- 2025年5月30日
- 国・地域:
- トピック:難民と移民
欧州委員会は「安全な第三国」の概念の改正を提案している。この改正が実現すれば、EU加盟国が庇護希望者を彼らと何のつながりもない国に強制的に移送できるようになる。また、EUに対して異議申し立てもできなくなる。
EUは、責任を他の国に押し付けるために時間と労力を費やすのではなく、自国の難民保護体制に力を注ぎ、庇護希望者が人生を再建できるようにすべきだ。今回の提案は、EUが難民保護の責任を回避し、人も資金も少なく持続可能な保護が難しい国々に責任を転嫁する冷酷な試みの一環だ。つながりや支援がなく、将来の見通しもない国、あるいは一時的に通過しただけの国に庇護希望者を送ることは、単に混乱を招く恣意的な措置であるだけでなく、人道的な観点から見ても忌むべきものだ。
この改正で、欧州で難民保護を受けることは、さらに厳しくなる。人びとの権利はないがしろにされ、第三国での強制送還や恣意的な拘禁が横行する危険性が高まる。特に、EUがパートナー国における人権尊重を監視し支える能力が低下している現状を踏まえると、危険性はさらに高くなる。
背景情報
「安全な第三国」の概念は、難民申請者が第三国で国際的な保護を求めることが可能であると判断された場合、難民申請を不受理とすることを可能にするものです。これは、国際難民法における一般的な慣行である「国際保護を申請した国が申請の審査に関する主要な責任を負う」という原則の例外である。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のデータによれば、世界中の難民の71%は低所得国と中所得国が受け入れている。そうした中、欧州諸国は義務を回避するために「安全な第三国」の概念を頻繁に利用してきており、アムネスティはこの概念を長年批判している。
EU加盟国は、第三国がその人にとって安全であるかどうかを個別に評価し、すべての庇護希望者に公正な難民認定手続きを提供し、案件を審理する義務がある。帰還国が提出した証拠に反論する機会も確保する必要がある。
欧州委員会の提案では、庇護希望者と第三国との間に「意味のあるつながり」があることが、必須要件ではなくなる。代わりに、第三国を経由することや、EU加盟国と第三国との間の合意があれば十分となる。また、難民不認定に対する不服申し立て中の送還停止措置の廃止も提案している。そうなれば、不服申し立てが審理される前に強制送還が行われるおそれがある。この改正は最近提案された「送還規則」と連動しており、欧州の境界から遠く離れた場所で難民保護と移民管理をアウトソーシングしようとする懸念すべき動きだ。この難民手続規則の改正案は現在協議中であり、欧州理事会と欧州議会の承認が必要となる。
アムネスティ国際ニュース
2025年5月20日