パラグアイ:少女たちが直面する性暴力・妊娠・出産の出口なき連鎖

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2021年12月21日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:パラグアイ
トピック:性と生殖の権利

パラグアイでは、性暴力の被害に遭った少女や10代の女性は、人生を立て直す上でも、加害者の責任を問うにしても、厚い壁に直面する。法的には、性暴力被害者は国の支援を受けられるはずが、現実には、被害少女らの声は当局に届かず、少女らが負った心身の傷は癒えることなく、妊娠の継続と出産を強要される。また、性暴力の専門家の忠告も無視される。

少女らの性暴力被害に対して、健康、教育、法律の各分野の専門家の経験に基づいて対応するはずの既存の制度が、機能不全に陥っていることが、アムネスティの調べでわかった。

問題は極めて深刻だ。少女らに対する性暴力被害の検察局への通報は、2019年には1日平均で12件もあった。専門家は、彼らが知る性暴力被害の2件の裏には、少なくとも10件の被害がひそんでいるかもしれないと推測する。

性暴力は、多くの場合家庭内で起き、妊娠することもある。現実に10歳から14歳までの少女のうち、毎日平均して2人が出産している。また、2019年から2020年の2年間で、14歳以下の1,000人が出産した。さらに、15歳から19歳までなら、2019年だけで12,000人が出産した。その多くは、性暴力、性教育や避妊の知識不足、早期妊娠を防ぐ情報の不足、あるいは性と生殖に関する保健サービスを受けにくいことなどに基づくとみられている。

少女らの出産には、多大なリスクが伴う。15歳未満では、未熟児を産むリスクに加え、妊娠関連の合併症で亡くなる割合が4倍にもなる。にもかかわらず、少女らが選べる選択肢は極めて限られる。

合法的で安全な中絶を受けようとすると、南北アメリカ諸国の中でも特に厳しい法律の壁に直面する。妊娠が母体の生命を脅かす場合を除き、人工妊娠中絶は禁止され、違反すると収監されるからだ。

選択肢を失った少女らの多くは、性暴力の加害者と暮らすか、児童養護施設に収容される。いずれの場合も、しばしば出産を要求され、虐待を受け、真っ当な教育や尊厳ある人生を送る機会を奪われる。

パラグアイ政府は、専門家の忠告に耳を傾けず、妊娠の早期発見を促す対応を取らず、性教育の機会を提供せず、 性暴力を防止する取り組みを怠っている。

少女らには、暴力と無縁な人生を送る権利がある。妊娠継続の強要は、とりわけ強かんによる妊娠の場合、拷問とみなされ得る虐待の一形だ。近年、少女らの保護に向けた法整備で前進がみられたものの、社会的に最も弱い立場にある少女らを保護する上では、不十分と言わざるを得ない。

パラグアイでは2018年、性的虐待をなくし、被害者少女らに幅広く対応する法律が成立した。だが、それからほぼ3年、同法に基づく施策の行程表は、まだ完成していない。

また、少女らの妊娠を防ぐ上で欠かせない包括的性教育の整備も、いまだ着手されていない。児童青年法が、性教育の重要性を認めているにもかかわらず、文部科学省は2011年に包括的性教育の実施をとりやめた。2017年には、ジェンダー理論などを扱う教材の教育機関での配布・使用を禁止した。

パラグアイは、少女、少年が性暴力を受けそうになったとき、自分の言葉で暴力を拒否する能力を身につけられるよう、包括的性教育を直ちに導入すべきだ。

さらに、省庁間の連携不足による二次被害も日常的に起きている。教師、医師、心理学専門家、検察などに対し、被害者は辛い経験を何度も、時には長期にわたって話さなければならず、そのたびに心の傷がえぐられる。被害者を守る立場にある機関が守秘義務に違反して情報をメディアに漏らすこともあり、被害者を責めるような中傷にもさらされる。

被害者への包括的なケア、慢性的な二次被害の防止、性暴力による長期間にわたるトラウマの克服、新たな人生設計に対する支援などに対応する窓口の一本化に、そろそろ決着をつけるべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2021年12月1日

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