- 2014年9月26日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:チェコ
- トピック:子どもの権利
アムネスティは何年にもわたって、チェコの学校でロマの子どもたちが差別されていることを検証してきた。(C) Jiri Dolezel
9月25日、欧州委員会は欧州連合(EU)の反差別法違反でチェコ共和国に対する訴訟手続きを進めると発表した。アムネスティはこれを歓迎する。
アムネスティはチェコの学校でロマの子どもたちが構造的に差別されていることを検証してきた。しかしチェコ政府は、問題への対処を怠り、効果的な防止策を打ち出さずにきた。違反訴訟手続き開始の合意は、チェコだけでなくEUに加盟するすべての国に対し、ロマの人びとへの差別は許されないという、明確なメッセージを訴えるものである。
訴訟手続きにより、欧州委員会はチェコ政府に対し、同国の学校で今も続くロマの子どもたちに対する違法な構造的差別に対する責任を課し、終止符を打つよう政治的な圧力を公にかけることができる。
アムネスティをはじめとする市民団体は1年半前、欧州委員会に、違反訴訟手続きを使って、ロマの子どもたちに対する教育の差別問題に対処するようチェコ政府に働きかけることを求めた。アムネスティは反差別法をないがしろにしてロマの人びとを守れていないEU加盟国に対し断固とした措置をとるよう、欧州委員会に要請し、3カ月で1万近くの署名を集めた。この要請は、10年にわたって集めた証拠に基づいていた。証拠が指し示したのは、チェコの教育現場でロマの子どもたちに対する違法な差別が広く行われているという事実であった。軽度の知的障がい児のための特別学級に入れる、ロマ専用の学校に入れる、低い教育水準で教えるクラスに入れるなどの、分離教育だ。
教育はすべての子どもに保障されるべき人権だ。分離教育による差別は違法である。満足な教育が受けられず、そのために将来の就業機会が狭まり、ますます疎外されていくという悪循環に、ロマの子どもたちを陥れるものだ。
2013年のチェコ教育監督局(学校が国内法に準拠しているかどうかを監督する国の機関)による調査では、軽度知的障がい児のための学校におけるロマの子どもたちの数が偏って高いということが明るみになった。ロマの人口構成比が3%に満たないのに対し、軽度知的障がい児が5人以上いる483の学校に通うロマの子どもは28.2%であった。差別を禁じる法規の遵守状況を監視する監察官は、2012年にこれを差別的であるとしている。
「通常」学校に通えているロマの子どもたちの状況も、明るくはない。多くの子どもが、教育水準の低い学校やクラスに入れられており、2014年にアムネスティが集めた証拠では、ロマ専用の「通常」学校の教育プログラムは、軽度知的障がい児のための学校のものと大差はなかった。
チェコに責任をとらせ差別をやめさせるために、今回の決定を受けて、具体的な行動が迅速にとられることが肝要だ。チェコだけでなく、EU全体で日々差別を受けているロマの人びとを、現在そして将来にわたって守っていくためには、それが不可欠である。
アムネスティ国際ニュース
2014年9月25日
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