死刑廃止 - 最新の死刑統計(2020)

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最新の死刑統計(2020)

世界の動向(2021年4月21日更新)

アムネスティが分析した2020年の死刑の適用状況は、世界の死刑判決数や死刑執行数が減少傾向にあることを顕著に示した。両者の減少を後押しする結果となったのが、新型コロナウイルス感染症のパンデミック (世界的大流行)である。と同時に、死刑という刑罰制度に内在する残虐性を際立たせる年でもあった。

2015年以降続いてきた死刑執行数の減少傾向は 2020年も変わらず、前年比26%減となり、過去10年あまりで最も少ない数値となった。死刑執行があった国は前年より2カ国少ない18カ国で、死刑を執行する国が少数派であることをあらためて示す結果となった。

前年比26%という著しい減少は、これまで執行件数が多かったイラクとサウジアラビアが執行数を大幅に減 らしたことによるところが大きい。また、パンデミックの影響による執行停止も何件かあった。米国では、連邦政府による死刑執行が急増する一方で、感染拡大の影響を受けた執行停止や執行命令の遅滞により州レベルの執行数が減り、国全体の執行件数に大きな変動はなかった。死刑執行の延期命令のうち6件は、パンデミックの影響によるものだった。シンガポールでは、訴訟を受けて死刑執行が保留になったが、中には新型コロナウイルス関連の規制の影響もあった。世界の死刑判決数も著しく減少した。その背景には、パンデミックによる裁判の遅れや司法手続きの停滞がある。

市民の生命を守るために、世界が新型コロナウイルス感染対応に懸命に取り組んでいる中、いくつかの国で 死刑の執行が急増した。エジプトでは執行数が前年比で3倍を超え、米国では7月に連邦レベルでの執行をトランプ政権が17年ぶりに再開し、5カ月半あまりで10人の死刑を執行した。インド、オマーン、カタール、台湾も、国家による「殺人」を再開した。

世界がパンデミックで機能不全に陥る中、複数の国の政府関係者は健康対策をなおざりにし、死刑の判決と執行に執拗なまでに固執したことは、彼らの死刑適用の冷酷さをさらに浮き彫りにし、死刑廃止が喫緊の課題であることをあらためて示した。例えば米国では、州と政府の高官が、残された時間を精神的指導者と過ごせるよう執行延期を求めた死刑囚の願いを受け入れずに執行を進め、弁護人、看守、囚人など執行に関わる人びとを感染リスクにさらした。中国では、数千人に死刑が執行されたと思われるが、その件数は依然として国家機密とされている。当局は、新型コロナウイルス感染対策を妨げる犯罪行為に厳しく対応すると発表、事件の迅速な処理が認められることとなった。その結果、少なくとも1件の死刑判決が、恐るべき速さで下された。

多くの国で、パンデミック対策として刑務所訪問や裁判手続きの停止の動きがあり、死刑に直面している人びとは長期間、外部と接触できないまま留め置かれたほか、弁護人との接触も制限された。数カ国が死刑存置に固執する中、新型コロナウイルス感染症により、囚人や司法手続きに関わる人びとの健康に多大なリスクをもたらしただけでなく、囚人が弁護人との接触を断たれるなど裁判の公正さを欠く事態を引き起こした。公正な裁判手続きが保障されることは、死刑事件で非常に重要な保護措置である。

2020年の動向は、死刑の廃止に向け世界が前進を続けている近年の傾向を裏付けている。チャドは5月に全面的に死刑を廃止、この10年間でアフリカで死刑を全廃した5カ国目となった。カザフスタンは、死刑廃止を目指す市民的および政治的権利に関する国際規約の第二選択議定書(いわゆる死刑廃止条約)に9月に署名し、12月に批准した。バーレーン、ベラルーシ、日本、パキスタン、スーダンでは、前年にはあった死刑執行が1件もなかった。カザフスタン、ロシア、タジキスタン、マレーシア、ガンビアは、死刑の執行停止を維持した。米国では、コロラド州が国内で22番目の死刑廃止州となり、カリフォルニア、オレゴン、ペンシルバニアでは、州知事による死刑執行停止が継続され、オハイオでは、予定されていたすべての死刑執行が延期された。

