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アジア/太平洋地域:南アジア:「テロとの戦い」が強制失踪の新たなパターンを引き起こしている

2006年8月30日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:アジア/太平洋地域
トピック:「テロとの闘い」における人権侵害
「反テロ」に関連して強制的失踪の新たなパターンが南アジアで生じつつある。ネパールやスリランカのような国ぐにでは以前から長年の問題となっていたが、それに加えて今日の事態が起こっている。どの事件でも、被害者の家族は心情的に、社会的に、そして経済的に苦しんでいる。国際失踪者デーの本日、アムネスティ・インターナショナルはそのように語った。

アムネスティは、数百人もの人びとが、「テロとの戦い」の文脈の中で、パキスタンで強制的失踪の被害にあっていると考えている。強制的失踪の被害者の多くは、結局グアンタナモ米軍基地に収容されていることが確認されているが、中にはパキスタン国内の拘禁施設で拘禁されていると考えられる人びともおり、その正確な拘禁場所は依然不明のままである。拘禁についての詳細を口外しないよう脅された上で釈放された人びともいるし、結果的に刑事事件として起訴された人びともいる。少なくともある一つの事件では、強制的失踪の被害者の遺体が、拘束されてから6か月後に発見された。その他の多くの被害者の行方は不明のままだ。

一方、スリランカにおいては、治安部隊に掃討権限を認めた2005年8月の新しい緊急立法の導入後、国家機関の要員が関与する強制失踪が再燃し、増加している恐れがある。スリランカ国内人権委員会によると、昨年、同国北部において発生した強制失踪の数は62件になる。人権委員会はまた、状況がよくわからない中で行方不明となっている個人の183の事件についても調査している。

「南アジアには、強制的失踪の歴史がある。ネパールやスリランカのような国では過去数十年にわたって数万の人びとが失踪してきた。パキスタンがこの傾向に加わるのは、非常に残念なことだ」と、アムネスティのキャサリン・バーバーアジア太平洋部副部長は語った。

「強制的失踪は国際人権法および人道法の重大な侵害である。強制的失踪は、被害者本人のみならず、家族に対しても重い犠牲を強いる。親族は、被害者の運命について、政府当局の否定や矛盾に直面する中で苦しみもだえる。親族らはまた、情報を得ようとする当局に嫌がらせを受け、被害者が一家の稼ぎ手の場合は財政的な困難に直面する。」

パキスタン人サイフラ・パラチャさんの行方は、2003年7月5日にバンコク空港に到着して米軍に拘束されて以来、不明だった。パラチャさんの妻ファタさんは、「事件は家族みんなの心を打ちのめした」とアムネスティに語った。「事件が起こり、そして誰からも何の回答もないという状況の中で、私たち家族が経験した苦悩と不安を想像できますか? ・・・ {子どもたちの}素直さは消え、疑い深く、心配性になりました。友人たちは皆私たち家族のそばから去り、私たちとつきあうことを怖がっています」。サイフラ・パラチャさんは現在、グアンタナモ基地の収容施設に収容されていることが確認されている。しかし、いったいいつまで収容されているのか、家族には知る由もない。

数千人にのぼる強制的失踪の被害者の家族たちは、被害者の運命がわからない中、依然として不安定な状況に置かれている。ネパールでは、7月、政府設置の委員会が、600件以上の未解決の強制的失踪事件を調査していると発表した。しかし現地の人権活動家らによると、行方不明者は1000人以上に上るという。スリランカは、世界でも最も未解決の強制的失踪が多い国の一つである。インドのジャンム・カシミール州では、1989年以来8000件から1万件に上ると見られる強制的失踪が報告されている。現在、新たな強制的失踪事件はほとんど起こってはいないが、過去の事件にの情報は未だにまったくないま
まである。

政府がきちんとした対応をとらないため、家族の中には相互扶助のための団体を作った人びともいる。ジャンム・カシミール失踪者の親の会というのもその一つで、親族や「半寡婦」と呼ばれる人びとへの支援をおこなっている。この「半寡婦」というのは、夫が死亡したと宣言するのを拒否したため、賠償を受ける資格を有さない女性たちのことである。

武装勢力はしばしば、彼らに批判的な発言をする人びとを誘拐し、被害者は数か月、ときには何年も秘密の場所で拘禁され続ける。ネパールでは、10年にわたる内戦の中で、マオイストがおこなった誘拐は数千件に上ると考えられている。ネパール国内人権委員会によると、そのうちの330人はいまだに行方がわかっていない。

南アジアの国ぐにでは、新たな強制的失踪事件が起き続けている。スリランカでは5月6日、8人のタミール人男性が、宗教行事のためにヒンドゥー寺院の飾り付けに出かけ、そのまま帰宅しなかった。家族らは翌朝、行方不明を届け出たが、夜中に寺院でスリランカ政府軍兵士を見たと証言した。男性たちの行方は依然、不明のままである。

パキスタンでは、「テロリスト容疑者」の強制的失踪に対する無関心が、「テロとの戦い」の域を超えて強制的失踪事件が増大する要因となっている。バロチやスィンディの民族主義団体などに関与している人びとの強制的失踪も、最近報告されている。裁判所には、被害者の行方を突き止めるための人身保護令状の申請が山のように届いている。

「逮捕・拘禁は法に基づいて執行されるべきである。夜中に車の中に押し込め、拷問やその他の虐待にさらされる危険がある秘密の拘禁場所に連行することではない。人は自らの拘禁の是非を司法の場で問い、自らが選んだ弁護士と接見し、家族と面会する権利を持つ。また家族は、自分の親族がどこにいるかを知る権利がある」と、キャサリン・バーバーは語った。


* アムネスティ・インターナショナルは、パキスタンの「テロとの戦い」に関連した強制的失踪に関する報告書を、今年後半に発表する予定である。
* アムネスティ・インターナショナルは、今年の第61回国連総会において、強制的に失踪した全ての人びとを保護するための国際条約の草案が、修正なく全会一致で採択されるために働きかけている。
* 「テロとの戦い」における強制的失踪に関するアムネスティのファクト・シートは、下記で読むことができる。
http://web.amnesty.org/library/index/engact400132005
* 反強制的失踪アジア連盟(AFAD)は、強制的失踪の被害者家族によって結成されたアジア地域の支援団体である。ウェブサイトは:
http://www.desaparecidos.org/afad/

アムネスティ国際ニュース
(2006年8月30日)
ASA04/001/2006

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