- 2021年5月 9日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:デンマーク
- トピック:難民と移民
(C) Sean Gallup/Getty Images
デンマークにいる多数のシリア難民が、在留許可を取り消され、ダマスカスやその周辺にいつ送還されるかわからない事態に直面している。拷問、強制失踪、恣意的拘束を受けるおそれがある国や地域への送還は国際法に反しており、デンマーク政府は送還を停止すべきだ。
昨年、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は、難民申請件数をゼロにする目標を掲げ、同国はおよそ900人の一時在留許可の見直しを決めた。その結果、昨年1月から今年4月までの15カ月間で、子どもを含む少なくとも380人の難民が、一時保護資格とそれに伴う在留許可を取り消されるか、許可の更新が認められなかった。そして政府からシリアの「安全地帯」と呼ばれるダマスカスや周辺地域への帰国を促されてきた。
シリアの専門家や国連難民高等弁務官事務所の見解とは裏腹に、デンマーク政府は、シリア難民のダマスカスへの帰還を安全だと判断した。信じがたいことに、市民の拘束、失踪、拷問が日常的な国に帰還しても安全とみているのだ。
在留許可を取り消された難民の多くは不服申し立てに対する判断を待っているところで、うち39人は在留許可の取り消しが最終的に決まっている。
在留資格を失った難民は帰還待機者用の施設に入れられ、シリアとの外交関係が結ばれてからシリアに送還されるか、その前に自主的に帰国するかのいずれかになる。仕事や教育の機会を与えずに無期限に施設に留め置くことは、彼らに帰還を強いているに等しい。シリアへの強制送還は彼らを拷問や深刻な虐待を受ける危険にさらすことになり、たとえ間接的なやり方であっても、国際法違反に相当する。
アムネスティの調べでは、市民がシリア政府の支配地域に戻る際には、治安上の手続きの一環として治安部隊による尋問を受けることがわかっている。この治安部隊こそ、シリア各地で組織的に行われてきた拷問や殺害、強制失踪など、人道に対する罪に相当する人権侵害を主導してきたと考えられる。
デンマーク当局は、シリア難民の一時的保護資格を取り消す不合理な方針を転換し、やむなく自宅や家族を残して来ざるを得なかった難民を標的にした送還を停止すべきだ。
アムネスティ国際ニュース
2021年4月27日
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