女性には平和な時間は戻らない

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2013年3月11日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:武器貿易条約

コンゴ民主共和国・北キブ州では、 内紛下の2010年夏、大勢の女性が集団 強かんの被害にあった
コンゴ民主共和国・北キブ州では、 内紛下の2010年夏、大勢の女性が集団 強かんの被害にあった

武力紛争の渦中で女性や少女が標的に選ばれることは、しばしば記録されている。しかし、争いが終わっても、女性に対する宣戦布告のない戦争は何年も続くことがあることは、あまり知られていない。

表向きは戦闘が終わっても、武器の拡散や、暴力を容認し、女性をもの扱いする文化があるために、悲惨な事件が続くのである。

「女性には平和な時間は戻らない」。1990年初頭の内戦で行われた虐殺を記録する人権調査団に向かい、あるボスニアの女性人権活動家が語ったことばだ。

この簡潔な発言は、調査団が見落としていた真実をものがたっている。とりわけ女性たちにとって、和平合意は平和をもたらすことはなかったのだ。

ほぼ20年にもわたって、何百人もの女性が強かんその他さまざまな虐待の後遺症といまなお闘っている。彼女たちは、打ちのめされた生活を再建するために医療面、精神面、経済面で支援を必要としているが、まともにそれらを受けられる状況にはない。強かんや虐待の多くは、武器を使って実行されたものである。加害者はほとんどの場合処罰されることはない。

女性たちが犠牲になった例を見る(Facebookへリンクします)

強い武器貿易規制が、女性を守ることにもなる

3月18日、武器貿易条約の最終交渉がニューヨークの国連で始まる。

いかなる国も、武器商人も、残虐行為や暴力的虐待に用いる可能性が高い政府、企業、武装集団に、自動小銃から爆撃機にいたるまで、どんな武器、弾薬、関連機器も売り渡してはならない。このことを確実に約束する最終合意を世界中が是が非でも必要としている。

武器貿易条約を実効性のあるものにする障害のひとつは、米国、ロシア、中国、英国、フランスが国連安保理の常任理事国であるという事実そのもののだ。これら諸国は常任理事国として国際平和と安全を維持する責務を負っている。ところがこの5カ国で、通常兵器の年間取引額700億米ドル超のほぼ70パーセントを占めているのだ。国境を越える武器弾薬の流れを国際的に管理する体制がない中で、この5カ国を含めた各国は、何十年にもわたって武器取引を続けてきた。

銃や弾薬は政府、企業、武装団体に提供されるが、ここからさらに、男女や子どもを標的にして地域住民を脅威にさらす、武器使用者の手に渡ることが多い。武力紛争で民間人を標的にすることは、国際法で犯罪とされる意図的行為である。このやり口は政府軍や武装勢力にとって戦術であり時に戦略にさえなり、女性が標的に選ばれることも多い。彼らは、外国で製造された武器をこれ見よがしに所持する、人権侵害の加害者、犯罪集団、犯罪者なのだ。

利益優先など身勝手な論理で、人権が侵されている 

一部の政府は、戦争において、性的暴力をはじめ女性を標的にする行動は、気の毒ではあるが避けがたい、武力紛争の副産物なのだと主張するだろう。だがまさにこうした姿勢こそ、同じ政府が平和時に女性に対する暴力を見過ごす元凶なのである。

さらに女性軽視も甚だしいことだが、女性たちは平和交渉、戦闘員の武装解除監視業務、紛争の平和的解決を促しつつ社会再建の方法を決める過程などから閉め出され、役割を果たせない場合が多い。これは「女性の平和と安全に関する国連安保理決議」に反する。

紛争下であろうと、市民に対する重大な人権侵害はすでに法で禁じられている。たとえばジュネーブ諸条約と議定書は特定の戦争犯罪を法律違反と定め、戦争犯罪と人道に対する罪の加害者は国際刑事裁判所設置規程(ローマ規程)の下で裁くことができる。また国際人権法は明確な人権侵害を禁じており、各国政府には、加害者が誰であれ、女性への暴力を阻止する措置をとる責任がある。

このような犯罪は、加害者がそれを実行、助長する道具を取り去ることで、抑止されうることは、以前から認識されている。強力かつ実効性のある世界規模の武器貿易条約は、この目標に向かう、きわめて大きな一歩となるだろう。

政府というものは、人びとの安全よりも利益を優先させて、戦争犯罪、人道に対する罪、集団虐殺、その他深刻な人権侵害を引き起こす可能性のある相手に武器が渡ることを、容認するものではない。世界中の女性たちはそのことを理解する必要がある。

いたって単純明快な話だ。だが政府が利益を求めて、国際人権法や人道法を守る努力をないがしろにするケースがあまりにも多い。ボスニアの活動家が証言するように、こうした利欲がもたらす長期的な影響はとくに女性にとって大きな打撃となる。

だから、たえず不安に脅かされながら暮らすすべての女性たちのために、3月にニューヨークに集まる各国政府は正しく行動しなければならない。利益や独善的な国益を越え、女性の平和と安全への道を開くために、すべての人びとの人権保護に向けた強力かつ公正なルールを備える武器貿易条約を採択すべきである。

アムネスティ国際ニュース
2013年3月8日

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