中国の人権

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2019年の人権状況:概況

2019年も反対意見に対する組織的な取り締まりが目立った。司法制度においては、不公正な裁判や拘禁中の拷問や虐待がまん延し続けている。また、広範な死刑の適用に関する情報は、依然として国家機密扱いだった。

「反分離主義」「反テロリズム」の名目の下に行われている弾圧は、新疆ウイグル自治区(新疆)およびチベット民族居住地域(チベット)で特に厳しい状況が続いている。当局は、新疆のウイグル人、カザフ人、その他主にイスラム教徒である各民族集団に対し、立ち入った監視や恣意的拘禁、強制的洗脳教化を行っている。

LGBTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の人たちは、社会に広がる差別や偏見に直面している。医療サービスが不十分なため、彼らは非正規で不適切な性別適合治療を受けるという深刻な危険を冒している。LGBTIの人たちは「転向療法」という形態の虐待にも直面している。

中国政府は、人権活動家たちや独立系NGOに対し、自宅や職場の強制捜索を行うなど、脅迫、迫害、起訴を続けている。人権活動家たちの家族たちも、警察の監視や嫌がらせを受けたり、拘禁されたり、移動の自由を制限されたりしている。

人権が大きく後退する中、環境保護の取り組みについては、汚染工場の閉鎖・改修や排出問題に対処するための新規制の採択など、ある程度の前進をみせた。グリーンピース・東南アジアおよび IQAir AirVisual (スイスの大気質監視施設)によるデータでは、北京はもはや世界で最も汚染された都市のトップ100には含まれていない。

司法制度

2月、習近平国家主席は、法制度は中国共産党の絶対的指導の下にあるべきだと強調した。法執行機関と司法制度は広く党の管理下に置かれたままになっている。中国は、「指定居所監視居住(被告人の居住場所の指定と監視)」および超法規的拘禁制度(留置)など、恣意的かつ秘密の拘禁を合法化した。こうした手続きにより、隔離拘禁の長期化が可能になり、拷問や虐待、強制的「自白」の危険が高まっている。国連の強制的失踪作業部会は、2月から5月だけで、中国での強制的失踪に関する新たな事例20件の情報を収集している。2月に施行された新しい条例により、法執行機関・治安機関の権限が強化されることとなり、警察官たちが個人・組織の財産や利益に損害を与えたとしても、その法的責任から免除されることになった。

表現の自由 - インターネット

政府は、表現や結社、平和的集会の自由に対する権利に対する制限を強めている。当局は、印刷物からオンラインゲームまで、すべてのメディアを厳しく検閲している。民間のテクノロジー企業やインターネット企業の支援を得て、官憲たちは、顔認識や実名登録システム、ビッグデータを使って、人びとを無差別で大規模な監視・管理下に置いている。7月には、中国の社会信用制度に関する規制草案で、「社会道徳を侵害する」あるいは「社会的悪影響」を引き起こす情報を広めた市民を罰することが提案された。1月、中国では公式に禁止されているTwitter の複数のユーザーから、頻繁に利用していために脅迫されたり、拘禁されたり、あるいは警告されたりしたとの報告があった。また、中国は、自らの「グレート・ファイアウォール(防火長城)」を超えてサイバー空間の規制を拡大し、問題があると見なした海外のサーバーやウェブサイト、メッセージアプリに対して強力なマルウェアを仕掛けたり、DoS攻撃を加えたりした。

宗教や信条の自由

中国政府は、3月の全国人民代表大会で李克強国務院総理(首相)が繰り返し言及した「宗教の中国化」を推し進め、キリスト教徒たちやイスラム教徒たちに対する締め付けを続けた。多くの仏教、道教の寺院や像、モスク、教会は、政府の指示により損害を与えられたり破壊されたりした。当局は党が公認しない宗教の指導者たちを「国家の安全に危害を加える罪」で投獄した。2019年12月30日、秋雨聖約教会の王怡牧師は、「違法なビジネス活動」および「国家政権転覆扇動」の罪で禁固9年の判決を受けた。

