ルーマニア:住宅供給法は、弱者を守るべき

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2012年5月21日
国・地域:ルーマニア
トピック:強制立ち退き

立ち退きの危機にさらされる、ロマの家族。(c)Joshua Gross
立ち退きの危機にさらされる、ロマの家族。(c)Joshua Gross

3ヵ月足らずで2つの政権が失脚する中、ルーマニアの経済的な苦境は長期化している。だからこそ当局は、国内で最も軽視される地域に住宅供給が滞る一因である法的な抜け穴を、あらゆる面で封じなければならない。

「この法律の抜け穴により、地元当局は前もっての通知あるいは適切な相談などの事前対策をせず、人びとを自宅から強制的に立ち退かせることができます。その結果、しばしば地元当局は、住民をホームレスにしてしまうのです」とヨーロッパ・中央プログラム副部長ジャゼカ・ティガニーは述べた。

「非認可の居留地住民に加え、低所得者住宅の賃貸契約が未更新の住民は、法的保護は一切なく、いつ強制退去させられるかわかりません。このような人権侵害は最も弱い人びと、つまり多くの場合、ロマの人びとに影響をおよぼしています」

アムネスティが新たに発表した報告書『脆弱な法律:ルーマニアは人びとの住居権を保障せよ』は、強制立ち退きの禁止など、住宅に関する権利を守るために、政府が遵守すべき国際法の主要要件を概説している。

本報告書はルーマニア政府に対し、延び延びになっている法改正の手引きとして、国際基準に基づく「住宅供給法要件一覧」を提供している。

ルーマニアの現行法では、住民の生命や健康を害する危険地域や汚染地域を対象とする強制退去は、禁じていない。

当局には、就業、健康保険、学校、託児施設などのサービスを受けやすい地域に公営住宅を作る義務はない。

さらに現行法では、住宅供給上での人種差別を明確には禁じていないし、とく悪質な差別から人びとを守る十分な施策を、提供していない。

アムネスティは、強制立ち退きを被り、都市郊外や基本インフラを欠く過密住宅地、環境や健康リスクが深刻な孤立地帯などに移転させられたロマの数多くの事例を報告書にまとめてきた。

「法による保護と事前措置がないため、ルーマニアは住宅供給の国際基準をないがしろにし、地元当局は弱者家族をより劣悪な生活状態に公然と置いたのです」、とティガニーは述べた。

クルジュ・ナポカ市中心部のコアステイ通りに長年住む356人は、そのほとんどがロマだ。しかし、2010年12月17日の凍てつく朝、まともな通知や相談もないまま、住み慣れたその地を追われた。彼らは身の回り品を持ってトラックに乗せられて、パタ・ラト地域にある新集合住宅に連れて行かれた。その場所は、町外れの埋立地や化学廃棄物処分場に近い丘にあった。 

暑い日には、化学薬品の臭いが立ち込めた。4人から11人まで家族人数は異なるが、最大でも18㎡の部屋しか与えられなかった。4部屋でたった1つの共同風呂では、冷たい水しか出ない。

立ち退きを余儀なくされた中で、約30家族は替わりの住宅を何一つ提供されなかった。彼らの中には 電気、水道、下水設備もなく、再び追い立てられるのを覚悟で既存の住宅の隣に間に合わせの家を建てる者もいた。

パタ・ラトは市の中心から9キロ離れた、非居住地域だ。交通手段は非常に不便で、運賃が高い。最寄りのバス停は2.5キロ離れたところにあり、最も近い学校も9キロ、ショッピングセンターは10キロも離れている。

コースティ通りは、当局がルーマニアの不備な法律の結果、国際法の義務を果たさない中で行われている強制退去の特異な事例ではない。

「人びとが、たとえ正式な手続をせずに家や土地を賃貸・所有し居住しているとしても、誰でも強制退去や嫌がらせ、脅しなどから同じように保護を受ける権利があります」とティガニーは語った。「ルーマニアの新政府は、承認した国際基準の住宅供給法に沿って法律を制定すべきです。すべての国民に適切な住宅供給と関係する権利を保障すべきです」

アムネスティ国際配信ニュース
2012年5月8日

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