ペルー:デモ隊を殺傷 問われる当局の責任

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2023年6月 6日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ペルー
トピック:

政治的な危機にあるペルーで、抗議活動に対し警察と軍が武力で応じ、昨年12月から今年2月にかけ市民49人が犠牲になった。検察は、殺傷力の高い武器の使用を命じた、あるいは許可した上層部全員を調査すべきだ。

犠牲者のほとんどが貧しい先住民農民で、この背景には治安部隊の人種的、社会経済的偏見があった可能性がある。

アムネスティは抗議デモがあった4都市で死傷した人たちのうち52人について調べた。

52人中の死者は25人で、25人中20人は超法規的処刑で亡くなった可能性がある。20人はいずれも頭や首、胸などに銃弾を受けており、治安部隊が違法な武力を使っていたことを裏付ける。治安部隊は、他の地域でも同様の手法で対応していたことから、武器の使用について上官による組織的な指示か、容認があった可能性がうかがえる。

最初の死者が出たのは12月11日だったが、警察と軍はその後もライフル銃を市民に向けて無差別に発砲するなどの対応を取り続けた。過剰な武力行使を停止するよう人権オンブズマン事務所が強く求めたにもかかわらず、多くの場合対応は変わらず、何時間も発砲を続けた。

治安部隊はデモ鎮圧で使用した武器の記録を検察に提出しているが、アムネスティが入手したこの記録には、弾薬名や特定の武器の使用者についての記載がなかった。アムネスティが得た証言や証拠から、治安当局は殺害に使用した武器が特定されないようにする対応を取っていたことがわかっている。さらにこの隠ぺい工作に指揮官が関わった可能性があることも明らかになった。

アムネスティが入手した記録には、南部の都市フリアカで1月9日、特殊作戦局の隊員2人がAKMライフルで7.62口径の弾丸を4発発射したとあったが、この種の具体的な報告はこれだけで、他にはなかった。しかし実際には、同日少なくとも15人が殺傷力のある弾丸で殺され、数十人が銃弾を受けて負傷していた。また、国内外で治安当局による使用が禁じられている鉛散弾を使用したことも隠ぺいされていた。

匿名を条件にアムネスティに聞き取りに応じた警官は、次のように述べた。「警察内でよく話すのは、暴力的な集団がいたらまず1人に発砲するということだ。死者が出ない限り騒ぎ続けるが、その結果を目にすれば騒動は収まる」

アムネスティが調べた死者25人のうち15人は21歳未満で、その多くは先住民系の貧しい家庭の出身だった。通りを横断中に殺された15歳の少年の母親は、「貧しくなければ息子は死ななかった。貧しくなければあの日、働きに出る必要がなかったから」と話した。

抗議活動中の死者の状況を統計的に分析した結果、当局側に著しい人種的偏見があったことも明らかになった。たとえば、先住民族やアフリカ系住民が2割の首都リマでは、デモも暴力行為も多かったにもかかわらず、治安部隊との衝突で亡くなったのはわずか1人だった。一方、先住民族やアフリカ系住民が8割を超える南部都市アヤクチョでは、10人もの死者が出ていた。

重大な人権侵害があったにもかかわらず、検察は捜査に入らなかった。アムネスティの調べでは、検察は治安部隊が使用した武器を押収するわけでも、隊員に聞き取りをするわけでもなかった。検察はデモ参加者の殺傷問題に対処する必要があるが、人や資源の不足に加え、検事総長が行った人事異動など組織体制が変わったことで、問題への対応が一層難しくなっていた。

重大な人権侵害と国際法上の犯罪が処罰されないリスクを考慮し、アムネスティは検察に対し、迅速かつ徹底した捜査の実施、地域や国際的な人権機構への捜査支援の要請、被害者の司法利用の保証などを求める。

ボルアルテ大統領には、抗議デモに殺傷力ある武器や銃弾を使用しないよう治安部隊に命じるよう求める。また、ペルー政府には、国家機関にまん延する人種差別的体質の検証を求めたい。

アムネスティ国際ニュース
2023年5月25日

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