新疆ウイグル自治区

新疆のウイグル人やカザフ人、その他の主にイスラム教徒である各民族集団の拘禁に関する報告が続いた
(c) private

「教育転向」施設としても知られる「職業訓練センター」と称する施設は、最終的に廃止する可能性があるという政府の主張にもかかわらず、新疆のウイグル人やカザフ人、その他の主にイスラム教徒である各民族集団の拘禁に関する報告が続いた。2017年初頭に新疆政府がいわゆる「過激化除去」を実施する条例を制定した後、推定100万人ものウイグル人やカザフ人、その他の各少数民族の人たちがこれらの強制収容所に送られた。新疆では、宗教と表現の自由に対する権利を行使しただけで、多くの宗教的指導者たちや知識人たち、学者たちが拘禁された。これには、2014年に終身刑を宣告されたウイグル人の経済学者で著述家、教授でもあるイルハム・トフティさんや、2017年に2年の執行猶予付き死刑判決を宣告された新疆大学の元学長タシポラット・ティップさんが含まれ、両者とも「分離主義」の容疑で起訴されていた。

3月、国連人権高等弁務官は同事務所が「特に新疆でさまざまな方法で強制的失踪と恣意的拘禁が行われていると指摘する報告が続いていることに関し、独立した評価を実施するために現地への立ち入りを全面的に認めるよう」中国政府に働きかけていると語った。

7月、国連人権理事会で25カ国が新疆に関する共同声明を発表した。9月には、アムネスティ・インターナショナルは他の4つの人権団体と共に国連事務総長に宛てた共同書簡で、新疆での大量拘禁をやめさせるため中国への圧力をさらに高めるよう、国連に要請した。

11月、匿名の中国官憲たちがリークした2組の文書を、ニューヨーク・タイムズと国際調査報道ジャーナリスト連合が公表した。文書には、新疆での弾圧と、主にイスラム教徒である数十万人の少数民族が洗脳や虐待などを受けている各施設の体制が詳述されている。その内容は、元被拘禁者や収容所に送られた人たち、新疆で行方不明になった人たちの海外にいる親族たちから、アムネスティが受け取った証言と一致している。この2組の文書もまた、単なる「職業訓練施設」であるという中国政府の主張に対する反証となっている。

レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス(LGBTI)の人たちの権利

LGBTIの人たちは、家庭や職場、学校、そして公共の場でも差別に直面し続けている。2018年に行われた第3回目の国連による普遍的定期審査では、審査プロセスの最後に、中国当局は性的指向や性自認、性表現に関するすべての勧告を受け入れ、これを実施したと主張した。2つの勧告において、法的差別を禁じるよう要請があったが、LGBTIの人たちを差別から明示的に保護する法律は存在しない。

ゲイ問題関連のコンテンツを削除したとされる昨年の試みに続き、最大のソーシャルメディア・プラットフォームの1つである Weibo (微博)は、4月にレズビアンに関するコンテンツを削除した。これについて活動家たちは、LGBTI関連コンテンツのオンライン検閲が強化されるのではないかと懸念した。

同性婚を法的に認めるよう求めるオンラインキャンペーンの後、全国人民代表大会常務委員会法制工作委員会の岳仲明報道官は、同性婚を民法で認めることを支持する世論があることを公に認めた。しかし、中国の同性カップルの人たちは、性的指向を理由に平等なパートナーシップの権利が認められることはなかった。

トランスジェンダーの人たちは「精神疾患」の患者として分類され、性別適合手術には家族の同意が必要だった。そうした手術を受けるための他の要件 -- 例えば独身であるとか、犯罪歴が無いなど -- は、こうした治療を受けるためのさらなる壁となっている。根強い差別や偏見、治療への厳しい要件、情報の不足などがトランスジェンダーの人たちを非正規で安全とは言えない性別適合治療に頼るしかない状況に追い込んでいる。

トランスジェンダーの人たちの話によれば、医師からは、初めてホルモン剤を利用し始めたとき、性別適合治療に関する助言や指導は一切なかった。その代わりに、治療の選択肢については、友人やインターネットで情報を得たりしている。

緊急に身体と性自認を適合させる必要を感じていたトランスジェンダーの人たちは、信頼できる健康関連情報を得られず、ホルモン剤を入手するために安全とはいえない危険な闇市場に頼るしかなかったとアムネスティに語った。病院で性別適合治療を受けることは不可能だと考え、自分自身で手術をしようとする人たちさえいた。

