スイス:テロ対策法案 警察に絶大な裁量

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2020年1月24日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:スイス
トピック:「テロとの闘い」における人権侵害

© Amnesty International
© Amnesty International

スイスの議会は、市民の自由を著しく制限するテロ対策法案を決して通してはならない。

現在、法務委員会で審議されている政府提出の警察テロ対策連邦法案が成立すると、警察は、国家の脅威になるおそれがあるという疑いが漫然とでもあれば、移動、表現、集会、プライバシーなどの自由を制限することができる。また、当局は、その強力な権限で自宅軟禁やインターネットの監視などで個人の自由を奪うことができる。

犯罪を防ぐ措置としての自宅軟禁は、15才以上を対象とし、それ以外の措置は、12才から適用される。

同法が施行されると、警察が行政命令を出す場合、ほとんどの場合、裁判所の事前の許可を必要としなくなる。当局が強力な裁量権を持つことで、命令の対象となった人は誰であれ、明らかに不利な立場に置かれる。

法廷での反論の機会や証拠開示など、容疑や捜査手法の合理性・有効性を問うための保護措置もないため、同法が恣意的、差別的に適用されるおそれがある。その結果、被告が検察と対等に議論するという「武器対等の原則」を蔑ろにする。

国に脅威となる人物がいるとすれば、捜査、立件、訴追というのが本来の司法手続きである。やった行為ではなく、やるかもしれない行為に基づき自由を制限するのは、人権侵害につながる。

異議申し立てをする機会も与えず、市民を自宅軟禁下に置き、その自由を奪うことは、スイスの人権義務に著しく違反する。とりわけ、12才の少年への適用は、決してあってはならない。

市民を狙ったテロ攻撃は、現実に起こり得ることであり、その脅威に対して国は、ひるむことなく対応する必要がある。しかし、脅威から守るという名目で、市民の権利を制限してはならない。

テロ対策は常に、法の支配と国際法が定める人権義務に従わなければならない。国際人権法では、国家は、領土内の人びとの安全確保に適切な対策を講じ、その安全と治安を確保する義務があると定められている。

スイス議会は、警察に無制限の権限を与えてはならない。アムネスティ・スイス支部は、国内80以上の非政府組織で構成されるNGOプラットフォーム人権とともに、スイス政府が成立を目指すテロ対策法案に断固反対する。

アムネスティ国際ニュース
2020年1月15日

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