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世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症。多くの人が罹患し、命を落としています。この危機の最前線で闘っているのが医療・介護従事者です。そのために、一般の人たちより高い感染リスクに、日々さらされています。しかし、未知のウイルスに対し抜本的な治療法が確立されておらず、爆発的流行に各国の対策が追いつかずに資金も人手も医療関連品も、何もかもが足りない中、自らの命を守る手段を手にすることも容易ではありません。

アムネスティ・インターナショナルは、70カ国以上における新型コロナウイルスによる医療・介護従事者の死亡に関する情報を収集・分析し、2020年の1年間で、少なくとも17,000人が亡くなったことを明らかにしました。

 

<新型コロナウイルスによる医療・介護従事者の死亡数>

注:多くの国で医療・介護従事者の死亡に関する包括的な公式データがないため、地図上に示した数は、入手可能な異なる情報源を集めたものとなっています。国によって集計根拠も異なり、単純な国比較はできません。集計時期を含め各国のデータの詳細はカーソルを合わせると表示されます。

 

増大する業務負担、強いストレスなど、心身をすり減らしながら、治療や介護に当たる彼らに対し、称賛の声がある一方で、感染を広げる存在だと見なされて、差別も受けています。

今、世界中で医療・介護従事者が置かれている困難な状況は、それだけではありません。

目次

世界の状況

感染と隣り合わせの危険な職場

感染と隣り合わせの危険な職場環境
© Getty Images

新型コロナウイルスの感染が一気に広がったため、世界中で防護具や衛生用品が不足しています。充分な防護具が支給されないために、多くの医療・介護従事者が自費で購入したり、本来の用途ではないもの(ゴミ袋やレインコート、医療用でないマスクや手袋など)を使用したり、本来は使い捨てのものを繰り返し使用したりしています。

国際的な労働組合で7千万人が加盟する国際公共サービスが5月に発表した調査結果によると、62カ国から回答があり、南北アメリカで69.7%、アジアでは50%、全体では57%が「医療・介護従事者は感染防止に充分な防護具を使用できていない」と回答しています。

仕事量の増加と心身への負担

業務の増加と心身への負担
© AHMED HASAN/AFP/Getty Images

感染が一気に広がって患者数が爆発的に増えた結果、医療・介護従事者には重い負担がのしかかりました。長時間労働を余儀なくされ、充分な睡眠時間や休日がとれず、疲労がたまっていく中、常に感染リスクに脅かされています。その結果、強いストレスにさらされ、心身のバランスを崩す医療・介護従事者も少なくありません。

英国の医療専門誌の記事は中国の医療従事者の50.3%がうつ状態に陥り、44.6%が不安を感じ、34.0%が不眠に悩まされていると報告しています。

医療機関の経営悪化による収入減と不十分な補償

医療機関の経営悪化による収入減と不十分な補償
ベネズエラのカラカスで、薬や医療物資の不足、劣悪な状況に対し抗議を行う医療従事者 © LUIS ROBAYO/AFP via Getty Images

新型コロナは医療・介護分野の経済にも大きな影響を及ぼしています。人びとが感染を恐れて通院を控えるようになったり、他の病気の手術が延期されたり、感染拡大を防ぐために病床を減らしたりするために、多くの医療機関の経営が悪化しています。

医療従事者は通常以上に過酷で責任ある仕事に従事しているにも関わらず、手当てが支払われなかったり、給与が減額されたりすることさえあります。にもかかわらず、自費で防護具を購入したり、家族に感染させないためにホテルに泊まったりするなど、普段より支出がかさむこともあります。また業務の中で、新型コロナウィルスに感染したり、死亡したりした場合でも充分な補償を受けられないこともあります。

政府による表現の自由への弾圧

政府による検閲と表現の自由への弾圧
ジンバブエでは、賃上げなどを求めてストライキを行った看護師1万人以上が解雇された。これに抗議して手紙を書く看護師ら。© JEKESAI NJIKIZANA/AFP via Getty Images

医療従事者が医療現場の実態や感染状況を公表することを政府が阻止しようとする国もあります。また過酷な労働環境に置かれた医療・介護従事者が、自分たちの権利を守ろうとして声を上げた時に解雇されたり、報復を受けたり、さらに逮捕されたりといったことも世界中で起こっています。

未知のウイルスと闘う中で、正しい情報が開示されることは非常に重要です。特に感染のリスクが高い医療・介護従事者には、新型コロナウィルスや政策決定についての正しい情報が知らされるべきです。しかし、都合の悪いことを隠そうとする政府にとって、声を上げる医療・介護従事者は目障りなのです。

差別と暴力

差別と暴力
© Getty Images

多くの国では医療・介護従事者の活躍は一般市民から称賛され、感謝と連帯を持って受け入れられていますが、残念ながら、医療・介護従事者が差別され、時には暴力を受けることもあります。感染リスクにさらされながら働いている医療・介護従事者は、新型コロナウィルスの感染を広げる可能性が高い存在だと見なされ、バスの乗車やスーパーへの入店を拒否されたり、住居を追い出されたり、近所の人から暴行を受けたりすることもあるのです。

新型コロナウイルスが大流行する以前から、世界的な財政危機のあおりを受けて医療福祉分野の予算が削減されていたということも、医療・介護従事者の困難な状況に拍車をかけています。緊縮財政に取り組んだギリシャやスペイン、イタリアなどの国ぐにでは、人の命よりも「財政の健全化」が優先され、医療費が削減されました。元々、設備が充分ではなく、人手が不足する中でパンデミックが発生し、脆弱な医療システムはたちどころに窮地に陥ったのです。

日本の状況

世界中の医療・介護従事者が直面するこうした問題は、日本でも起きています。 日本の病院、診療所、介護・福祉施設等の労働者が組織する労働組合の連合体、日本医療労働組合連合会(医労連)は、新型コロナ危機における実態調査を何度か行っていますが、最新の調査結果でも、防護具・衛生用品不足が指摘されています。

病院経営が厳しくなり、そのしわ寄せが働く人たちにのしかかっているのも、同様です。約9割の病院で外来患者数が減少、検査や手術の延期などで収入減に陥っているうえに、感染防止対策の設備投資や衛生資材の高騰で経営が悪化、医療従事者への給与・手当が減額されたケースも少なくありません。

差別の問題も、引き続き深刻です。前回調査の4月時点に比べ、8月の最新の調査では差別を経験した人の数が2倍に! いまだに保育園の預かりが拒否されるなど、家族に対する差別や偏見も続いています。

また、日本でも構造改革路線の下で効率が優先され、医療提供体制は縮小されています。感染症対策を担う保健所は過去30年にほぼ半減しています。

動画「日本の医療の現場で、いま起きていること」

日本の医療現場では今、何が起こっているのか。医療従事者はどのような思いで闘っているのか。お二人の専門家にご登壇いただき、生の声を伝えていただくオンラインイベントを2020年10月20日(火)に開催しました。

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