- 2006年5月 8日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ドイツ
- トピック:女性の権利
アムネスティ・インターナショナルは、今夏ドイツで行なわれるFIFAワールドカップ開催中、性的搾取を目的とした女性や少女の人身売買が増加するのではないかと危惧している。
アムネスティは、これを防止するため、最大の努力をするよう欧州の諸機関および各国政府に要請する。
2006年6月9日から7月9日にかけて、サッカーワールドカップがドイツで開催される。ベルリン、ケルン、ドルトムント、フランクフルト、ゲルゼンキルヘン、ハンブルク、ハノーバー、カイザースラウテルン、ライプツィヒ、ミュンヘン、ニュルンベルク、シュトゥットガルトの12都市で開催が予定されており、百万人を超える男性がドイツを訪れると予測され、ドイツの性産業で需要が増加すると考えられる。このため、ワールドカップ開催中、性的搾取を目的として、ドイツへ女性や少女の売買が増加すると懸念される。ワールドカップ開催中に3万から6万人もの女性や少女が性的搾取のため売買の対象となるのではないかと、欧州評議会議員総会(PACE)は懸念を表明した。
人身売買は、人間の尊厳、精神と肉体の統一、移動の自由、拷問を受けない権利などの権利を侵害し、時には生きる権利をも脅かす。各国政府は、人身売買によって売春を強いられる女性や子どもなどの人身売買被害者を確実に保護し、こうした人びとの権利を尊重しなくてはならない。
このため、性的搾取を目的とする人身売買を防止し、人身売買の被害者が必要とする支援を行なうために、アムネスティは以下を要請する。
- 欧州委員会は、世界的なスポーツイベントにおける強制売春に関する3月15日の欧州議会決議に従い、「一般、とくに競技者、ファン、サポーターなどに強制売春や人身売買の実態を知らせ、特に顧客となりうる人びとの問題意識を高めることで、そうした需要を抑えるよう求める」キャンペーンをヨーロッパ各国で開始すること。
- 欧州委員会は、3月15日の欧州議会決議に従い、「人身売買被害者となりうる人びとを対象に、人身売買ネットワークに捕らえられ強制売春や性的搾取の被害者となる危険性について周知し、彼女たちの権利や、最終で支援を得られる場所についての情報を提供する予防キャンペーンを開始する」こと。
- 欧州共同体は、人身売買に対する行動に関する欧州評議会条約に署名および批准すること
- 欧州連合は、人身売買に関する既存および今後のあらゆる手段が、人身売買に対する行動に関する欧州評議会条約に定められた最低基準と少なくとも同等であるか、可能であればより強力な保護を提供すること。
また、アムネスティは以下を要請する。
- ドイツ当局は、とくに、ワールドカップ開催中に女性や少女の人身売買が行なわれると思われる形態や場所に注意を払うこと。これには、試合中および試合後、スタジアム場外に人身売買の被害者となる可能性のある人びとを含めたセックスワーカーを待機させる移動式の小屋なども含む。また、人身売買に関わると疑われる者を逮捕、起訴すること。
- ドイツ当局は、人身売買被害者のための電話相談を行なっているNGO、被害者向けのシェルターを運営する団体、ドイツ国民に人身売買の実態に関する啓蒙キャンペーンをしている国やNGOなどの諸組織に特別の支援を行ない、性的搾取を目的とした人身売買の急増に備えること。
- ドイツ当局は、人身売買被害者である女性に十分な医療や心理的、法的支援を提供せずして被害者を送還しないこと。この支援は、人身売買の業者に対する法的手続きのために協力することを条件として提供されるものであってはならない。
- ドイツ当局は、人身売買に対する行動に関する欧州評議会条約に従い、心身の回復期間として被害者が少なくとも30日間はドイツに留まることを許可すること。
- ドイツサッカー連盟は、「ファイナル・ホイッスル‐強制売春を止めよう」キャンペーンの支援を継続し、あらゆる手段を用いてセックスワーカーの人身売買や搾取を批判すること。
また、アムネスティは以下を要請する;
- ワールドカップ期間中、人身売買被害者である女性の送り出し国となる恐れのある諸国に対して、ドイツへ旅行する危険性についての啓蒙キャンペーンを行ない、人身売買の被害者あるいは被害者となる恐れのある女性に、助言し実際的な支援を行なう国内NGOを支援すること。
- ドイツに旅行するファンがいる国は、ワールドカップ開催中、ドイツにいるセックスワーカーの多くは人身売買の被害者かもしれないという事実に対する認識を高めること。
- 欧州各国の政府は、安全で合法的に移民する選択肢や人身売買業者が用いる手法についての確実な情報が常に、とりわけワールドカップに先立つ数カ月前から入手できようにすること
- 欧州評議会各加盟国は、人身売買に対する行動に関する欧州評議会条約の批准にむけて必要な措置をとり、欧州共同体に関しては、これ以上遅れることなく同条約に加盟すること。これまでに、欧州評議会に加盟する46カ国のうち25カ国が署名しており、さらに10カ国が批准あるいは加盟すれば発効する。
また、アムネスティは以下を要請する;
- 国際サッカー連盟FIFAは、「非常に残念なことにスポーツイベント開催に伴うこともある女性の搾取について、これを非難し、人権を脅かすあらゆる行動を非難する責任を引き受けること」とのPACEの勧告に従うこと。
アムネスティ国際ニュース
(2006年4月26日)
AI Index: ACT77/008/2006
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