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イラク: 深刻化する難民危機

2007年4月16日
国・地域:イラク
トピック:難民と移民
アムネスティ・インターナショナルは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の国際会議の開催決定を歓迎している。4月17,18日にジュネーブにて開催されるこの会議は、イラクやその地域における難民や国内避難民の人道上のニーズに対処するためである。イラクでの絶え間ない紛争で約150万人が国内避難民になり、さらに約200万人が難民となった。急増する人道的危機に対する懸念はイラクのみならずシリアやヨルダン国内においても広がっており、これらの近隣諸国はイラク難民の大量流入によって引き起こされる問題の対応に苦労している。欧州連合(EU)や米国をはじめ、イラク、シリア、ヨルダンなど難民の影響を直接受けている国ぐにを含む多くの政府、またアムネスティや他の非政府組織 (NGO)もこの会議に参加予定である。

今回の会議はイラク難民や国内避難民のニーズに対処する具体的措置を国際社会が合意する機会になるとアムネスティはみている。具体的措置に含まれるべき内容は、すべてのイラク難民に対する効果的な保護の提供、シリアやヨルダンにいるイラク難民への医療や教育といった重要なサービスの提供を支援するため、ヨルダン、イラク、シリア、UNHCRや国内外の人道支援組織への財政的、技術的および現物支給支援である。

過去1年間にわたり数十万人以上のイラク国民が、緊迫する宗派対立やイラクを荒廃させた紛争のために故郷を追われ、近隣諸国に難民として庇護を求めることを余儀なくされている。2006年2月に、サマッラにあるシーア派の聖堂を武装勢力が爆破して以来、さらにイラク難民の数は増えている。イラク人難民の大半がシリアやヨルダンに向かっているため、この2カ国では経済的、また物資支援の需要が高まっており、少なくともヨルダン国内では、地元住民の間で反イラクの風潮の予兆が見られる。同時に、イラク国内においても約50万人が国内避難民となっている。

2007年3月3日から14日に、ヨルダンに居住するイラク国民の状況を調査すべく3人の調査団をアムネスティは派遣した。派遣団は、庇護希望者を含む多くのイラク国民、国内外のNGOの代表者や外務省、内務省、文部省のヨルダン政府職員と面会した。ヨルダン当局や国内外の多数のNGOはイラク難民のニーズに応えるために著しい努力をしているのは明らかである。しかし、継続する大量難民流入やイラクの治安が悲惨な状況にある限りこの状況は続くとの見込みがある中では十分とはいえない。

イラクから避難する国民の数は計り知れず、今後もその数は増えていく。ヨルダンに居住するイラク人の数に関する公式な統計はないが、UNHCRは750~1000万人いると推定している。2007年2月中旬、ヨルダン政府は有効な滞在許可の所持、非所持も含めたヨルダン国内にいるイラク人の調査を行うことを発表した。この調査は、ノルウェーの研究機関(FAFO)の援助により実施される予定である。

2007年3月時点では、ヨルダンに入国するイラク人はビザが必要ない。アムネスティ派遣団は、ヨルダンの外務省、内務省の職員からヨルダン政府がイラク人に対してビザ取得を要請するか否かを検討していると聞いた。しかし、ヨルダン政府は、そのようなビザ取得要請が間もなく導入されるという報道に対して公に反論している。

1998年、ヨルダンとUNHCRは、UNHCRが難民申請を処理する覚書(MOU)に署名している。その覚書によると、UNHCRが難民として認定した人びとは、認定から半年以内に再定住するとしている。しかし、実際には、イラクがサダム・フセイン政権であった時期にイラクを逃れ難民認定を受けた一部の人びとは再定住を7,8年間も待ち続けているのである。2006年の年末までに、22,000人(大部分がイラク国民)がUNHCRに登録し、1200人(うち700人がイラク人)が難民認定を受け、第3国への再定住を待っているとヨルダン政府職員はアムネスティに語った。

2007年3月、アムネスティ派遣団がヨルダンにて数人のイラク人にインタビューしたが、イラク人の大半がヨルダンからイラクへの強制送還の対象となっており、大部分がUNHCRに登録されていない人びとだという。あるケースでは、2006年12月に6~7人のサマワ出身のシーア派のイラク人がイラク・ヨルダンの国境(トレイビール国境検問所)から強制的に送還されたという。報道によると、彼らを乗せた車両がイラクのラマディ近辺で反乱軍により強制停止させられ、1人を除く全員が首を斬られ殺害された。その殺害の様子はビデオに録画され、無事に生き残った1人は、襲撃者に嘘をつき自分はバグダットのスンニ派地区であるアダミヤ出身と説明し殺害を逃れたようである。

ヨルダン内務省の職員によると、ビザが切れて超過滞在となり警察に捕まったイラク人は逮捕され国外退去させられるとのことだ。送還先の国を選択する機会が与えられる。同職員によると、イラクにおいて深刻な人権侵害を受ける危険性のある人は1人もヨルダンから強制送還されていないという。

