ラトビア:難民・移民を拘束し「自主」帰国を強要

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. ラトビア:難民・移民を拘束し「自主」帰国を強要
2022年10月18日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ラトビア
トピック:難民と移民

ラトビア当局は、ベラルーシとの国境で難民・移民を森の中の非公開の場所で拘束し、暴力的に押し戻している。殴打や電気ショックを加えられた人、「自主的」に帰国させられた人もいる。アムネスティはラトビア当局による難民・移民の残酷な扱いを調査し明らかにした。

難民・移民は「自主的」な帰国を受け入れるか、拘束・拷問のおそれのある国境で立ち往生するかという究極の選択を突き付けられている。

男性、女性、子どもが国境沿いの凍えるような寒さの森に放置され、テント生活を強いられたりしている。暴力的にベラルーシに戻されるが、そこでの庇護は望めない。国際法、EU法を無視した行為だ。

昨年8月10日、 ラトビア政府はベラルーシにより国境に行くよう促された難民・移民の急増を受け、非常事態宣言を出した。非常事態で、EU法、国際法、迫害の危険がある国への送還を禁止するノン・ルフールマンの原則に反して、国境沿いの4カ所での庇護を求める権利が停止され、ラトビア当局は人びとを強制的にベラルーシに戻すことが可能になった。

時間の経過とともに移動が減少し、件数には何度も入国を試みる人が含まれていると当局自ら認めているにもかかわらず、非常事態宣言は何度も延長されている。最新の延長で、非常事態は現在2022年11月まで続く。

何十人もの難民・移民が不衛生な環境の中、国境のテントで拘束されている。ごく一部の人は入国を認められたが、大多数は収容施設に入れられ、庇護申請手続き、法的支援、独立した機関などとの接触はほとんど認められていない。

強引な押し戻し、拘束、強制失踪

非常事態宣言下で国境警備隊は、特殊部隊、軍、警察の協力を得て難民・移民に対し、違法で手荒い強制送還を繰り返してきた。そして隣国のベラルーシ政府は、彼らをラトビアに押し戻している。

約3カ月間国境で足止めをされたイラク人男性のザキさんは、「これまでに150回以上、時には1日に8回も押し戻されたことがあった」とアムネスティに話した。

5カ月間を国境付近で過ごしたイラク人のハッサンさんは、「裸にさせられて殴られた。ベラルーシに戻される途中、冷水の川を渡らされた。『渡らないと撃ち殺す』と脅された」と話す。

両国による押し付け合いの被害にあった人たちは国境で野宿するか、森の中に当局が設置したテントで長期間の生活を強いられた。

ラトビア当局はこれまで、「人道支援」目的以外でのテントの使用を否定してきたが、厳重な警備下のテントは、拘束した難民・移民を収容し帰国させるための前哨基地として使用されてきたことが、アムネスティの調べでわかっている。

テントに収容されずに国境で足止めさせた人たちは、冬はマイナス20度にもなる野外での生活を強いられた。森で数カ月間過ごしたイラク人男性アディルさんは、「雪の上で寝た。火をつけて暖をとった。オオカミやクマも出た」と話した。

国境沿やテントでは、外部と連絡がとれないよう携帯電話を没収された。ラトビアのNGOは、2021年8月から11月にかけて、移民や難民30人以上の親族から、彼らと連絡がとれなくなったという報告を受けた。通信手段などを奪って非公開の場所のテントに拘束したり、国境で足止めしてラトビアとベラルーシの間を行き来させるのは、「秘密拘束」に当たり、強制失踪に相当する可能性がある。

強制送還、虐待、拷問

非常事態下で庇護手続きが取れない中、国境で拘束されている一部の人たちは、ラトビア当局の者たちから、森を出る唯一の方法として出身国に「自主的」に戻ることに同意するよう強要されている。また、収容施設や警察署で強制的にあるいは騙されて自主帰還を受け入れさせられた人もいる。

イラク人のハッサンさんは国境警備隊員に、「国に戻れば命を狙われるおそれがある」と説明したが、「ここにいても死ぬかもしれないぞ」と言われたという。イラク人のオマールさんは、「殴られて手を握られて無理やり書類にサインさせられた」と話した。

欧州連合(EU)は、ベラルーシがEU側に難民・移民を送り込み、ロシアを後ろ盾とした軍事と非軍事両面での圧力をかける「ハイブリッド攻撃」を仕掛けていると主張する。ラトビアだけでなく、リトアニアとポーランドも、この「ハイブリッド攻撃」を口実に、難民・移民に対し人権侵害を続けている。国境に到着した人びとに対しするラトビアの恥ずべき行いへの対応は、欧州機関にとって大きな試金石となる。欧州機関はラトビアが非常事態を終わらせ、安全を求めるすべての人びとが、出身地や国境を越えた方法を問わず、庇護を求める権利を復活させるよう緊急措置を取らなければならない

背景情報

ベラルーシとラトビア、リトアニア、ポーランドとの国境での押し付け合いが再び激化する中、EU理事会は、ラトビアが主張しているように難民・移民が「道具として使われている事態」に関する規則の採択を優先する意向だ。この規則が採択されれば、こうした状況に直面する加盟国は、EUの庇護法、移民法の下での義務が免除される一方で、難民・移民の権利が影響を受け、EUの庇護法が統一的に適用されなくなる危険性がある。

リトアニアでは、非常事態下での難民申請の制限や非正規入国者の機械的拘束を認める新法が導入された。これに対して欧州司法裁判所はこの6月、リトアニアの新法はEU法と相容れないという判決を下した。この判断は、昨年8月の非常事態宣言以来、ベラルーシから非正規に入国した人びとの庇護手続きを事実上阻止しているラトビアにも適用されるべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2022年10月12日

英語のニュースを読む

関連ニュースリリース