フィリピン:フェイスブックを利用して若い活動家の表現の自由を弾圧

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2024年11月 2日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:フィリピン
トピック:表現の自由

軍や警察などの政府機関による人権侵害の疑惑の解明に取り組む若い活動家を「共産主義者の武装集団」や「テロリスト」として貶める「赤タグ付け」の動きの中で、フェイスブックの利用が活発化している。

マルコス政権は、デジタルツールや偽情報、反テロ法を利用して、活動家に対する嫌がらせ、脅迫、弾圧を強化している。政治家や治安当局の標的となった人権活動家や国家の敵とみなされた人たちは赤タグを貼られ、オンライン上で追跡される。さらに、オフラインでも同種の中傷を受け、活動に二の足を踏む。

フィリピンでは長年、赤タグ付けが政府を批判する人たちへの脅迫や攻撃の手段として利用されてきた。フェイスブックを運営するメタ社は、この動きを助長する役割を果たしている。「共産主義者」などというレッテルを貼られた人たちには、恐怖と自己検閲の風潮が生まれたり、活動をやめたりしたという。8月には、環境保護活動家の1人が行方不明になり、マルコス政権の元で人権活動家が次々と強制失踪の対象になっているのではないかと懸念されている。

ある学生(26)は、「ネットで嫌がらせを受けたり、自分に関わる投稿があったりすると、自分が狙われていると思い、怖くなる。危険な目に遭いたくないので活動は控えている」と話した。

歴代政権下で続く赤タグ付け

赤タグ付けは現マルコス政権下で激しくなっている。同政権は人権尊重の姿勢を強く打ち出している一方で、フェイスブックの投稿や報道発表では反政権派が標的にされてきた。特に数千人のフォロワーを持つ「地域共産武装紛争終結のための国家任務部隊」(NTF-ELCAC)のフェイスブックによる攻撃が際立っている。

2018年、フィリピン共産党(CPP)との和平交渉が決裂したため、当時のロドリゴ・ドゥテルテ大統領の行政命令でNTF-ELCACが設立され、人権活動家や反体制派への弾圧が強まった。活動家の1人(26)も、「新型コロナウィルス流行前はコメント荒らしが多かったが、その後はオンライン上での赤タグ付けが急に増えた」と語った。

NTF-ELCACは、フェイスブックに投稿された多数の声明やコメントを共有しているが、その多くは、若い活動家を「テロリスト」とする中傷や、武装集団に関わっているという根も歯もない批判だ。2020年の反テロ法により、警察や軍は令状や正式な起訴なしに容疑者を最長24日間拘束することが認められており、治安部隊は同法を使って若い活動家を根拠もなく告発し、令状もなく拘束している。

南タガログ出身の女性活動家(21)は2022年8月、軍にNPA(フィリピン共産党が設立した武装集団)のメンバーだと「テロリスト」呼ばわりされ、刑事告訴された。翌年、告訴は取り下げられたが、女性には深い心の傷が残った。

当局は反テロ法を撤廃し、人権活動家に対する嫌がらせや攻撃もやめるべきだ。また、NTF-ELCACの解体とその活動についての公正で透明性のある捜査が求められる。

フェイスブックと赤タグ付け

フィリピンでは、ソーシャルメディア利用者の95パーセントが利用するフェイスブックが、赤タグ付けやネット上の嫌がらせの標的にもなっている。

アムネスティは市民団体や活動家に聞き取りを実施し、フェイスブックの広告や記事を分析した結果、メタ社が憎悪や暴力を煽る赤タグ付けを削除するというコミュニティガイドラインに沿った対応を取っていなかったことがわかった。この点についてメタ社にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

アムネスティが7月、メタ社に送った調査報告に対する回答では、「赤タグ付けの申し立てを『有害行為の調整と犯罪促進に関する方針』など複数の方針に基づいて評価し、問題を引き起こす可能性がある『危険に晒されているグループ』に入っているとされる人物の身元を明らかにするコンテンツは削除する」と回答した。

また、アムネスティはフェイスブックの広告を分析し、人権デューディリジェンスにおける同社の不備を示す証拠を得た。メタ社は赤タグ付けの問題を十分認識し、不正利用を禁じているものの、複数のアカウントで赤タグ付けや「テロリストタグ付け」がみられ、若者への脅迫やオフラインでの攻撃につながるメッセージを送ることが可能となっていた。

フェイスブックは、コンテンツ管理や広告承認手順における問題、リスク回避措置の有効性を追跡する体制の不在などで、深刻な人権侵害が起きかねない状況に陥っている。 

メタ社は、人権デューディリジェンスのプロセス見直しと改善を徹底すべきだ。具体的には、人権活動家から指摘された赤タグ付けの投稿を精査し、ユーザーに配信する前に有料の赤タグ付けコンテンツを排除することが求められる。

アムネスティ国際ニュース
2024年10月14日

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