- 2021年5月28日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:マダガスカル
- トピック:
(C) Pierrot Men for Amnesty International
マダガスカル南部で暮らす市民数百万以上が今、深刻な干ばつに直面し、生きる権利を脅かされている。数千人が飢餓に瀕し、百万人以上が食糧不足に置かれている。状況は切迫しており、人道上の大惨事になりかねない。事態の回避には、アフリカ諸国を含む国際社会が結束し、速やかな行動を取ることが必要だ。
マダガスカルが、この40年間で最悪の干ばつに見舞われる中、食糧農業機関と世界食糧計画の2つの国連機関が、同国南部が人道危機にあると国際社会に訴えた。国際社会は、多数の市民が餓死する事態を傍観していてはならない。危機的状況にある国の支援に総力を結集しなければならない。
現在の飢饉は、昨年9月の作物の収穫量が減る時期から深刻になった。干ばつが3年続き、この40年間で最悪の状況となっている。世界食糧計画によれば、およそ114万人が深刻な食糧難に見舞われ、うち14,000人が、統合食料安全保障段階分類の5段階で最も深刻な「5=危機的」状況にある。
干ばつの影響を最も受けるのが、女性と子どもたちだ。生きるためには身の回りを売ったり子どもを働かせることを余儀なくされる。子どもたちが空腹で学校に行けない事態も起きている。
アムネスティが3月、現地の女性、子ども、男性に聞き取りをしたが、それぞれの証言から、人びとの生きる権利、特に食糧、水、医療、教育の確保が、干ばつで脅かされている実情が浮かび上がってきた。
いくつかの村で飢饉の影響で多数の死者が出ていることが確認されているが、死者の正確な数はわかっていない。飢えに苦しむ市民は、「生きるために何でもした。食事を抜き、サボテンや粘土を食べた」とアムネスティに話す。
子ども3人、孫9人と暮らす未亡人(63歳)は、こう話す。「以前は1日に3度、食事していた。トウモロコシ、ソルガムシロップで味を付けたサツマイモ、キャッサバなどを食べられた。でも今は何もない。少しでもお金ができると、キャッサバを買い、1日1回だけ食べて、残りを取っておく」
子どもたちは、栄養不足で健全な発育が妨げられるため、状況は特に深刻だ。統合食料安全保障段階分類によると、昨年、約2万7,100人の子どもが深刻な栄養失調で救命処置を受け、5歳未満の13万5,476人が衰弱状態にあった。
ある少年(17歳)は、「粘土を混ぜた食事をするとお腹が痛くなるから、学校には行けない。空腹で学校に行くと授業に集中できない」と話す。このような子どもは、他にも多数いる。
今年の穀物の収穫が、過去5年平均の半分以下になる見通しの中、世界食糧計画は、飢饉の影響と今後のリスクを軽減するには、向こう6カ月間で7,400万ドル(約80億円)の資金が直ちに必要だという。また、今年10月以降も作物の収穫減の期間が長引くとの見通しを示している。
国際協力と国際支援は、人権上の重要な義務の一つだ。国際基準では、国が自国の市民に人権上の義務を果たせない場合、国際的な支援を求めることとなっている。一方、支援する立場にある国には、支援する義務がある。支援を受ける側と支援する側の双者が、差別のない、平等の原則に沿った方法でこの義務を果たさなければならない。
マダガスカル南部ではこの10年、年間の平均雨量が減る一方で、過去15年間の平均気温は上昇している。同国は今後、干ばつや降雨量の減少、気温の上昇などで深刻な影響を受ける可能性が高いと予測されている。
気候変動の影響が強まり、同国の飢饉は悪化の一途をだどるだろう。この事態は、すべての国、特に気候変動を助長する国々は、温室効果ガスの排出量の削減を急ぐべきだという警鐘でもある。
また、富裕国は、飢饉などの問題に直面するマダガスカルなどの国々が、市民の命と人権を守るために、早期警戒システム、災害への備え、気候変動への適応戦略といった面でも支援する必要がある。
背景情報
アムネスティは、マダガスカル南部の干ばつと、干ばつが与える人権への影響に関する報告書を年内に公表する。
アムネスティ国際ニュース
2021年5月21日
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