- 2006年3月 8日
- 国・地域:イラク
- トピック:「テロとの闘い」における人権侵害
同時に、MNFが支援するイラク治安部隊が被拘禁者への拷問をおこなっていることが、証拠によって一層明らかになっている。
「サダム・フセイン政権が倒れてから3年が経過し、米主導の連合軍はその支配下で、被拘禁者の基本的権利を尊重する措置を講じることも、拷問やその他の虐待から被拘禁者を守ることもせずにいる。そこに設けられた拘禁体制は恣意的で、虐待を可能にしている」。アムネスティ中東・北アフリカ・プログラム副部長のハッシバ・ハジ-サラウィはそのように語った。
被拘禁者の中には、MNFによる起訴も裁判もないまま、2年以上も拘禁され続け、拘禁の理由を問う機会も十分に与えられていない人もいる。被拘禁者たちは、今後何年も拘禁され続ける事態に直面しているが、その根拠となる情報を自分たちでは知ることができない。米英がおこなっている拘禁の司法審査体制は、裁判の監督に関する国際的基準を満たしていない。被拘禁者はまた、弁護士や家族に会うこともできない。
報告書『アブグレイブを超えて:イラクにおける拘禁と虐待』は、MNFが直接責任を負うべき人権侵害に焦点を当てるとともに、イラク内務省直属の「狼旅団」と呼ばれる部隊をはじめとして、MNFとともに活動を展開しているイラク治安部隊による虐待に関する数々の証拠も示している。また、イラク軍拘禁下で死亡したケースもある。アムネスティは、これらの事件と拷問に対する嫌疑が適切に調査されず、加害者が処罰されていないことを懸念する。米英軍による虐待に関する米英の調査は、一般的に下級兵士に絞られており、量刑は罪の重さを反映していない。
かつてないほどに拡がっている暴力と派閥抗争に陥っている状況に歯止めをかける希望があるとするなら、それにはMNFとイラク当局が基本的人権の重要性を回復するための手段を緊急に講じることが必須である。とりわけ、被拘禁者の権利が十分に尊重され、拷問や虐待に関するすべての嫌疑が完全かつ迅速に調査されることを、MNFとイラク当局は保証しなければならない。そして、虐待を命令し実行した者が上級軍人であっても、裁判にかけることを保証しなければならない。
「イラクで適用される国際人権法および国内法は、拷問や虐待を受けない権利など、拘禁された人びとの基本的権利を保護する保障措置を明記している。今こそ、すべての紛争当事者は、自分たちを拘束している法を遵守しなければならない。」ハッシバ・ハジ-サラウィはそのように語った。
報告書(英語)は下記のサイトからご覧になることができます。
http://web.amnesty.org/library/index/engmde140012006
アムネスティ発表国際ニュース
(2006年3月6日)
AI Index:MDE 14/005/2006
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