2026年男子W杯 人権守られず

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2026年10月28日
[国際事務局発表ニュース]
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スポーツ・アンド・ライツ・アライアンス(スポーツにおける人権尊重に取り組む国際的な団体の連合体)とフットボール・サポーター・ヨーロッパ(欧州全体のサッカーファン代表団体)が発表した共同報告書によれば、2026年男子ワールドカップでFIFAは公正と平等より収益を追求して、自らが掲げる人権方針を十分に実践しなかった。50頁に及ぶ報告書「人より利益:2026年FIFA男子ワールドカップ」は、大規模な移民拘束や国外追放を背景に恐怖と委縮の空気が広がったこと、差別的なビザ発給停止措置、ファンや選手、ジャーナリストが参加する上での費用面その他の障壁、保護措置や参加要件に関する基準の不明確さ、実効的な救済手段の欠如が、同大会を特徴づけていたと指摘する。

スポーツ・アンド・ライツ・アライアンスのアンドレア・フローレンス事務局長は、「2026年ワールドカップはFIFAの指導者が人より利益を重要視していることを浮き彫りにした」と述べた。「大会に関わる人すべてが、経済的地位、国籍、在留資格、障がい、性自認、性的指向、政治状況によって入場や参加が制限された。FIFAは人権尊重の義務を守るためにその影響力を行使しなかっただけでなく、ドナルド・トランプ米大統領に、理事会の承認を経ずに『FIFA平和賞』を与え、積極的に人権を侵害している政府を持ち上げることを選んだ」

3カ国(カナダ、メキシコ、米国)の主催で、48カ国が参加し104試合が行われた2026年男子ワールドカップは、歴史上最大のスポーツイベントで、FIFAは「誰もが安全を感じ、排除されることなく、自らの権利を自由に行使できる」大会を実現すると約束していた。今回の大会は、FIFAが2017年人権方針の採択や開催地選定への人権基準の導入などを通じて、ビジネスと人権に関する国際基準を受け入れ、それを大会運営に反映させる体制を整えたうえで開催された初めてのワールドカップだった。さらに、16の現地開催委員会には「2026年FIFAワールドカップ人権枠組み」が設けられていた。しかし、大会での人権侵害への懸念は高まり、FIFAと開催3か国に対し、人権侵害のリスクに対処し、「すべての人のためのワールドカップ」を実現するよう求めるアムネスティの呼びかけには、6万5,000人以上が賛同した。

ピッチと観客席は団結と歓喜であふれていたが、スタジアムの外では恐怖と分断とが広がっていた。米国移民関税執行局(ICE)による摘発は急増し、デモは阻止され、ビザの発給方針は差別的で、FIFAがうたった「史上最も開かれたワールドカップ」から大勢のファンを締め出した。大会で見られた人権侵害の多くは抑圧的で不当な政策に起因するものだが、FIFAはファンと地元社会を守るためにその影響力を行使せず、人権擁護より収益の最大化を優先した。

報告書には、法外なチケット代、高額なビザ取得要件、手ごろな価格の都市間交通の不足、39カ国以上に対する米国の渡航制限により、障がいを抱えるファン、低所得のファン、グローバルサウス(新興国・途上国)からのファンが特に排除された実態が記されている。また、参加チームや関係者はひどい混乱に見舞われた。イランチームは米国ビザの発給が遅れたり拒否されたりし、米国での2試合については試合当日の入国と出国を余儀なくされた。ソマリアの審判、オマール・アルタンさんは、有効なビザを持っていたにもかかわらず、マイアミ国際空港で11時間にわたる尋問を受けた挙句、入国を拒否された。こうした障壁に加え、米国では強引な移民取り締まりが行われた。ヒューマン・ライツ・ウオッチによれば、ICEはワールドカップに先立ち、11の開催都市近辺で、16万7千人以上を逮捕した。会場内での拘束の報告は限定的だったが、大会期間中の取り締まりは激化し、6月下旬の5日間で約1万人が逮捕された。