他の国でもさらなる進展の兆しがあった。1月、バルバドスは、絶対的法定刑としての死刑を廃止する決断を下し、4月、サウジアラビアは、反テロ法関連の罪を除いては犯行時点で18歳未満の被告人に死刑の適用をやめると発表した。7月、スーダンが背教罪への死刑の適用を廃止した。

死刑執行

2020年、世界で確認された死刑執行数は少なくとも483件で、この10年間あまりで最も少ない数値となっ た。執行数は、2019年の657件より26%、最多だった2015年の1,634件より70%減った。過去10年の最低件数を記録したのは、3年連続となった。

4カ国が死刑執行数の88%を占めた。イラン(246+)、エジプト(107+)、イラク(45+)、サウジアラビア(27)である。この数値には、これまでと同様に、死刑情報を国家機密扱いとする中国の数千件ともいわれる処刑数 は含まれていない。また、大規模に死刑を執行しているとみられる北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)とベトナムでも、処刑数など死刑に関する情報をほとんど入手できなかったことも考慮する必要がある。

処刑された483人のうち3%にあたる16人が女性だった。エジプト(4)、イラン(9)、オマーン(1)、サウジアラビア(2)である。

世界の執行数が前年から減った主な要因は、イラクとサウジアラビアの2カ国にあった。執行数は、イラクで少なくとも100件から少なくとも45件に半減し、サウジアラビアでは184件から27件と、85%も減少した。一方で、エジプトでは少なくとも32件から少なくとも107件へと3倍に増え、最も多かった2013年の少なくとも109件をかろうじて下回った。

死刑執行数の推移 2010-2020/死刑廃止国および執行国の推移

日本の状況

日本では、2011年以降で初めて死刑の執行がなかった。死刑判決は3件あり、すべてが複数人を殺害した罪だった。年間3件の死刑判決は、2012年以降続く年間5件以下のレベルに収まる形となった。死刑判決を受けた被告の控訴審が1月にあり、1審の死刑判決が破棄され無期懲役となった。犯行当時は心身耗弱状態にあったと認定された。3人の死刑確定者が拘置所で亡くなり、年末時点での死刑確定者数は、死刑判決を受けている120人中、外国籍者6人を含む110人だった。うち2人が再審請求を断念した。死刑確定者は依然として独房に収監されており、実効性ある保護措置や定期的な精神鑑定を受けられなかった。精神障がい者や知的障がい者を死刑の対象とする国際法および国際基準違反の状態が続いている。

2月20日、大阪地方裁判所は松本健司の8回目の再審請求を退けた。松本は、起訴される以前から水銀中毒(水俣病)が原因の精神障がいがあり、死刑確定者の独房に収監されている間に妄想性障がいを発症した。弁護人によると、これらの障がいが尋問中に及ぼした影響は甚大で、自白を強要されることになった。また、裁判を理解したり裁判に参加したりする能力を欠き、科された死刑の意味や目的を理解できなかったという。松本の再審請求を却下した法廷は、控訴中の執行停止命令を出すことも退けたが、これは公正な裁判の権利を保障する憲法第32条に違反するものだ。また、この決定は、死刑の適用に関する国際的な保護措置にも違反している。

最高裁は12月23日、袴田巖の地裁の再審開始決定を覆した東京高裁の決定を取り消し、審理を東京高裁に差し戻した。袴田は、1968年に不公正な裁判で有罪判決を受け死刑を宣告された。その後、独房で長年過ごす間に精神障がいを発症した。2014年に釈放され、再審手続き中は自宅で過ごすことを認められた。

日本の死刑執行数推移

2020年死刑執行国

2020年死刑執行国

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