2017年度も世界各地でテロ、紛争が激しさを増し、人道危機・難民危機が続いている。一方、ポピュリズム、自国第一主義が台頭し、その中で社会的弱者がスケープゴートにされ、人種差別や難民排斥の動きが広がっている。こうした背景の中、アムネスティは難民の保護を各国に求める国際キャンペーン「I WEOLCOME 難民の未来はあなたがつくる。」に、昨年に引き続き取り組んだ。また、日本で暮らすレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(LGBT)に対する差別撲滅を目指すキャンペーンを開始した。

国際キャンペーン(国際的な活動)

「I WELCOME 難民の未来は、あなたがつくる。」キャンペーン

「I WELCOME 難民の未来は、あなたがつくる。」キャンペーン© Giorgos Moutafis/Amnesty International

急増する難民の9割がいわゆる途上国に集中し、受け入れは限界に達している状況で、難民の命と安全を守るために世界各国が難民を保護する責任を公平に果たすよう提言を行った。市民一人ひとりの声を日本政府に届けるため、公式サイトとハガキで署名活動を実施し、合計3,000筆が集まった。4月のアースデー、10月に行われたグローバルフェスタ、また日本で暮らすロヒンギャ難民の人を招いてのセミナーでは、難民が置かれている状況を市民に伝え、改善に向けた一人ひとりの行動を呼びかけた。

国内法制度への取り組み(国内の活動)

LGBT差別の撲滅をめざす「Love Beyond Genders」キャンペーン

LGBT差別の撲滅をめざす「Love Beyond Genders」キャンペーン

日本で暮らすLGBTの人びとを取り巻く人権状況に焦点を当て、国や自治体で、性的指向や性自認を理由とした差別を禁止する法制度がつくられ、LGBTに対する差別をなくすために、2017年から新たにキャンペーン「Love Beyond Genders」を開始した。日本の状況と政府への政策提言をまとめた調査報告書を発表し、複数メディアに取り上げられた。

LGBT差別の撲滅をめざす「Love Beyond Genders」キャンペーン

多様性が尊重される社会の重要性を伝えるため、東京のプライドパレードへ200人以上のサポーターとともに参加し、ブースとフロートを出展。政府に法整備を求めるオンライン署名には2,000筆が集まり、フォトアクションには500人が参加した。また、国会議員や市民の意識啓発を目的としたイベントを開催、キャンペーンを全国に広げる素材づくりにも取り組むとともに、専用サイトとフェイスブックを開設した。

死刑廃止

4月に死刑に関する統計報告書を発表した。日本国内では、7月13日に2人、12月19日に2人、計4人の死刑執行があり、抗議声明を出すとともに法務省前で抗議行動を行った。中には再審請求中の者もいた。危機にある個人として死刑確定者の支援を行っており、松本健次さんの支援の一環として精神疾患を有する死刑確定者の処遇の問題について改善を求め、彼に対する死刑執行の停止を呼びかける署名を集めた。また、袴田巖さんの再審開始の実現に向け、他団体と協力し検察庁へ要請を行った。

いわゆる「共謀罪」法の廃止に向けた取り組み

テロ等準備罪を含む組織的犯罪処罰法の一部改正に伴い、社会への監視を強め、人権のために取り組む団体や個人の表現の自由を脅かす可能性があるとして、採決前の5月、国際環境NGOグリーンピースとともに共同声明を発表。6月と法案成立後の9月には、大規模な市民集会を他団体とともに実施した。

ユースと人権教育

ユースと人権教育

12月、米国のロースクールから専門家を招いて、ユースを対象としたジェンダーに関する人権教育プログラムを実践する研修合宿を開催した。学生ら約30人が参加し、「ジェンダーと人権」「ジェンダー差別と不平等の実態」「問題改善に向けた活動のノウハウ」の3つの項目について、基本的な知識から実践的なスキルまでを身に付けた。

普遍的・定期的レビュー(UPR)に向けた提言書の提出

国連人権理事会の普遍的・定期的レビュー(UPR)日本審査を前に、国内人権状況に関する国際事務局の調査・分析に基づき、日本政府に対し、差別からの自由と平等を実現する法的な枠組みを作るよう求めるなど提言を行った。

山城博治さんの釈放を求める活動

沖縄平和運動センターの山城博治さんが公務執行妨害の罪に問われ、長期にわたって拘留されていたことに対し、懸念を示す声明を発表。釈放を求める運動に他団体と共に取り組んだ。

イベント

全国スピーキングツアー:陳光誠講演会「不屈力」

全国スピーキングツアー:陳光誠講演会「不屈力」

中国から米国へ亡命した盲目の人権活動家、陳光誠さんを招へいし、10月中旬から11月上旬までの約3週間をかけて、全国8カ所(札幌・盛岡・鎌倉・東京・徳島・広島・京都・名古屋)で講演会を実施した。自身の壮絶な経験を通して、中国の人権活動家らへの弾圧の実態、活動家らが抱える困難や葛藤についてお話しいただき、中国の人権問題が決して日本に無関係ではなく、そして一人ひとりがさまざまな立場から果たせる役割は必ずあるということを伝えた。延べ730人に参加いただき、新聞やテレビ等、多くのメディアにも取り上げられた。

ライティングマラソン

ライティングマラソン

暴力をもちいていないのに、自らの信念や人種、宗教、肌の色などを理由に囚われの身となった人びとの自由を求め、世界中の仲間とともに手紙を書く、アムネスティ恒例のイベント「ライティングマラソン」。2017年も、全国28カ所でグループチームが主催し、手紙書きのイベントなどを開催した。

アムネスティ・フィルム・フィスティバル2017

トークイベント「自分が代わる 社会を変える~ハンセン病と向き合う~」森元美代治さん(IDEA ジャパン代表)トークイベント「自分が代わる 社会を変える~ハンセン病と向き合う~」森元美代治さん(IDEA ジャパン代表)

1月28日、29日の2日間、東京都内のヤクルトホールにて映画祭を開催し、国内外の人権状況の実態を伝える8作品を上映した。2日間の述べ参加者数は800人を超えた。映画に関連するトークイベントも行い、サプライチェーンに潜む人権問題、ハンセン病患者への差別について、ゲストを招いてお話いただいた。

2017年に展開した主なオンラインアクション

アムネスティ日本とは