米国・イスラエルの攻撃とイランの報復で緊張激化 民間人保護と国際法尊重を

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2026年3月 5日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:地域紛争

現在進行中の米国とイスラエルが共同で行っているイランへの攻撃、それに続くイランの地域全体にわたる報復攻撃の波で、中東全域で敵意が急速に高まっている。アムネスティは、すべての当事者に対し、民間人を保護し、国際人道法を遵守し、特に民間人や民間インフラに対する意図的、無差別、過剰な攻撃といった違法な攻撃を停止するよう、緊急に要請する。

地域全体に拡大する軍事作戦には現在10カ国以上が関与しており、すでに多数の民間人の死と民間インフラの破壊をもたらしている。イスラエルは過去24時間で、ヒズボラの攻撃を受けレバノンへの攻撃を強化した。米国は「最も激しい攻撃はまだこれからだ」と表明している。イランは、最高指導者兼最高司令官アリ・ハメネイ師の殺害の受け、地域全体で緊張がさらに激化し、情勢は不安定になると警告している。

紛争当事者による違法で無謀な行為の代償を、民間人が払うべきではない。こうした行為は国際人道法の核心である人道の原則(武力紛争下において、戦闘員、民間人問わず、すべての人間が尊厳をもって扱われ、不必要な苦痛から保護されることを義務付ける)と区別の原則(戦闘員と民間人、軍事目標と民用物を明確に区別し、民間への攻撃を禁止)を踏みにじり、国際平和と安全の基盤そのものを脅かしている。事態は極めて深刻だ。中東では、民間人がすでに、紛争、重大な人権侵害、国際法上の犯罪の連鎖に耐えてきた。彼らの保護が最優先されるべきであるにもかかわらず、今、さらなる無意味な殺害と弾圧に直面している。

紛争当事者は、民間人への直接攻撃、無差別攻撃、過剰な攻撃、あるいは人口密集地域での広範囲に影響を及ぼす爆発性兵器の使用など、あらゆる違法な攻撃を直ちにやめなければならない。また、民間人への被害を防ぐため、実行可能なあらゆる予防措置を講じる必要がある。

国際的な紛争が長期化しその脅威が高まる中、国際人権法と国際人道法の遵守はこれまで以上に緊急を要する。法の義務を果たさないことは、すでに壊滅的な人的被害をさらに悪化させ、この地域を新たな人道的・人権的惨事へと追い込むことになるだろう。

イランへの攻撃とイランの対応

3月3日、イラン赤新月社は攻撃開始以降、国内で787人が死亡したと報告した。2026年2月28日、ホルモズガーン州ミナブ市の学校が攻撃され、165人が犠牲となったが、そのうち約150人が学童であった。国連はこの学校への爆撃を「人道法に対する重大な違反」だと指摘し、ユネスコは教育機関への攻撃が学生や教師を危険にさらし、国際人道法で保証された保護の侵害であると警鐘を鳴らした。国連人権高等弁務官事務所は、この「恐ろしい」事件について迅速・公平な徹底調査を求めている。

アムネスティは、学校を襲った攻撃後を映した6本の動画を検証した。部分的に崩壊した建物から黒煙が立ち上る様子や、救助隊員らが瓦礫に埋もれた犠牲者を捜索する様子が収められている。校門付近から撮影された映像には、校庭と建物の境界を示す壁が映っており、背景には近くのイラン革命防衛隊施設がある方から煙が上がっているのが確認できる。

イラン医療評議会議長によれば、イスラエルと米国の攻撃により10の医療施設が損傷した。イランの病院はすでに、2026年1月の抗議活動に対する虐殺事件の最中とその後にイラン治安部隊に襲撃され、負傷した抗議者と医療従事者が広範な人権侵害を受けている。

イラン当局は2月28日、再びインターネットを遮断した。これにより数百万人が武力衝突に関する重要な情報や国内外の家族との連絡手段を断たれ、国際人道法・人権法違反に関する情報の流れが止められた。

武力衝突の激化により、2026年1月の民衆蜂起に関連して逮捕された数千人の抗議者や反体制派含め、イラン全土の囚人の安否と安全に対する懸念が高まっている。こうした懸念は、刑務所等の収容施設付近での爆発に関する人権活動家の報告や2025年6月の12日間戦争でのイスラエルによるテヘランのエヴィン刑務所への攻撃から生じている。

人権団体はさらに、イラン当局がこれまで武力紛争を口実に、反体制派に対する拷問や虐待を強化し、即決処刑、恣意的処刑、超法規的処刑を行ってきたことを懸念している。アムネスティはイラン当局に対し、恣意的に拘束されている者全員を直ちに釈放し、他の囚人に対しても人道的理由による一時釈放など効果的な措置で安全を確保するよう求める。イラン当局が、反体制派を根絶するための残忍な弾圧など国際法違反や人権侵害を繰り返してきたことを考えると、同国内の人権状況への懸念は尽きない。2026年1月8日から9日にかけて、イスラム共和制の打倒を求める反体制抗議活動で、当局は数千人の抗議者と傍観者を対象とした前例のない虐殺を行った。

イラン当局は米国とイスラエルの攻撃に対し、イスラエルとアラブ首長国連邦、カタール、バーレーン、クウェート、オマーン、サウジアラビアなどの湾岸地域へのミサイルや無人機攻撃で応酬した。

