える。
武器貿易条約は、通常兵器と武器弾薬の国際取引を規制する初の国際条約である。武器移転の合法性は、国際人権法と国際人道法と明確に結びついている。
何らかの進展はみられたものの、多くの国がルールを無視し続けており、そのために紛争地で膨大な数の人命が失われている。
締約国は法的義務を果たし、武器貿易条約を全面的に履行する必要がある。ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪などに利用されるおそれがある場合、あるいは国際人権法や国際人道法に対する重大な違反や違反を助長する可能性がある場合、その国に武器が渡るようなことがあってはならない。
イスラエルへの違法な武器供与
イスラエルへの継続的な武器移転は、締約国が武器貿易条約を十分に遵守していない状況を浮き彫りにしている。
イスラエルとパレスチナ武装グループ双方が、戦争犯罪など国際人権法や国際人道法の重大な違反を繰り返して、民間人に深刻な影響を与えており、アムネスティは長年、両者への包括的な武器禁輸を求めてきた。
イスラエルによる戦争犯罪の明確な証拠があるにもかかわらず、イスラエルへの最大の武器供与国である米国を含む締約国・署名国は、イスラエルへの武器供与を容認してきた。
例えば昨年10月10日と22日のガザへの空爆では、子ども19人、女性14人、男性10人の計43人の民間人が犠牲になったが、イスラエルがこの空爆に使用したのが米国製の統合直接攻撃弾だったことがアムネティの調べで明らかになっている。
今年1月のイスラエルによるラファ攻撃では米ボーイング社製GBU-39小口径爆弾が使われ、タル・アル・スルタン地区に住む一家を直撃、子ども10人、女性4人、男性4人の民間人18人が犠牲になった。
スーダンの紛争を助長する違法な武器取引
違法な武器移転は、スーダンで続く混乱にも拍車をかけている。昨年4月に紛争が激化して以来、スーダンは大規模な人権と人道の危機に陥っている。
スーダン国軍と即応支援部隊(RSF)間の紛争で16,650人以上が犠牲になり、数百万人が家を追われ、世界的にみても過去最大の国内避難民を出している。
国連安全保障理事会が課したダルフールへの武器禁輸措置にもかかわらず、中国やセルビアなどの締約国やトルコやUAEなどの署名国からスーダンに武器が流れていることが、アムネスティの調べでわかっている。これらの武器はしばしばダルフールに横流しされ、紛争の激化につながっている。
ミャンマーの武器輸入額は10億ドル以上
ミャンマーの人権状況に関する特別報告者によると、国軍は2021年2月のクーデター以降、10億米ドル(約1455億円)を超える武器、軍民両用品、設備、武器製造の原材料を輸入したが、その多くは中国からの輸入だった。
これらの武器は、学校や宗教施設を含む民間人や民間インフラの攻撃に使用され、甚大な破壊と多数の犠牲者を出してきた。
前進
アムネスティは1990年代初頭から他のNGOと共に、残虐行為を助長する武器の移転を食い止めるため、武器移転に関する強固で法的拘束力のある世界的ルールの実現に向けた運動を展開してきた。しかし、武器貿易条約が遵守され、さらなる流血を食い止めるには、さらに多くのことを実施する必要がある。
流入した兵器により余りにも多くの人びとが犠牲になってきた。武器貿易条約の発効から10年、締約国と署名国は自らの義務を果たし、人びとの苦しみの軽減に向け、直ちに行動しなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2024年8月19日