日本:中国UPR 審査に関する要請書

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 公開書簡
  4. 日本:中国UPR 審査に関する要請書
2023年12月27日
[公開書簡]
国・地域:日本
トピック:中国の人権

2023年12月27日

外務大臣 上川 陽子 様

公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
理事長 阿部 理恵子

 

中国UPR 審査に関する要請書

 

私たちアムネスティ・インターナショナルは、1961年の創設以来、すべての人が世界人権宣言にうたわれている人権を享受し、人間らしく生きることのできる社会の実現をめざし、世界の人権運動をリードしてきた国際人権団体です。

2024年1月23日の第45回国連人権理事会作業部会では、中国が普遍的定期審査(UPR)の対象になります。この機会に、アムネスティ・インターナショナルが抱く中国の人権状況に関わる懸念をお伝えいたします。

ご存じのように、UPRはすべての国連加盟国の人権状況を見直すまたとない機会です。UPRは4年半に一度開催され、国連加盟国は、審査を受ける国の人権上の課題を克服し、人権上の義務と公約の履行状況を改善するための措置の特定に向けて当事国と共に検討します。この点で、被審査国と他の加盟国との対話が双方向で生産的であることが極めて重要です。この対話は、当該国における主要な人権上の課題に焦点を当てるべきであり、審査国は、これらの課題に対処し、権利者の人権の享受を強化するために、具体的かつ測定可能な内容の勧告を行うべきです。

2018年の第3回UPRにおいて、中国は137カ国から出された346件の勧告のうち284件を受け入れました。中国当局は、受け入れた勧告のいくつかについては改善措置を取りましたが、その他の勧告については前進がないか、後退さえ見られました。前回のレビュー以来、アムネスティ・インターナショナルは、中国政府が新疆ウイグル自治区で人道に対する罪を犯したことを示す証拠・証言を収集しました。香港では、中国当局は2020年以降、香港と国外の人権を制限するために国家安全法の対象を急速に拡大してきました。人権擁護者に対する激しい弾圧や表現の自由に対する制限も続いています。

アムネスティ・インターナショナルは、日本政府が過去のUPRにおいて中国に対し、自由権規約や強制失踪条約の批准、文化的権利を含むあらゆる人権の少数民族への保障を勧告してこられたことを承知しております。今回のUPRにおいても、中国審査への積極的参加と具体的で強力な提言、中国の人権状況に対する公正な調査と記録を基にした開かれた議論の場に向けた取り組みを求めます。

中国のUPRに対するアムネスティ・インターナショナルの提言は別紙(『PEOPLE'S REPUBLIC OF CHINA: HUMAN RIGHTS SITUATION AT NEW LOW』)の通りです。私どもが中国のUPRで議論と対処を求める主要な点は次のとおりです。

少数民族と宗教団体

アムネスティ・インターナショナルが得た証言・証拠によれば、中国政府は、新疆ウイグル自治区におけるウイグル人、カザフ人など主にイスラム教徒の少数民族に対して、少なくとも監禁、拷問、迫害などの人道に対する罪を犯しています。中国政府は、集団収容、監視、政治的洗脳、文化同化の強制などを強化し、親が新疆ウイグル自治区内で拘束されたり、海外に移り住んだりする数千人のウイグル人の子どもたちは、母国語での会話が許されない「孤児院」や寄宿学校に入れられてきました。

チベット人は、宗教・信仰の自由、表現の自由、結社の自由、集会の自由に対する差別と制限を受け続けています。恣意的な逮捕や拘束を受けた人たちの中には、宗教指導者や実践者もいます。

アムネスティ・インターナショナルは、日本政府に対し中国に以下の勧告を行うよう要請します。

  • これ以上遅滞なく、国連人権高等弁務官事務所などの国際機関の支援を得て、中国当局に拘束され、新疆ウイグル自治区の収容所や刑務所に収容されているとみられる在外ウイグル人の家族や法定代理人の状況や所在について、国内外の親族や法定代理人の要請に応じて情報を提供する制度を設けること。
  • 国連の人権専門家、人権調査官やジャーナリストら独立した立場の第三者が、新疆ウイグル自治区やチベットにある収容所や刑務所などへの立ち入りを許可すること。
  • 国際的に犯罪と認められる行為を行い、公的に認められた拘禁施設に移送され、国際的基準に沿った公正な裁判にかけられるという、十分に信頼でき、容認できる証拠がない限り、新疆の強制収容所または(刑務所を含む)その他の拘禁施設に拘禁されているすべての人たちを直ちに釈放すること。

人権擁護者

人権擁護活動家への過酷な弾圧が続いています。当局は、多くの人権活動家を不当で曖昧でいかようにも解釈できる容疑で逮捕し長期間勾留しました。法学者の許志永(Xu Zhiyong)さんと人権派弁護士の丁家喜(Ding Jiaxi)は、中国の市民社会の現状と問題を議論する集会に参加して、それぞれ実刑14年と12年を言い渡されました。

アムネスティ・インターナショナルは、日本政府に対し中国に以下の勧告を行うよう要請します。

  • 人権の擁護や促進するために行動する人たちに対する嫌がらせ、恣意的な拘束、拷問、その他の虐待、刑事訴追、投獄、強制失踪を直ちに停止すること。
  • メディア、ジャーナリスト、市民社会、人権擁護者が効果的に保護され、報復を恐れることなく安全に活動できるような安全で可能な環境を確保することを含め、表現、平和的集会、結社の自由に対する権利を尊重し、保護し、実現すること。

国家の安全保障

2020年に香港で国家安全法が公布されて以来、当局は過度に広範な国家安全保障法体系をさらに強化し、香港内外の人権を不当に制限してきました。

国家安全法に限らず、漠然とした文言の国家の安全保障や扇動罪は、政治的反対勢力を排除するために利用され、その結果、ジャーナリスト、弁護士、人権擁護者は、それぞれの活動を理由に逮捕・投獄されてきました。

違法団体に指定された香港愛国民主運動支援連合会の鄒幸彤(Chow Hang-tung)さんなど幹部3人は、「破壊扇動」の罪で起訴されました。

自由権規約委員会は、国家安全法の即時停止と廃止を勧告しています。

アムネスティ・インターナショナルは、日本政府に対し中国に以下の勧告を行うよう要請します。

  • 自由権規約委員会の勧告を実行し、香港の国家安全法と犯罪条例の扇動規定を廃止すること。

アムネスティ・インターナショナルは日本政府に対し、普遍的定期審査の機会に合わせて、中国との間で人権尊重の改善に向けた具体的な対応について有意義な議論を行い、権利を持つ人びとが人権を享受できるよう実質的な変化をもたらすよう努めるべきです。必要であれば、中国の人権状況についてさらなる情報の提供も可能です。

以上