- 2006年7月26日
- 国・地域:フィリピン
- トピック:危機にある個人
「一般教書演説でアロヨ大統領が活動家の殺害について非難したことには勇気づけられる。大統領は今こそ、これ以上の活動家の死を招かないように確固たる措置を講じ、本気で取り組むという意思を示さなくてはならない」と、アムネスティ・インターナショナル・アジア太平洋プログラムのティム・パリット副部長は語った。
「その政治的信念が何であろうと、また治安維持担当者が関係しているかどうかにかかわらず、政府にはフィリピンに住むすべての個人を保護する義務がある」
一般教書演説の中で、アロヨ大統領は、殺害の目撃者は届け出るように呼びかけた。
「政治的殺害の目撃者の多くは、たとえそれが被害者の近しい親族であっても、恐怖のあまり届け出ることができない。政府が目撃者の証言を得たいなら、証人保護に関する法を強化しなくてはならない」と、ティム・パリットは強調した。
目撃者に対する死やその他の脅迫、そして報復されるかもしれないという不安が、警察や検察が事件を起訴できないという状況が続く一つの主要な要因となっている。こうした障害は、被害者遺族にとっての公正な裁きを著しく困難なものにしている。
これらの襲撃に関して加害者の逮捕、起訴あるいは処罰がなされることはほとんどない。また捜査は、捜査官が事件の責任者と疑われる人物から独立性を保ち、また必要な捜査技能と財源を持つべきとする国際基準からは程遠い。
イルマ・「キャシー」・アルカンタラさんは2005年12月5日、出席していた農民・漁民の会議が開催されていたホテル近くで射殺された。左派系政治連合の地域コーディネーターであった44歳のアルカンタラさんは、死の脅迫を受け続け、治安部隊によって見張られていたと思われる。目撃者によると、バイクに乗った2人の男がアルカンタラさんに向けて発砲した。事件の捜査は行き詰まり、遺族は今も加害者が裁かれる日を待ち望んでいる。
2006年の政治的変化は、さらに多くの政治的殺害を引き起こした。アロヨ大統領が2月に1週間にわたる非常事態宣言を出して以来、政府と共産主義者との間の和平プロセスは明らかに崩壊し、政府は共産党系の武装グループに対する「全面戦争」を宣言した。犠牲者の数が増える前に、早急に予防的措置を講じる必要がある。
アムネスティ・インターナショナルは間もなく、フィリピンにおける政治的殺害に関する報告書を発表し、国際キャンペーンを開始する予定である。
アムネスティ国際ニュース
AI Index: ASA35/007/2006
2006年7月25日
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