気候変動対策の各国義務を明言 気候正義の闘いを大きく後押するICJ勧告

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2025年7月25日
[国際事務局発表ニュース]
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トピック:気候変動と人権

国際司法裁判所(ICJ)は、気候変動に関する国家の義務を明確にした勧告的意見を言い渡した。

これは、気候正義と責任の在り方において、画期的な瞬間だ。国際的に最高位の裁判所であるICJが、気候システムをはじめとする環境のさまざまな側面を保護しなければ、人権を十分に享受できる状況にはならないことを明示し、人類による気候変動の悪影響から現在および将来世代と生態系を守るために、各国には、ただちに行動を起こし、民間企業の活動を規制し、協力する義務があると強調した。史上初となるこの見解は、世界中で進行中の、そして今後提起される何百もの気候訴訟を後押しするだろう。こうした訴訟は、汚染を引き起こした者たちに奪われた生活、被った損害に関し正義を求めている。

ICJは、化石燃料の生産、化石燃料企業への事業認可や補助金許与を続け、気候システムを保護するための措置を国家が講じないことは、汚染者責任の原則(環境汚染の修復や汚染防止にかかる費用、汚染が引き起こす健康や経済への影響などの社会コストは、汚染を発生させた主体が負担すべきという原則)に照らして、国際法上の不法行為に該当する可能性があることを指摘した。

主な環境汚染の主体による主張とは対照的に、ICJは、現在の温室効果ガス排出量と累積排出量を考慮に入れて、各国の気候危機への貢献度を科学的に特定することが可能であるとした。各国、特に歴史的にみた高排出国は、自身が引き起こした気候被害を修復し、再発防止を徹底する責任がある。

また、米州人権裁判所の勧告的意見に続き、ICJも気候変動により安全を求めて人びとが移動を余儀なくされる可能性を明言。国境を越える移動を強いられた場合、生命や自由が危険にさらされるおそれがある場所への送還を禁じるノン・ルフールマン原則が適用されることを強調した。

ICJは、気候変動が「地球規模の存続を脅かす問題であり、あらゆる形態の生命と地球そのものの健康を危険にさらす」とし、「自らが招いた」この「生命を脅かす」危機の根本的な解決には、あらゆる分野の知識の貢献だけでなく、「個人、社会、政治のあらゆるレベルでの人間の意志」が不可欠だと強調。私たち自身と未来の世代のために、現在の生活様式を変革しなければならないと断言した。そして、世界中の気候正義運動に向けては、「今回の勧告的意見が、進行中の気候危機に対処するための社会的・政治的行動の力になることを望む」と表明しました。

今回の意見がもたらされた背景には、太平洋諸島の学生たちによる革新的で素晴らしい国際的な提言活動が大きく貢献している。アムネスティは彼らに深い感謝の意を表する。

アムネスティ国際ニュース
2025年7月23日

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