死刑統計2022発表:過去5年で最多の死刑執行

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. 死刑統計2022発表:過去5年で最多の死刑執行
2023年5月16日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:死刑廃止

  • サウジアラビアは1日で81人を処刑
  • 20カ国で死刑執行があった
  • 6カ国が死刑を全面的・部分的に廃止

2022年は20カ国で死刑が執行され、総件数は前年比53%増の883件だった。中東・北アフリカ地域での執行数が2021年の520件から825件と大幅に増えたためだ。またこの数には、中国であったとされる数千件の執行数は含まれていない。

中東・北アフリカの国々における死刑執行の激増は、国際法違反であり、人命軽視の現れである。サウジアラビアは81人もの人を1日で処刑し、民衆蜂起を抑え込もうと躍起になっているイランは、抗議する権利を行使しただけの人びとを処刑している。

中国を除く死刑執行数の9割を、以下の3カ国が占める。

  • イラン:2021年314件から2022年は576件へと急増
  • サウジアラビア:2021年65件から2022年196件とほぼ3倍増・この30年で最多
  • エジプト:24件

中国、北朝鮮、ベトナムなど、死刑を多用することで知られる国々は、死刑に関して秘密主義を貫いているため、実際の総数ははるかに高い。中国での正確な執行数は不明だが世界で最多の国であり、イラン、サウジアラビア、エジプト、米国が続く。

また、数年間執行を停止していた5カ国(アフガニスタン、クウェート、ミャンマー、パレスチナ国、シンガポール)が死刑を再開した。

薬物犯罪での処刑が増加

薬物関連の罪での死刑執行は、前年比2倍超と大幅に増えた。中国、サウジアラビア(57件)、イラン(255件)、シンガポールの4カ国で行われ、全執行数の37%を占める。ベトナムでも行われた可能性が高いが、国家機密のため数は不明だ。

薬物関連罪での死刑執行は、「最も重大な犯罪」(故意の殺人)以外での死刑の適用を禁じる国際人権法違反である。各国政府と国連はこの露骨な人権侵害を行う国々に圧力をかけ、国際的な保護措置を導入すべきだ。

死刑執行数は増加したものの、死刑判決数はほとんど変わらず、2021年の2,052件から2022年の2,016件へとわずかに減少した。

前向きな動き

こうした後退はあったものの、希望もある。6か国が全面的あるいは部分的に死刑を廃止したのだ。

カザフスタン、パプアニューギニア、シエラレオネ、中央アフリカ共和国の4カ国が、すべての犯罪で死刑を廃止し、赤道ギニアとザンビアの2カ国は、通常犯罪に対する死刑を廃止した。その結果、2022年12月時点では112カ国が死刑を全廃し、9カ国が通常犯罪に対して廃止している。 また、リベリアとガーナでは死刑廃止に向けた法的な取り組みが進み、スリランカとモルディブの当局は死刑を執行しないことを明言している。マレーシアの議会では絶対的法定刑としての死刑を廃止する法案が審議中だ。

多くの国が死刑制度と決別し続けている今こそ、他の国もそれに続くべきだ。イラン、サウジアラビア、中国、北朝鮮、ベトナムなど残虐な行為を行う少数派の国々は、早急に時代に追いつき、人権を守り、人ではなく正義を執行すべきだ。

国連総会では、過去最多となる125カ国が死刑執行一時停止決議に賛成票を投じた。希望を感じる一方で、2022年の悲惨な数値は闘いの厳しさを物語る。アムネスティは死刑のない世界が実現するまで、死刑廃止運動を続ける。

アムネスティ国際ニュース
2023年5月16日

最新の死刑統計2022 >

 

英語のニュースを読む