アムネスティはまた、LGBTIであることは治療を必要とする精神疾患であると考える家族から、性的指向、性自認、性表現を変えると主張する「転向療法」を受けるよう強いられているという報告も受けている。2014年に、同性愛は病気ではなく治療を必要としないと宣言した画期的な判決が出ているにもかかわらず、政府は転向療法を禁止する措置を講じていない。

人権活動家

人権擁護に取り組む人たちが自由に活動できる機会は減少の一途をたどっている。当局は彼らを組織的な監視や嫌がらせ、脅迫、拘禁、投獄の対象とした。人権をはじめさまざまな運動の活動家が「国家政権転覆」や「国家政権転覆扇動」「騒乱挑発」という、あいまいな容疑で起訴され続けた。多くは国家の安全に危害を加える犯罪に関与した容疑で「指定居所監視居住」と呼ばれる拘禁措置を受けた。「指定居所監視居住」では警察が、こうした犯罪の疑いがある人たちを、本来の拘禁手続きを踏むことなく秘密の場所で最長6カ月勾留することが可能で、弁護士や家族との接見も禁止できる。

当局は、政府とは違う意見、反対意見に対する取り締まりを継続している。著名な人権派弁護士である高智晟さんは、自ら経験した強制的失踪をはじめ、拷問や虐待、違法な自宅軟禁について詳述した回顧録を発表したが、2017年8月に再び強制的に失踪させられた。高さんの所在は不明のままである。2月、北京の人権派弁護士である余文生さんは、中国の憲法に対する5つの改革を求める公開状を配布した後、「国家政権転覆扇動罪」および「公務執行妨害罪」の容疑で起訴された。市民的・政治的権利を擁護する草の根活動の主導者、陳建芳さんは、2019年6月に「国家政権転覆扇動罪」で正式に逮捕された。活動家の陳兵さんは、2016年の天安門事件27周年に際し、「騒乱挑発」の容疑で他の3人と共に有罪判決を受けた後、4月4日に3年半の禁固刑を宣告された。

当局はまた、人権侵害を告発する市民ジャーナリストやNGO職員に、報復措置をとっている。2019年年初、広州にある中国労働者の権利関連ウェブサイトの編集者である危志立さんや柯成兵さん、楊鄭君さんが拘禁された。中国での抗議行動について記録・報道しているウェブサイト 64tianwang.com (六四天網)の共同設立者である黄琦さんは、 「国家機密漏洩」および「外国機関への国家機密提供」を理由に禁固12年の刑を宣告された。「民生観察」という人権のためのウェブサイトの創立者である劉飛躍さんは、2016年後半に拘束され、2019年1月29日に「国家政権転覆扇動罪」で禁固5年の刑を言い渡された。反差別NGOの職員である程渊さんと劉永沢さん、吴葛健雄さんは、「国家政権転覆」の容疑で7月22日から隔離拘禁された。外国NGO管理法に違反したとして外国NGOのアジア・カタリストを、当局は初めて公に批判した。

人権活動家の家族も、警察の監視や嫌がらせ、移動の自由に対する制限の対象となっている。投獄された人権派弁護士・王全璋の妻である李文足さんは、家の賃貸契約に署名しないよう警察が家主を脅すため、住む場所を見つけることが難しい状態が長い間続いたと語った。6歳になる息子の泉泉は、警察が学校の理事たちを脅したため、学校に行くことができなかった。

1989年 天安門で何が起こったのか?

31年前、1989年6月3日の夜、天安門広場に集まった民主化を求めるデモ隊を排除するため、重装備の部隊と数百の装甲車が北京市内に入りました。部隊はデモ参加者や見物人に向かって銃を乱射、さらに、動けなくなった市民を装甲車で轢き殺しました。北京市内を制圧した後も、軍は独断で人びとを銃殺しました。

同年6月末に中国政府が発表した公式報告書によると、3000人以上の市民が負傷し、36人の学生を含む200人以上が死亡しました。アムネスティは、さらに多くの人が殺害され、中国全土で数万人が逮捕されたと推測していますが、中国当局は真相解明を拒み続けているため、詳細はわかっていません。事件の真相解明を求める声は今でも続いていますが、そのような声を上げる人びとを中国当局は弾圧の対象とし、今も厳しく取り締まり続けています。

