チャド:前大統領の犯罪で被害者に賠償

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2016年8月 9日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:チャド
トピック:

ダカールの特別法廷は7月29日、イッセン・ハブレ前大統領に対し、その残虐行為の被害者数千人に賠償金の支払いを命じる判決を下した。この画期的な判決は、被害者たちの長年にわたる執念の追及の勝利である。

この判決は、被害者たちの人生にとって大きな節目となる。

また、被害をうけて数十年がたっていても、賠償は必要であり、世界中の人権侵害の被害者たちにとっても、大きな意義がある。

特別法廷は、前大統領に対し、強かんなどの性暴力の被害者に対し、1人当たり2,000万CFAフラン(33,880米ドル)、恣意的拘禁、拷問の被害者や元捕虜には、1,500万CFAフラン(25,410米ドル)、間接的な被害者に1,000万CFAフラン(16,935米ドル)の支払いを命じた。集団的賠償の要求は却下した。

前大統領は5月30日に、1982年からの9年間に犯したとされた人道に対する罪、戦争犯罪、拷問の罪で、終身刑を受けている。

判決文書と賠償決定は、まもなく同裁判部のホームページで閲覧できる。

アムネスティ・インターナショナルは、今回の判決の履行に向け、特別法廷、アフリカ連合、チャド政府、および国際社会に対し、賠償金用の信託基金に充てる十分な財源を確保する措置を取るよう求める。

今回の判決は大きな前進だが、前大統領だけが残虐行為の加害者ではない。9年間に犯された重大な人権侵害、特に1984年9月に起きた南部での殺害の捜査・訴追に向け、チャド内外にに引き続き圧力をかけることが、極めて重要である。

昨年、チャドの国内裁判所は、ハブレ政権の20の関係機関に対し、殺人、誘拐、拷問などの容疑で有罪判決を下し、総額12,500万米ドルの賠償金を被害者7,000人に支払うよう命じた。チャド政府は、その義務を果たさなければならない。

背景情報

特別法廷は、アフリカ連合とセネガル政府の合意のもとに、2012年に創設された。前大統領に対する裁判は、昨年7月20日に開始され、被害者69人、証人23人、専門家10人が証言した。

数ある証拠の中で、検察は、1980年代から検証しているアムネスティの調査報告書に信頼を置いた。アムネスティの元スタッフもまた、専門家として法廷で証言した。

今年5月30日に判決が下されたが、判決文はまだ公表されていない。すべての関係者は、賠償審理の期間中、具申を行う機会があったが、口頭審理は1回も開かれなかった。

前大統領の弁護団は、有罪判決に対し控訴した。アムネスティは、特別法廷は十分な資源を得て、完全かつ実効的に裁判を終結すべきだと考える。

アムネスティ国際ニュース
2016年7月29日

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