イラク:少女を石打処刑-クルド当局は情報公開を

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2007年5月10日
国・地域:イラク
トピック:死刑廃止
ドゥア・ハリル・アスワドという17歳のヤズィード派(訳注:中東のイラク北部などに住むクルド人の間で信じられている多神教)の少女が先日石打処刑されたことについて、クルド地方政府(KRG)が公式に非難声明を出したことをアムネスティは歓迎する。この処刑に続いて、23人のヤズィード派の労働者がスンニ派イスラム教徒の武装集団によって北部の都市モスルで即決処刑された。KRGがこの事件についても公式に非難したことをアムネスティは歓迎する。2007年5月1日に出された非難声明の中で、KRGは、この「名誉殺人」が、クルド地方政府の統治する地域でなく、イラク政府が統治する地域で起きたことを指摘し、殺人の実行者を裁判にかけるよう求めた。

KRGは声明の中で、次のように述べた。「2002年にクルド議会は法律を改正し、いわゆる名誉殺人を行なった者に対して軽い判決を言い渡すイラク刑法の条文を削除した。クルド地方ではその後この犯罪で40件の有罪判決があり、さらに少なくとも24件が現在裁判係属中である」。

アムネスティは、これらの裁判について、法律改正以降に「名誉犯罪」で裁判にかけられた被告人全員の名前、有罪判決を言い渡された人数、判決の内容などの詳細な情報を求める手紙をKRGに送った。またアムネスティはイラク政府にも手紙を送り、ドゥア・ハリル・アスワドの石打処刑とその後に起きた23人のヤズィード派労働者殺害事件についての調査の情報を求めた。さらに、これらの犯罪の加害者が速やかに公正な裁判にかけられ、なおかつ死刑を回避するよう要請した。一方でアムネスティはイラク当局に対し、「名誉殺人」は重大犯罪であると明記する法改正を行なうことや、「名誉犯罪」の犠牲者になる危険にさらされているすべての人を保護する具体的な措置をとることを求める。

背景
2007年4月7日、イラク北部の町バシカで、ドゥア・ハリル・アスワドが男性の集団によって公開石打処刑にされた。ドゥア・ハリル・アスワドはスンニ派イスラム教徒の少年と関係を持ち、イスラム教に改宗したと思われる。そのため、処刑した人びとの中には少女の親族も何人かいた。数百人がこの処刑を目撃した。携帯電話に処刑の模様を記録した人びともいた。地元の治安部隊もその場にいたようだが、介入して処刑を中止させたり、処刑人を逮捕したりすることはなかった。この処刑から2週間ほどたった4月22日、23人のヤズィード派の労働者が銃を持った集団に殺害された。石打処刑に対する報復行為であったと思われる。

イラクでは「名誉犯罪」の報告が多く、とくにクルド地域で頻発している。1969年イラク刑法には、挑発された場合や「名誉にかかわるような動機」がある場合は、「名誉殺人」の量刑を軽くするという条文がある(第128条)。イラクの裁判所は、数十年にわたり、「名誉殺人」を犯した人への刑罰を決める際に、情状酌量の余地があるとして殺人を正当化することを可能にするため、この条文を根拠にしてきた。

2000年4月、クルド愛国同盟(PUK)主導のクルド当局は政令第59号を発布した。その内容は、「恥辱をすすぐためという口実で女性を殺害したり虐待したりすることは、情状酌量の理由とはみなされない。裁判所は、加害者の量刑を軽くする目的で、イラク刑法1969年111号の修正第130条および132条を適用してはならない」というものであった。2002年、クルド民主党(KDP)主導のクルド当局は法律第14号を発布した。その内容は、「名誉にかかわるような動機を理由にした女性に対する犯罪は、イラク刑法1969年111号の修正第128条、130条、131条の規定を適用するための減刑の法的根拠とはみなされない」というものであった。

2007年5月10日
AI Index: MDE 14/029/2007

 

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