クロアチア:暴力的難民排斥にEUも加担

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2019年3月22日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:クロアチア
トピック:難民と移民

クロアチア(EU加盟国)から締め出された多数の庇護希望者らが、隣国のボスニア・ヘルツェゴビナ(EU非加盟国)の難民キャンプに入れられ、過酷な日々を送る。クロアチア国境からの排除は、しばしば違法で暴力的で、その暴力的排斥に加担するのが、難民制度が機能不全に陥ったEU諸国だ。アムネスティは、聞き取りを含む調査でこれらの事実を確認し、報告書にまとめた。

国際法より国境管理を優先するEU諸国は、クロアチア国境警察の暴力を黙認するばかりか、その治安活動を金銭的に支援する。その資金の一部は、国境警察の警備装備の購入や人件費などに充てられる。EUが、いかに国境管理をこだわっているかということである。しかし、この強引な難民排斥が、EU圏周辺国で拡大する人道危機を煽る結果となっている。

クロアチアからボスニア・ヘルツェゴビナに追いもどされた庇護希望者らは、2つの町のキャンプに収容されている。工場跡に急造したキャンプには、約5500人が収容されているが、ボスニア・ヘルツェゴビナに経済的余力がないため、キャンプは不衛生なままで、食料や医薬品など支援物資は、わずかな量でしかない。

アムネスティが聞き取りをしたアフガニスタン人女性は、家族全員、特に食べ盛りの子どもに食べ物が不足しがちで、「ひもじい思いをさせている」と嘆いた。

ボスニア・ヘルツェゴビナでは、その官僚的対応、法的支援や行政能力の欠如などの壁が立ちはだかり、難民申請をすることができない。そのため、ほとんどの庇護希望者らは、EU圏の国を目指す。

だが、道のりは険しい。庇護希望者は当初、ギリシャやブルガリア経由でEU圏に入っても難民申請ができないため、EU圏を出て、バルカン諸国経由で、移動が自由なシェンゲン圏の入り口であるスロべニアやイタリアに向かう。そのためには、クロアチアの深い森や急流の川、時に地雷原を超えなければならない。この過酷な道中で昨年は、20人以上が亡くなった。また大抵、クロアチアの国境警察に行方を阻まれ、暴力的に追いもどされた。

アムネスティが聞き取りをした人たちのうち3人に1人は、国境警察の暴行や所持品の収奪を受けたと語った。再度の入国の意思を挫くために、組織的に申し合わせたかのような暴力的対応だった。

パレスチナから来た男性は、他の9人とともにクロアチアで拘束され、ボスニア・ヘルツェゴビナ国境まで連行され、こん棒で殴られ催涙スプレーを浴びせられ、一時身動きできなかったという。現金や携帯電話などを没収され、二度とクロアチアに来るなと追放された。アルジェリア人の男性は、警察に靴や衣類、寝袋などを奪われ、凍る川を裸足で渡ったという。

イタリアやスロベニアで拘束された人たちは、しばしばクロアチア警察に引き渡された後、追放されて、結局、ボスニア・ヘルツェゴビナの難民キャンプに戻らざるを得なくなる。

暴力的扱いを受けたという申し立てが増えるにつれ、クロアチアは、国境での公的機関の視察や人権団体による難民支援を妨害した。警察は、ボランティアスタッフに対し脅迫や理由もない拘束などの嫌がらせを加えた。内務大臣が、複数のNGOが違法な入国に加担しているなどと批判し、ボランティア支援者らに冷や水を浴びせた。

国境での難民排除がこれほど暴力的で悪質であるにも関わらず、 EUはクロアチア警察への財政的支援を続けてきた。また、難民に過酷な移動を強いる結果となったEUの難民制度自体の問題には、意図的に目をつぶっている。雪解けの時期になると多くの庇護希望者らが、クロアチア方面を目指す。

余力がないボスニア・ヘルツェゴビナで難民の流入が拡大すると、深刻な人権危機が起こるおそれがあり、なんらかの対応が必要となる。

バルカン半島から欧州を目指す庇護希望者に対する排斥は、EUが国境を閉じる決断をしたことで生まれたのであり、EUはもはや、その責任から逃れることはできない。

アムネスティ国際ニュース
2019年3月13日

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