タジキスタン：
強制送還された反政府派の男性　身の危険

アブドゥロヒ－・シャムシディンさんは、1月18日にドイツからタジキスタンに向けて送還されたが、出迎えた家族は会えなかった。シャムシディンさんは3月6日に妻に電話して、タジキスタン国家安全保障委員会に拘束されていることを伝えた。拘束の背景には、国が違法団体に指定するタジキスタン・イスラム復興党(IRPT)のメンバーや党の指導層との繋がりがあるとされる。家族によると、シャムシディンさんは、重度の喘息を患っていて、悪化すれば命にかかわるおそれがあるとのことだった。

アブドゥロヒ－・シャムシディンさんの父親は、シャムシディン・サイドフさんでイスラム復興党IRPTの幹部だった。タジク人のイスラム流命名規則では、父親の名を自分の名の後に名乗る。サイドフさんは、2014年にドイツに移り、2017年に難民として認定された。シャムシディンさんも父親と同様に自身をIRPTの活動家だと言ってきた。IRPTはタジキスタンで最大の野党だったが、2015年、政府に「テロリスト」集団に指定されて活動禁止になり、幹部は逮捕され、不公正な裁判で投獄された。

シャムシディンさんは、ドイツで国際的保護を受けることができなかった。2009年にドイツで最初に難民申請をしたとき、自分の素性および父親との関係を隠した。国外にいてもタジキスタン当局がIRPTと関係する人物を見つけ、報復するおそれがあったからだ。2011年にこの申請は拒否された。2017年に再申請したが、2021年に裁判所に却下された。

昨年12月12日、ドイツから送還されようとした時、シャムシディンさんはパニックになり自傷行為を引き起こした。そのため、送還は一時中止になり、彼は拘束された。

昨年12月29日の報道によると、シャムシディンさんは、「飛行機がタジキスタンの空港に着陸した直後に逮捕され、20年間は刑務所から出られないだろう」と話したという。昨年12月、ノルウェー・ヘルシンキ委員会、ヒューマン・ライツ・ウオッチ、ドイツNRW州の「国外追放報告」などの支援団体は、「シャムシディンさんがタジキスタンに送還されると、拘束され、拷問を受けるおそれがある」と訴えた。しかし、ドイツの連邦移民難民庁は、12月21日にシャムシディンさんの2回目の再申請を却下した。

今年1月6日、ゲルゼンキルヒェンの行政裁判所は、送還停止の申立てを却下した。シャムシディンさんとサイドフさんの親子関係を示す鑑定結果や、ある難民が2019年にタジキスタンで拷問された際にシャムシディンさんの行方を尋問されたという証言が法廷に提出されたが、信憑性が認められなかった。

シャムシディンさんはトルコ経由で送還された。ノルウェー・ヘルシンキ委員会によると、1月19日にタジキスタンの首都ドゥシャンベの空港で家族がシャムシディンさんの到着を待っていたが、本人と会えなかった。情報筋によると、シャムシディンさんは到着後すぐに滑走路近くでタジキスタン当局に拘束されたという。

当局は、反体制派や政府に批判的な人たち、その家族、親しい人らに常に目を光らせている。タジキスタンでは、尋問中に拷問や虐待などの暴力で「自白」を引き出し、罪を着せるのは、日常茶飯事に行われている。拷問には、爪への針の突き刺し、電気ショック、殴打、性的暴行、睡眠剥奪、ビニール袋での窒息、薬物注射などがある。

シャムシディンさんの送還前の1月2日には、警察の留置所に拘置されていた一人が死亡した。遺体の写真と映像から拷問を受けたことがほぼ明らかだったが、当局は薬物の過剰摂取と主張した。この死亡は、国内外に逃れているタジキスタン人たちを震撼させ、ネット上でも抗議の声が広がった。

アクションしてください。

当局に以下の要請を盛り込んだ英語の要請文を郵送するか、タジキスタン大統領のウェブサイトの投稿欄をご利用ください。投稿の場合は、http://www.president.tj/enを開き、ページ下のWRITE TO THE PRESIDENTに記入することができます。

• シャムシディンさんが置かれている状況と居所を明らかにする。
• 隔離拘禁の措置や拷問などの暴力を受けないことを保証する。
• 認められる犯罪行為の合理的な疑いがなければ直ちに釈放する。合理的な疑いがある場合でも、家族に所在を伝え、弁護人との接見を認める。

要請例文

英語でUAを読む

• TAJIK REFUGEE DISAPPEARED AFTER DEPORTATION