メディア報道や政府公式声明によれば、一部の攻撃で、迎撃されたミサイルやドローンの落下破片などによる被害も含め死傷者が出ており、民間インフラも損害を受けた。アブダビ当局によると、アブダビのザイード国際空港を標的としたイランのドローンが迎撃され、「落下した破片」により1人が死亡、7人が負傷した。3月2日、カタールとサウジアラビアの両当局は、自国の石油施設がイランの攻撃対象となったと主張し、湾岸協力会議(GCC)は「無差別で見境のないミサイル攻撃、ドローン攻撃」を非難する声明を発表した。

イスラエルでは、メディアや救助機関によれば、イランの攻撃により少なくとも10人が死亡、数十人が負傷した。このうち、ベトシェメシュではイランの弾道ミサイルで9人が死亡し、20人以上が負傷、テルアビブ地域では落下した破片により女性1人が死亡した。地元当局によれば、イランの攻撃でテルアビブでは少なくとも40棟の建物が被害を受けた。

イスラエルは被占領下パレスチナ地域における厳しい移動制限をさらに強化し、東エルサレムを含む占領下のヨルダン川西岸地区の村や町間の移動を事実上遮断している。また、パレスチナ地域のすべての検問所を封鎖。救命物資の搬入が止まり、ガザ地区全体は事実上包囲下に置かれている。ケレム・シャローム(カレム・アブ・サレム)検問所は3月3日に再開された。

必然性のないこうした措置は、イスラエルの違法な占領とアパルトヘイト下で暮らすパレスチナ人の苦難を深刻化させ、ガザにおける多層的な人道危機をさらに悪化させている。ガザではパレスチナ人が今もイスラエルによるジェノサイドにさらされている。

イラクでは、親イランの民兵組織の一派で「イスラム抵抗」と名乗るグループが、クルディスタン地域のエルビルと首都バグダッドでの複数のドローン攻撃は自分たちが行ったと主張した。攻撃は主に米軍施設を標的としたものだ。クルド系イラン反体制派グループによれば、イスラム革命防衛隊からの警告を受けた後、イラクのクルディスタン地域内の彼らの拠点がドローン攻撃を受けたという。

レバノンにおけるヒズボラとイスラエルの緊張激化

ヒズボラがハメネイ師殺害への報復だとして北部イスラエルに対しロケット攻撃を行ったことを受け、イスラエル軍は3月2日未明、ベイルート郊外を含むレバノンへの攻撃を大幅に強化した。レバノン当局によると、3月3日までにイスラエルの空爆で少なくとも40人が死亡、246人が負傷した。今回緊張が激化する以前も、2024年11月の停戦合意以降、イスラエルはレバノン南部に対しほぼ毎日のように攻撃を続けており、これまでに380人以上(うち民間人127人)が死亡している。

3月2日深夜以降、イスラエル当局が出した新たな大規模「避難」警告により、レバノン全土で再び数十万人の民間人が避難を余儀なくされた。南部・東部の50以上の村落を対象とした、このあいまいで広範な警告は、パニックや道路の渋滞を引き起こし、多くの人びとが再度避難する羽目になった。3月3日早朝には、レバノン南部の数十の村落住民に退去を命じる追加の大規模避難警告が発令された。
3月2日、イスラエル軍はレバノン各地のヒズボラ関連金融機関を攻撃すると表明し、実行した。イスラエルは2024年10月に、ヒズボラ系金融機関の支店を攻撃しており、アムネスティは国際人道法違反の可能性が高いと指摘、戦争犯罪として調査するよう求めている。

国際人道法は、民間人や民間施設への直接攻撃、民間人・民間施設と戦闘員・軍事目標の区別をしない無差別攻撃、過剰な攻撃を厳しく禁じている。学校、医療施設、集合住宅を標的とした空爆、あるいは広範囲に影響を及ぼす弾道ミサイルやその他の爆発性兵器を人口密集地域に撃ち込むことは、国際人道法違反の可能性がある。

アムネスティは状況を注視するとともに、すべての当事者に国際人道法の遵守を要請する。民間人の死傷やインフラの損傷が発生した場合、当事者は直ちに調査を開始し、国際法違反を犯した者の責任を問わなければならない。

中東で深刻化する危機は、多国間主義と国際法秩序の統合性に対する重大な脅威だ。紛争当事者、特に影響力のある国家による違法行為は、複数の国での民間人を危険にさらすだけでなく、人権保護と世界の平和・安全保障に不可欠な国際規範の崩壊を加速させている。

すべての当事者は、民間人と、空港、病院、住宅、学校、刑務所などの民間インフラを保護するための緊急措置を講じる必要がある。また、影響を受けた全地域に人道支援が制約なく安全に届けられるようにし、独立した国際監視を認めなければならない。

また、国際社会に対しては、軍事的な状況悪化を防ぎ、これ以上の民間人被害を回避するため、外交努力を強化するよう要請する。すでに数十年にわたり抑圧に耐えてきた住民に対する国際法上の犯罪行為をこれ以上許してはならない。国際法に則り、各国は最大限の自制を尽くし、人権侵害をさらに助長する行為を控える必要がある。そして、国際法違反行為を支援・助力しない明確な義務、そうした違反行為を終わらせるための協力義務を負っていることを自覚すべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2026年3月3日

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