- 2019年9月10日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:フィンランド
- トピック:女性の権利
欧州委員会は、フィンランドが性暴力被害者の切実な訴えに応えていない、とする報告書を出した。
さまざまな面で男女平等の模範国とされるフィンランドだが、こと性犯罪への対応に関しては、時代遅れであり、女性が非常に不利な立場に置かれている。
同国の法律では、強かん罪の成立要件は暴力や脅迫による強要、あるいは相手が抵抗の意思を示せない状態につけこんだ場合に限定されているため、多くの女性は泣き寝入りせざるを得ない。性暴力の被害者が求めるのは、被害者側に立って、その人権を侵害した加害者を裁く法制度だ。そして、同意なき性行為はすべて強かんであるということを法律に明記することである。
今回の欧州委員会の報告書は、イスタンブール条約(女性に対する暴力および家庭内暴力の防止と撲滅に関する欧州評議会条約)の実施状況を監視する専門家グループ(GREVIO)が作成した。
イスタンブール条約は、強かんを含め同意なき性行為を犯罪とみなすが、フィンランドの法律は、強かんを同意の有無ではなく、暴力や脅しがあったか、あるいは、被害者が睡眠中や泥酔など抵抗できない状態だったか、に基づいて判断される。
フィンランドの司法省は最近、性暴力に関する法改正を進める作業グループを設置した。その提言書は、2020年5月末までに提出される予定だ。
アムネスティはこの動きを歓迎するが、法改正は、訴えても聞き耳をもたれないと諦めている被害者の切実な思いに応えるものでなければならない。被害者を全面的に支援するには、それ以外の方法はない。
欧州31カ国の中で、同意なき性行為は強かんだと法的に定義しているのは、9カ国にすぎない。欧州評議会の議長国であるフィンランドが、他のEU諸国に率先して法改正をする意義は大きい。
背景情報
フィンランドでは、毎年およそ5万人の女性が強かんなどの性暴力の被害にあっているとされるが、加害者が罪を問われることはほとんどない。さらに有罪となるのはごく少数で、2017年の場合、209件にすぎない。
アムネスティは今年4月の調査報告で、性犯罪者の多くを野放しにする同国の失態に警鐘を鳴らした。
個々に状況が異なる被害女性に真摯に耳を貸し、それぞれの状況を理解しようとしないのは、強かんと女性に対する社会の固定観念の表れであり、その対応そのものが、被害者たちが声を上げることを妨げる要因だと言える。
各国は、性暴力により厳しい法律に改正するとともに、性教育などの取り組みを通した性犯罪の防止、啓蒙活動による社会通念の打破、被害者に対応する警察官らの指導・教育などを徹底すべきである。
アムネスティ国際ニュース
2019年9月2日
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