ウクライナ:いまだ取られずにいる拷問への断固とした行動

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2005年10月 3日
国・地域:ウクライナ
トピック:危機にある個人
「不正に立ち向かわなければ、それは悪化し続けるだけだ。」虐待を受けたという被害者チェルニヒフ出身のミハイロ・コファル氏の言葉。

アムネスティ・インターナショナルは本日、報告書『ウクライナ:警察の拘禁施設内での拷問と虐待に対して今こそ行動を』を発表し、法執行官が日常的に力の行使、多くが拷問によって被拘禁者に自白や供述をさせている、と述べた。

「被疑者、目撃者、または通行人の全てが、警察に拷問ないし虐待される危機にあり得る」と、アムネスティのウクライナ調査員であるヘザー・マクギルは述べた。「あらゆる形態の拷問およびその他の虐待は、どのような状況下においても、常に国際人権法の下で全面的に禁止されている。しかしウクライナでは、そのような拷問に対する疑惑はめったに調査されず、また調査が行われたとしても、多くが不十分なものである。その結果、拷問と虐待に関与しているとされる警察官のうち処罰されるのはほんの一握りで、被害者はめったにその賠償を受けることがない」

アムネスティの報告は、裁判前の拘禁の劣悪な環境や被拘禁者に対する保護手段の欠如といった、拷問と虐待を生じさせる刑事司法制度の欠点を明らかにした。ソビエト時代のひとつの遺産は、警察活動の目的が犯罪予防よりも犯罪解決を非常に重要視していることである。ウクライナ政府は、警察がどんな手段を使っても高い犯罪検挙率をおさめるために権力を乱用していることを認めている。その結果、警察官はその目的を達成するために「自白」を得ることを第一の目標とし、「自白」を得るために暴力に依存しがちである。警察の虐待は、警察官が金を搾り取るために被拘禁者を殴打することが知られているが、ひどい汚職によって悪化している。報告書は、ウクライナ政府に対して、勾留施設における拷問とその他の虐待の絶対的な禁止を支持すること、および不処罰を禁止することをめざした20の提言を行った。

ウクライナの警察拘禁施設内での拷問と虐待の程度を明確に与えてくれる包括的な公式情報はない。しかし、カルキフ社会問題研究所が行った調査によると、警察の拘禁施設に入れられた経験のある人びとに聴き取り調査を実施したところ、そのうちの62.4%が拘束時に虐待を受けていた(腕、脚、あるいは首をねじられた人44.6%、殴られ、ないし蹴られた人32.8%、特殊な道具を用いて拷問および虐待を受けた人3.6%)。

2001年から2005年の6月の間にアムネスティの注意を引いた事例は、以下の疑惑を含んでいる。被拘禁者を金属棒から吊るす(「ロム」とか「鉄槌」として知られる方法)、被拘禁者にガスマスクを強制的に着用させて部分的に窒息させる(「スロニク」とか「小象」として知られる、旧ソ連圏で非常に一般的な拷問の方法)、被拘禁者を殴る、蹴る、または、身体に跡が残ることのないよう、例えば刑事訴訟法典などの重い書物や水の入ったボトル等を使用して被拘禁者を殴る、蹴る。別の事例では、強かんすると言ったり、他の犯罪で有罪判決を下すと言って脅したり、あるいは、母親を病気の乳児から引き離すというような精神的圧迫が行われたという事例が報告されている。

「多くの被害者は、恐れや制度に対する不信感から告訴しない。粘り強く、敢然と正義を求める人びとは、再び脅迫と報復の被害者になるかもしれない。彼らが補償を受けることはまずない」とヘザー・マクギルは語った。「拷問と虐待の問題に立ち向かうことを望む政府は、そのような人権侵害の疑惑の全てが、罪は罰せられ、被害者は補償されるという、迅速で徹底し、客観的である国際基準に従って、正当に調査されることを保証しなければならない」

ヴィクトル・ユーシェンコ大統領は、ウクライナを欧州連合への加盟に近づけるという希望を明確にした。政府高官らは国際人権基準に沿った刑事司法制度の修正に関する心強い声明を出した。しかし、拘禁施設における拷問と虐待の疑惑は続いている。

「ウクライナ政府は、2007年までに欧州連合との関連協定を合意させることを真剣に考えているならば、速やかに拷問の根絶と被害者への正義を保証する刑事司法制度の改善に向けて取り組み始めなければならない」とヘザー・マクギルは述べた。

AI Index: EUR 50/007/2005
2005年9月27日

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