アンマン空港経由でヨルダンに到着したばかりのイラク人によると、彼と同じバクダット発アンマン行きの飛行機に乗っていたイラク人の多くが適切な書類を所持していたようであったが、ヨルダン人職員によって入国を拒否されイラクへ送還されたという。アムネスティはその人びとの名前や詳細を入手することはできず、彼らがイラクへ無事に帰国できたかどうかを確認できなかった。しかし、このイラク人乗客の一部は身の安全に十分に根拠のあるおそれがあったためイラクを逃れたと思われ、ヨルダンから強制送還をされることで武装グループなどに人権侵害を受ける深刻な危険性があるとアムネスティは懸念している。これはヨルダンの国際人権上の義務、特にノン・ルフールマンの原則の重大な違反にあたる。

多くのイラク人はヨルダンで非正規な状況にいる。アムネスティは、イラク人の多くが超過滞在、時には違法労働でヨルダン警察や治安部隊に逮捕されていると聞いている。逮捕された人びとはおおむねイラクへ強制送還されており、多くの場合陸路で帰国となるが、それは最も危険な方法で危険をともなう。

ヨルダンではイラク人の教育や医療へのアクセスが限定されている。外国籍の生徒は合法に滞在している場合には公立と私立の学校への通学が許可される。しかし、イラク人は部分的にこの法律の適用が免除されており、滞在許可がなくても私立学校には通うことができる。2006年9月、公立私立を含めヨルダン全土にある学校に通う生徒160万人のうち、およそ4万人が外国人の小、中学生であった。その外国人生徒の4分の1がイラク人の子どもたちであり、7203人が私立学校、2662人が公立学校に通っている。ヨルダンにいるイラク人家族の大部分が私立教育の学費を支払えないという理由で、子どもを学校に通わせることができず、また滞在許可を所持していないために公立学校にも子どもを入れることができないのである。その結果として、イラク人の全ての世代が基本的人権である教育を享受する権利を否定されているのだ。

アンマン市には2つの公立病院に約20の私立病院がある。ヨルダンの滞在許可を持っていないと公立病院で治療を受けることができないが、イラク人は法的地位にかかわらず緊急治療を受けることが可能であるという。

一部の医療センターでは小額の治療費や無料で医療ケアを提供している。カリタスはUNHCRに登録しているイラク人(難民認定を受け再定住を待つ人びとを含む)に対して医療ケアを提供している。ヨルダン赤新月社やケア・インターナショナルなどのNGOはヨルダンに居住するイラク人への支援を行っている。アムネスティとの会談で、ヨルダン政府職員は国内にいる大量のイラク人の存在が深刻で不安定な影響を与える可能性があると懸念を表明している。特に、イラクにおけるイスラム教スンニ派とシーア派の対立がヨルダンに持ち込まれることを恐れている。またヨルダン当局は、イラク難民はヨルダンに永住すべきではないと当局が懸念しているとも述べた。しかし、そのためにはイラクに政治的解決をもたらすことが必要であり、それによりイラク難民がイラクへ帰国することが可能となるのだ。ヨルダン当局は、イラク人の近隣諸国への避難を促すよりも、むしろイラク国内に「避難地域」を設置することに賛成している。この「避難地域」提案にはアムネスティは完全に反対している。このような「避難地域」設置は、明らかにノン・ルフールマンの原則の重大違反となり、イラクに広がっている悲惨な治安状況を考えれば実行可能性はない。さらに、ヨルダン当局は国内にいるイラク人の地域統合に反対している。これらの理由により、当局はヨルダンでのイラク人の長期的定住につながるいかなる活動も拒否するようだ。しかし、ある条件下ではヨルダンがより広範囲の経済援助の提供を含む国際的な援助を受け入れる可能性があるとの指摘もある。

アムネスティは、UNHCRのイラク難民再定住ガイドラインに従いヨルダンやシリアにいるイラク人を再定住させ、最も弱い立場にある人びとに優先的に対応することで負担を共有するよう、特に米国、EU、支援可能な他の国ぐにを含む国際社会に対して呼びかけている。このような再定住支援プログラムは、見せかけの数字にとどまらず、現在の危機に対する解決策の重要な部分であるべきだ。さらに、各国は難民申請を却下されたイラク人の庇護希望者を、紛争の続くイラクのいかなる地域にも強制送還するべきではない。

各国は、ヨルダンやシリアにいるイラク人への医療や教育といった重要なサービスの提供を可能とするために、ヨルダン、イラク、シリアとUNHCRや国内外の人道支援団体に経済的、技術的、それに現物出資の支援を提供すべきである。同時にそのような支援は、ヨルダンやシリアの住民からの反発を回避するため、ヨルダン人、シリア人やイラク人コミュニティが恩恵を受けるパッケージの一部として提供されるべきである。

最大200万人のイラク人の存在がシリアやヨルダンに多大なる負担を与えているとアムネスティは認識しているが、UNHCRに未登録の人びとを含む全てのイラク人の強制送還をやめ、イラクに接する国境を開放し、暴力から逃れてくるイラク人を追い払うことをやめるよう両国政府に対し要求する。

ヨルダン・シリア両政府は今回の会議で、現状の危機に対応するニーズを明確にし、特に米国、英国、EU、支援可能な国ぐにを含む国際社会にそのニーズを知らせるべきである。また、ヨルダン政府はノルウェーの研究機関の援助により実施するイラク人の調査結果を可能な限り早急に公表するべきである。

AI Index: MDE 14/021/2007
2007年4月16日





 

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