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香港 (中華人民共和国、香港特別行政区)

香港:平和的な集会の自由
(c) Jimmy Lam @everydayaphoto

中国本土で適用されている国家安全保障に関するあいまいで幅広い定義を、香港当局が次々と取り入れたことで、平和的な集会や表現、結社の自由の権利をめぐる状況が急速に悪化した。香港にいる個人の中国本土への引き渡しを可能にする逃亡犯条例と刑事共助条例の改正案(逃亡犯条例改正案)に関し、大規模な抗議行動を受けて香港政府は可決を延期、その後9月に正式に撤回した。数カ月にわたる抗議行動の後、歴史的に高い投票率となった区議会議員選挙では、民主派の諸政党は地滑り的勝利を収めた。

平和的な集会の自由

逃亡犯条例改正案が成立していれば、香港にいる個人は、人権侵害が数多く報告されている中国の刑事司法制度で取り扱われることになったであろう。

同改正案上程をきっかけとした一連の抗議行動は3月から始まり、なかでも6月9日、16日、8月18日にはそれぞれ100万、200万、170万人を数える大規模な平和的デモがあった。政府は9月4日に逃亡犯条例改正案の撤回を公表したものの、抗議運動は、警察による武力行使に関する独立かつ公正な調査など、要求を拡大した。月日が進むに連れ、警察と抗議行動参加者たちの双方で、暴力が過激なものになっていった。

香港警察は抗議行動に対して、必要のない過剰な武力行使で応じた。アムネスティが確認したものには、ゴム弾とビーンバッグ弾の危険な使用、無抵抗な抗議行動参加者たちへの殴打、抗議行動現場でのジャーナリストへの攻撃的な妨害、唐辛子スプレーや催涙弾の乱用が挙げられる。拘禁中の拷問や虐待もあった。8月31日から、警察は放水車を出動し、刺激物と染料を混ぜた水を無差別に人びとに浴びせる手段に出た。後に個人を特定するための目印とするためである。10月、政府は植民地時代の緊急状況規制条例を発動し、抗議行動中に顔の一部または全面を隠すことを禁止した。高等法院は後にこの禁止令が憲法違反であると裁定した。この裁定に対し政府は上告し、2020年中にその審理が始まる予定である。

良心の囚人

集会と表現の自由の権利を平和的に行使した活動家を、政府はあいまいな容疑で起訴・拘禁した。民主化を求める2015年の雨傘運動を率いた9人が、「公衆に迷惑をかけた」などというあいまいな罪で、4月に有罪判決を言い渡された。法学教授の戴耀廷(ベニー・タイ)さん、社会学教授の陳健民(チャン・キンマン)さんはそれぞれ16カ月の禁固刑を受けた。政党指導者の黄浩銘(ラファエル・ウォン)さんと議員の邵家臻(シウ・カチュン)さんは、それぞれ8カ月の禁固刑を受けた。検察側は、民主派リーダーらが記者会見やメディア取材、集会で非暴力の直接行動キャンペーンについて議論したことが、不法行為容疑を立証する重要な証拠だと主張した。8月、戴耀廷さんは上訴中に保釈された。

経済的、社会的、文化的諸権利

3月、居住権に取り組む活動家の葉宝琳(ボボ・イップ・ポウラム)さんへの2週間の禁固刑判決が維持された。この判決は、2014年に新界東北新開発計画に反対して立法会前で座り込みをしたことに対するものである。政府提案のこの大規模インフラ開発計画に対して、政府とディベロッパーとの談合疑惑、強制立ち退きや環境破壊などを懸念して、活動家や影響を受ける村人たちは何年にもわたり抗議運動を続けてきた。

レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス(LGBTI)の人たちの権利

6月、配偶者手当や税制上の優遇措置を異性婚に限定するのは性的指向に基づく差別に相当すると終審法院(最高裁)が判断した。その一方で高等法院は、法的な性別変更には性別適合手術が必要であるとする政府の方針に異議を申し立てたトランスジェンダーの人たちの訴えを棄却、同性婚を求める別の申し立ても棄却した。

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