- 2026年4月 7日
- [国際事務局発表ニュース]
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カナダ、メキシコ、米国で開催される2026年FIFA男子ワールドカップに訪れる何百万人ものサッカーファンは、深刻な人権侵害にさらされる危険がある。とりわけ、米国による暴力的で極めて危険な移民政策に起因する問題が懸念される。アムネスティは、表現の自由や平和的抗議に対する厳しい制限が、FIFAが約束した「安全で、誰もが歓迎される包摂的な」大会を脅かしていると警鐘を鳴らす。
アムネスティの新しい報告書『Humanity Must Win: Defending rights, tackling repression at the 2026 FIFA World Cup』は、2026年ワールドカップの3つの開催国すべてにおける、サポーター、選手、ジャーナリスト、労働者、そして地域社会が直面する重大な人権リスクと影響について詳述している。大会の4分の3の試合が開催される米国は、トランプ大統領の下で人権上の緊急事態に陥っており、差別的な移民政策、大量拘束、そして移民関税執行局(ICE)や税関・国境取締局(CBP)等政府機関の武装した覆面捜査官による恣意的な逮捕などが横行している。
米国政府は2025年、50万人以上を強制送還した。記録的な急増を見せた違法な逮捕と強制送還は、もっぱら適正手続きが欠落した結果であり、数十万人の移民や難民の自由と安全に対する権利を損ねている。こうした政策は地域社会を分断し、全米に恐怖の空気を生み出す。米国は非常に困難な時期にあり、ワールドカップの祝祭に参加しようとしているファンにも影響が及ぶことは間違いない。
ワールドカップの開催都市も、米国政府による人権弾圧の影響を受けている。ロサンゼルスでは2025年6月にトランプ大統領が州兵4,000人を動員して、移民摘発に対する抗議活動への対応にあたらせた。ダラス、ヒューストン、マイアミはいずれも、地元の法執行機関がICEと協力するという問題含みの協定に署名している。これにより、人種的プロファイリングや移民の標的化が助長され、地域社会と地元の法執行機関との間の信頼が崩れ、その結果、公共の安全が脅かされている。
他の開催国でも懸念は拭えない。深刻な暴力がまん延するメキシコでは、その対応に軍を含む10万人の治安要員が動員されており、抗議活動を行う人びとへの危険が高まっている。これには、メキシコシティのエスタディオ・アステカで行われる開幕戦に合わせ、家族や友人の失踪に関する真実、正義、救済を求めて平和的な抗議活動を計画している女性活動家たちも含まれる。カナダでは、2010年のバンクーバー冬季オリンピックの影響や深刻化する住宅危機により、ホームレス状態に陥っている人びとが再び立ち退きを余儀なくされ、さらなる社会の周縁へと追いやられる懸念が高まっている。3月15日、トロント当局は、FIFAによる事前予約を理由に、ホームレスの人びとに避難所を提供していた冬季用暖房センターを閉鎖した。
米国の渡航制限と不当な移民政策
ニューヨーク・タイムズ紙による政府公式データの分析によれば、2025年だけで、米国政府は50万人以上を強制送還した。このうち23万人は国内で、27万人は国境で逮捕されている。多くの人が、迫害や身の危険がある国への送還を禁止する国際習慣法「ノンルフールマン原則」に反して、縁もゆかりもない第三国へ強制送還され、恣意的かつ長期にわたる拘禁に直面している。
全米各地で連邦当局が準軍事的ともいえる手法で行動し、ラテン系、黒人、アジア系、その他の有色人種の人びとを標的に、自宅や学校、職場の近くで、暴力的かつ恣意的な拘束を繰り返している。被害は子どもにも及んでいる。
米国ではおそらく多くの移民がワールドカップを一緒に観戦しようと集まるだろうし、世界中からも何百万人ものファンが訪れる。そうした中、ICEなどの政府機関は、米国在住者、試合観戦のために渡米する人びと、そして選手たちに対し深刻な脅威となっている。
トランプ政権下での渡航禁止措置により、コートジボワール、ハイチ、イラン、セネガルのファンは、2026年1月1日以前に有効なビザを取得していない限り、現地で自国チームを応援できない。その他のファンも、訪問者にソーシャルメディアアカウント情報の開示を強制する案や「反米的主義」の有無の審査など、過度な監視にさらされることになる。
逮捕や強制送還の数が驚くほど多いにもかかわらず、FIFAも米国当局も、ファンや地域社会を、民族・人種に基づくプロファイリング、無差別の摘発、違法な拘束・送還から守るという保証を一切示していない。16の開催都市のうち、これまでに人権計画を公表したのはわずか4都市に過ぎず、公表した都市のいずれも、過度の移民取り締りからの保護については言及していない。このワールドカップは、もはやFIFAがかつて判断したような「中程度のリスク」の大会ではない。ICEから人びとを守るためであれ、抗議の権利を保障するためであれ、あるいはホームレス化を防ぐためであれ、大会の現実が当初の約束と一致するよう、緊急の行動が必要だ。
脅かされる抗議の権利と表現の自由
ワールドカップはしばしば抗議活動の場となるが、こうしたデモが抑圧されるリスクがある。米国、カナダ、メキシコでは、表現の自由や平和的集会の権利に対する制限が見られてきた。トランプ政権は、ガザ地区で続くイスラエル政府によるジェノサイドに抗議する外国出身の学生を特に標的にしている。過激な移民取り締り措置に抗議し監視を行っていた米国市民は、連邦捜査官によって殺害された。
ガザでのジェノサイドに反対する抗議の波が起きているカナダでは、大規模な平和的デモや学生によるテントを張った抗議活動が、警察によって不当に解散させられたり強制排除されたりしている。
メキシコでも、開催都市におけるインフラ開発で、水の供給が妨げられ、土地の利用が制限され、家賃や生活費が上昇して住み続けられなくなると憤る住民によって、ワールドカップ関連の抗議活動が相次いでいる。大会に向けたメキシコの治安動員は軍事的性格を帯びており、抗議活動がさらに弾圧される危険が高まっている。
大会の中心には人権を据えるべき
ワールドカップ開幕まであと10週間となった今、誰もが「安全を感じ、排除されることなく、自らの権利を自由に行使できる」大会を実現するというFIFAの公約を果たすためには、この「素晴らしい競技」がひどい結末を招くことのないよう、早急な行動が求められる。英国や欧州各地のLGBTQI+団体のメンバーは、大会会場で表に立つことは自分たちにとって安全ではないと訴えている。
FIFAが2026年ワールドカップで過去最高の収益を上げることになる一方で、その代償を負わされるのがファン、地域社会、選手、ジャーナリスト、労働者であってはならない。サッカーは政府やスポンサー、FIFAではなく、まさにこうした人びとのものであり、彼らの権利こそが大会の中心に据えられるべきだ。
アムネスティ国際ニュース
2026年3月30日



