死刑廃止 - 最新の死刑統計(2023)

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世界の動向(2024年5月29日更新)

アムネスティの調べで、死刑を執行した国の数はこれまでで最も少なかったが、執行の件数はこの10年近くで最も多いことが明らかになった。執行国数の減少は、死刑存置国の孤立がますます進んでいることを示している。

死刑執行数は激増したが、これは主にイランで、当局が国際的な死刑の制限をまったく顧みない中、薬物関連犯罪での執行が大幅に増えたことによる。薬物関連犯罪は、国際人権法・基準では、死刑の対象にはなっていない。また、死刑の適用は、イラン社会で最も疎外される人びと、とりわけ当局の抑圧を受ける民族少数派バルーチの人びとに偏っている。

なお今回も執行数の合計には、世界最多の死刑執行国である中国で執行されたとみられる数千件は含まれていない。北朝鮮とベトナムは、幅広く死刑を執行しているとみられるが、死刑に関わる数字の入手はできなかった。

死刑情報の秘匿と統制は、恐怖心を植え付け、国家の権力を誇示する道具として死刑を利用する国の強い意志を示している。死刑に関する数値は、中国とベトナムでは依然として国家機密として扱われている。これら2カ国と北朝鮮では、死刑判決と執行に関する情報の取り扱いが厳しく制限されているが、当局はごく稀に秘密主義のベールを取り払うことがある。犯罪を行えば、あるいは既定のルールから逸脱すれば、厳罰が待ち受けることを再認識させるためだ。ミャンマーでは、国軍当局による極めて不公正で秘密裏の手続きを経て、国軍管理下の裁判所で死刑判決が言い渡されている。同様に米国の複数の州では、死刑執行に使用する機器や薬物の調達源を秘密にし、監視を妨げる法案の手続きを進めた。典型的な事例としては、アラバマ州当局が窒素ガスによる窒息という執行手順の重要部分を改訂したことが挙げられる。

数カ国で、死刑には犯罪抑止の効果があるという根拠がないにもかかわらず、世間の耳目を集めた事件の後あるいは選挙前、死刑賛成派の主張が目立った。注目を集めた一連の事件を受けて韓国の国会で9月、新生児の殺人や遺棄の最高刑に死刑を科す改正法が可決された。台湾や米国などでは、大統領選の最中に死刑の問題が取り上げられた。

 

 

2023年は、死刑廃止に向けた取り組みをしてきた数カ国で一定の成果がみられた年でもあった。

7月、パキスタンでは薬物関連の犯罪への死刑を、マレーシアでは絶対的法定刑(裁量の余地のない法定刑)としての死刑を、それぞれ廃止する法律が施行され、ガーナ議会では、刑法と軍法から死刑を排除する2つの法案に賛成票が投じられた。これらの進展は、人権を政策の中心に据えることで、犯罪への対応を見直し、犯罪防止と元犯罪者の社会復帰に資源を向けることが可能であることを示している。世界では圧倒的多数の国がすでにこの方針を採用し、法律上または事実上、死刑を廃止している。

2023年末、この残酷な刑罰を廃止する法案がケニア、リビア、ジンバブエの議会で審議されており、世界中から死刑がなくなるのも時間の問題だという希望が持てる。

2023年死刑執行国

2023年死刑執行国

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