イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:差別と取り組むための緊急措置が必要

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:差別と取り組むための緊急措置が必要
2007年3月12日
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争
アムネスティ・インターナショナルはイスラエル政府とイスラエル国会(クネセット)に対して、先週の金曜日の2007年3月9日に人種差別に関する国連専門機関によって表明された重大な懸念に取り組むために、具体的な措置をとるように要請する。

特にパレスチナ人の生活を制限し、蝕んでいる差別的なシステムを、占領パレスチナ地域(OPT)においてイスラエルがいかに著しい形で作り上げたかを強調している委員会の批判を、イスラエル当局が受け入れるようアムネスティは強く促すものである。

あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約(ICERD 訳注:以下、人種差別撤廃条約)を締約国が遵守しているかどうかを監督するために設立された条約機関、つまり国連人種差別撤廃委員会の最終見解の公表をうけて、アムネスティは上記の要請をした。イスラエルは1979年から人種差別撤廃条約の締約国である。委員会へのイスラエルの報告書は5年以上遅れて提出され、しかも占領パレスチナ地域(OPT)とゴラン高原への言及は除かれていた。というのも、イスラエルは自らが占領している地域への人種差別撤廃条約の適用を認めることを拒んでいるからである。イスラエルのその立場を批判して、委員会は占領地域のパレスチナ人は「市民権と出身国に基づく差別を受けることなく条約の下での十分な権利を享受」すべきであると、はっきりと述べている。

委員会は、イスラエルが治安について合法的な懸念を抱いていることを認めたが、占領パレスチナ地域におけるパレスチナ人の移動を制限するためにイスラエル当局によって行使されている多くの手段 -- 検問所、封鎖、許可制、道路制限 -- と、その組織的で差別的な性質を批判した。委員会はまたイスラエル当局に対して、占領パレスチナ地域でのフェンス・壁の建設を直ちに停止するよう要求し、今まで建設された構造物を取り除き、その建設によって影響を受けた人びとが賠償を受けられるように要請した。さらに、占領パレスチナ地域へのイスラエル人の入植は国際法違反であることを強調した。

委員会は占領パレスチナ地域に関して6項目、イスラエル本国内における差別に取り組むために必要な措置に関して17項目の個別の勧告をした。

占領パレスチナ地域について、委員会はイスラエルが以下のことを保証すべきであると勧告した。

・壁の除去と賠償金支払いを求める、占領パレスチナ地域における壁の建設の法的重大性についての国際司法裁判所の2004年の勧告意見が完全に実施されること。(パラグラフ33)

・許可制、検問所、封鎖、そして道路制限という差別的なシステムを終わらせ、「パレスチナ人が自らの人権、特に移動の自由、家族生活、仕事、教育、健康の権利を享受する」こと。(パラグラフ34)

・差別的法律をなくすこと、特に水資源へのアクセスについて差別をなくすこと、パレスチナ人家屋の破壊を止めること、パレスチナ人の財産権を尊重すること、そして「犯人の市民権を考慮に入れるのではなく、同一犯罪については公平に審判することをイスラエルは保証すべきである」こと。(パラグラフ35)

・特にヘブロンにおけるイスラエル人入植者の暴力からパレスチナ人を保護すること、そして入植者による攻撃は「迅速、透明かつ独立した手法で調査され、起訴、判決がなされること、そして犠牲者への補償手段が提供される」こと。(パラグラフ37)

イスラエルに関しては、2000年の「生産物、サービス、娯楽・公共施設への入場における差別の禁止法」の制定など、一定の進展があったことを同委員会は認めた。しかし、結論と勧告において最も力点が置かれたのは、イスラエルにおいてアラブ系市民が広範囲にわたって根強く差別されていることだった。委員会のイスラエルに対する勧告は以下のことを含んでいる。

・イスラエル基本法に平等条項や差別禁止条項が欠落していること(パラグラフ16)への対策をとること。また、イスラエルをユダヤ人国家と定義することによって、「人権を享受するにあたり、人種、肌の色、血統、あるいは民族的出自に基づくいかなる組織的な区別、排除、制限、優先」もあってはならないこと。(パラグラフ17、22)

・「自国へ戻る権利および財産所有においては平等」でなければならない。(パラグラフ22)また、占領パレスチナ地域の住民が配偶者とともにイスラエルに住むことを許可していない2003年の「市民権およびイスラエル入国法」(臨時令)は廃止すべきであること。(パラグラフ20)

・ネゲヴ砂漠にある未承認のベドウィンの村の住民の移住については代替策を調査すべきである。「特に、これらの村を承認すべきであり、また、ベドウィンが伝統的に所有や居住、利用したりしてきた共有地や地域、資源を所有、開発、管理、使用する権利を認めるべきである」こと。(パラグラフ25)

・当局は、「少数派アラブ人に対する憎悪発言を行なった政治家や政府高官その他の公人に対する起訴を制限する方針」を見直すべきである。また、「人種差別的動機に基づくすべての犯罪を含め、人種差別行為を訴追することの一般的重要性」を検察官に認識させるべきであること。(パラグラフ29)

・人権委員会あるいは専門機関などの人種差別を担当する国家機構を創設すべきであること。(パラグラフ31)

委員会はイスラエル政府に対し、「市民権およびイスラエル入国法」におけるパレスチナ人家族の統合についての差別、アラブ系とユダヤ系の人びとの間の明らかな人種隔離、ネゲヴ砂漠にある未承認のベドウィンの村の強制移住、占領パレスチナ地域のパレスチナ人を対象にした移動の差別的制限(壁、検問所、道路制限、許可制)の4項目について1年以内に報告書を提出するよう求めた。

委員会は、「市民権およびイスラエル入国法」はイスラエルにおける家族の再統合に差別的な影響があるとして批判したが、占領パレスチナ地域での同様の差別的政策には触れなかった。この差別的政策の下では、占領パレスチナ地域の外からのすべての配偶者が家族統合を果たしたり、居住許可を得たりすることを禁止している。配偶者(そのほとんどが、ヨルダン、EU諸国、米国その他の出身の女性)が占領パレスチナ地域に居住することを全面的に禁止することは、治安その他の見地からも正当化できない。これらの配偶者はイスラエルでの居住や労働が目的ではなく、占領パレスチナ地域で家族とともに暮らすことだけが目的である。逆に、国際法に違反して占領パレスチナ地域に居住するイスラエル人入植者はそのような制限も受けないという差別的な政策は、パレスチナ人に対する集団的懲罰であり、またパレスチナ人口を減少させようとするイスラエルの人口政策の延長のようである。

国連の人種差別撤廃委員会(CERD)に対するアムネスティの報告書は、
http://web.amnesty.org/library/Index/ENGMDE150072007?open&of=ENG-ISR

CERDの会期や結論的見解についての詳細な情報は、
http://www.ohchr.org/english/bodies/cerd/cerds70.htm

(訳注)
パラグラフの出典は以下の国連の人種差別撤廃委員会の文書から確認できます。
http://www.ohchr.org/english/bodies/cerd/docs/CERD.C.ISR.CO.13.pdf

アムネスティ国際ニュース発表
(2007年3月12日)
AI Index: MDE 15/017/2007