「テロとの闘い」における人権侵害 - グアンタナモでの収容と人権侵害

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法の「ブラック・ホール」

被収容者は法の「ブラック・ホール」に取り残されたままです。裁判も受けられず、弁護士もつかず、家族に会うこともできません。24時間、まともに身体を動かすこともできない状態が続き、施設の厳しい規則に違反した罰として、しばしば独居房に入れられます。何人かは自殺を図りました。また、絶望の中でハンガーストライキを続けている被収容者もいます。

最悪の環境、拷問や虐待の疑い、外部とのコミュニケーションの遮断、裁判を受ける権利も拒否されたまま5年近くにわたる隔離収容…このような米当局による人権侵害を、今すぐに止めなければなりません。

国際的な批判に耳を貸さないブッシュ政権

2006年2月と5月、国連は相次いでグアンタナモの収容施設の閉鎖を勧告しました。また6月29日、米国の連邦最高裁は、グアンタナモにおける軍事委員会は合衆国憲法に違反するという判決を出しました。ところが、ブッシュ政権はこれを合法化する特別軍事委員会設置法案を提出、9月に上下院で可決され、10月17日にはブッシュ大統領がそれに署名し、同法は発効されてしまいました。

ブッシュ政権は高まる国際批判におされ、自ら「グアンタナモを閉鎖したい」と語りました。しかし、「テロとの戦い」を盾に、グアンタナモ収容施設や軍事委員会、そして囚人の秘密移送の正当性を主張し続けたのです。

2008年 連邦裁判所の新たな判決、そして新しい大統領の誕生・・・

グアンタナモ収容所6周年の2008年1月11日、アムネスティ・インターナショナルは、日本を含む世界各国から集められた超党派の国会議員署名1200筆を米議会に提出し、グアンタナモをはじめとする米政権による違法な拘禁政策を止めるよう求めました。

同年6月12日、米連邦最高裁は、グアンタナモに収容されている外国籍の被収容者が米の民間法廷に申し立てをする権利を認める判断を下しました。起訴や裁判もなく、実効的な司法へのアクセスもないまま人びとを無制限に拘禁できるというブッシュ政権の主張を米最高裁が否定したのは、2004年以来これで3度目となりました。

また10月に入り、ワシントンD.C.コロンビア特別地区連邦裁判所ウルビナ判事は、もはや「敵性戦闘員」ではないと判断されながらいまだにグアンタナモに拘禁されているウイグル人被拘禁者17人の米国内での釈放を命じました。2002年1月に拘禁プログラムが始まって以来、誰一人として、裁判所命令によって釈放されていません。米当局はすぐに控訴し、本事件は、米連邦最高裁に持ち込まれる可能性があります。

一方、最高裁の判決に挑戦するように、特別軍事委員会においてイエメン国籍のサリム・ハムダンに有罪判決が下されました。

新しい大統領となるバラク・オバマは、合衆国憲法に従ってグアンタナモ収容所を閉鎖すると公言していました。それが偽りの約束にならないよう、米内外からさらに圧力を高める必要があります。大統領が変わった今こそ、そのチャンスなのです。

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