- 2024年6月15日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:フィンランド
- トピック:難民と移民
フィンランド政府がいわゆる「移民の道具化」に関する緊急法を提案した。この法案は、移民の道具化を、「他国を不安定化させる目的で国家その他の主体がその国への非正規移民の移動を促進する行為」と定めている。
同法は、庇護申請や強制送還からの保護を著しく困難にする。また、国境での暴力と押し戻しが容認されるおそれがある。当局はフィンランドの特定の国境での庇護申請の受理を制限する権限を持ち、入国阻止も可能になる。場合によっては、個別状況を一切無視することさえ可能で、ノン・ルフールマンの原則に大きく違反する。
しばしば行われる「押し戻し」と呼ばれる国境での正式な手続きを省いた暴力的な排除は、庇護を必要とする人びとが国境に到達するのを阻止するために、欧州の他の国でも増加傾向にある。
今回の法案では、危険な状況にある、あるいは戻れば重大な人権侵害を受けるおそれがあると判断された人びとは、例外として扱われる。しかし、個々の状況を評価するには、特別な訓練を受けた職員と十分な時間が必要になる。こうした評価が、国境職員との短時間のやりとりの中でできるかどうか、はなはだ疑問だ。
法案は不服申し立てを実質的に認めていない。行政に関する不服申し立ては可能だが、送還が停止されるわけではない。
法案が国に与える権限は、現行のEUの法律や最近合意された「危機および不可抗力に関する規則」とも相容れない。
欧州法・基準、国際法・基準があるのには理由がある。ノン・ルフールマンの原則は、常に遵守しなければならず、帰国すれば深刻な人権侵害を受けるという訴えに対しては、厳格な審査が必要だ。
法案は、安全を求める人びとの権利を脅かし、国境での恣意的な行動や暴力を引き起こしかねない。フィンランドは、その根幹にある憲法の価値と法の支配へのこの攻撃をはね返し、人道と国際的義務の点から国境を管理すべきだ。
今回のフィンランドの動きの前には、ラトビア、リトアニア、ポーランドでは2021年以降、「移民の道具化」に対処するという名目で、人権法に違反する数々の政策や対策が打ち出されている。
背景情報
昨年9月以来、フィンランド政府は増加するロシアからの越境者の対応策として、難民・移民の権利を制限するさまざまな措置を打ち出しており。今回の法案もその一環だ。
11月からは、ロシアとの東側の国境を順次閉鎖し、4月には閉鎖期間を無期限とした。公式記録によると、今年2月から5月半ばまでに国境を越えてフィンランドに庇護を求めた人はわずか2人だった。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などは、フィンランドの対応にはEU法や国際法との整合性がないとの懸念を示している。また国連自由権規約委員会は、ロシアでは、庇護希望者は処罰や拘禁、送還のリスクにさらされていると指摘している。
アムネスティ国際ニュース
2024年6月10日
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