フットボール・サポーター・ヨーロッパのロナン・エヴァン事務局長は「サポーターは試合の中心というより搾取の対象として扱われた。チケット代はワールドカップ史上最高値で、障がいのあるファンが平等に参加できるよう求める法的基準は守られず、熱心なサポーターが差別的なビザ却下や軍事色の強い国境警備に直面した。もうそれは世界的な祭典ではない。特権層のためだけに用意された、管理された見世物だ」と語る。

メキシコでは、警察が計画された抗議デモに催涙ガスを発射し、2人のジャーナリストを拘束。カナダでは、開催都市のホームレスの住民が通りから一掃され、移民当局のビザ発給は認可より却下の件数の方が多かった。却下された申請者のほとんどが、グローバルサウス出身だった。また、少なくとも8人の選手が、性暴力事件で捜査・訴追の対象となっていたり告発を受けていたりしながら出場していることから、FIFAが選手に対し、「性犯罪やその他の暴力犯罪で捜査を受けたことがない」という申告を義務付けた大会参加規定を適切に履行していたのかという疑問が残る。さらに、独立系メディアは、不透明な取材認可手続きや米国ビザ取得に関する障壁に加え、FIFA首脳部による定期的な記者会見も行われず、著しく活動が制限された。

国境なき記者団(RSF)のクレイトン・ワイマー米国支部事務局長は、「ワールドカップの主要開催国である米国は近年、報道の自由度指数が世界45番目から64番目に下がり、ジャーナリストは、暴力、拘束、国外追放の憂き目にあっている」と指摘。「にもかかわらず、FIFAは取材許可やビザ手続きの連携について明確な方針を示さず、記者向けの説明の機会も軽視しており、人権尊重の責任を果たせていないことが浮き彫りになった。さらに、FIFAはジャーナリストや選手、ファン、労働者、地域住民向けの苦情申立制度について十分に周知しておらず、そのため被害の実態がどの程度に及ぶのか、把握できていない」

FIFAには制度的な組織統治改革が明らかに必要だ。それは、人権尊重と適切な組織運営を首脳部や意思決定の仕組みに根付かせ、独立した監視・検証体制を整備し、公約が実現されない場合に責任を追及できる仕組みを確保することだ。

「2026年ワールドカップの教訓は、国際スポーツ団体が主権国家の行動を完全に左右できるわけではないとしても、人権リスクを大会の開催地選定から計画、契約、監視、運営に至るあらゆる段階で考慮しなければならないということだ。さらに、FIFAなどのスポーツ統括団体の首脳部は、とりわけ状況が変化した場合に、必要な対応を取る覚悟を持たなければならない」(スポーツ・アンド・ライツ・アライアンス アンドレア・フローレンス事務局長)

報告書で述べているように、スポーツ・アンド・ライツ・アライアンスとフットボール・サポーター・ヨーロッパは、FIFAおよび2027年の会長選挙の候補者全員に次のことを求めている。

  • 今後行われるすべての男子・女子ワールドカップにおいて、人権尊重を拘束力のある要件とし、開催契約には遵守義務を明記すること。あわせて、独立した監視制度と違反に対する明確な措置を定めること。
  • 重大な違法行為や性暴力の疑いを受けている選手や役員に対し、個別判断に頼るのではなく、透明性のある、被害者を中心に据えた参加資格基準を策定すること。
  • ファンや選手、ジャーナリストをはじめとする大会関係者が、将来の試合に差別なく参加できるようにするとともに、表現の自由、平和的な集会の自由、報道の自由が、FIFA大会関連で確実に保障されること。
  • 障がいのあるサポーターに平等なチケット購入機会を保障し、介助者用の座席を無料で用意する一方、過度に高額な価格設定を防止すること。
  • FIFAの苦情申立・救済制度を周知し、利用しやすいものとし、常設の独立した人権諮問委員会を再設置するとともに、FIFA倫理委員会を抜本的に改革し、過去および将来の大会運営で被害を受けた個人や地域社会を支援する恒久的な救済基金を創設すること。

アムネスティ国際ニュース
2026年10月13日

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