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英国:英国軍によるイラク民間人殺害に関する貴族院判決に抗議

2007年6月13日
国・地域:英国
トピック:「テロとの闘い」における人権侵害
アムネスティ・インターナショナルは英国政府に対して、イラクに駐留する英国軍とその関係者が行なった人権・人道法への違反と見なされる行為について明確に説明責任を果たすことを要請する。とくに、英国軍兵士による人権侵害の申し立てに対する独立的で公平かつ徹底した調査を行なうために、民間の専門家主導による十分な資金力を有する機構の設置を要請する。

この要請は、英国占領軍の管轄地域であるバスラで起きたアルスケイニらイラク民間人6人の死亡に関する英国当局を相手取った訴えについて、英国貴族院(法官議員)が下した判決を受けて行なうものである。

バスラの英国軍基地で拘禁中に死亡したホテル受付係バハ・ムーサの遺族は、1998年英国人権法および欧州人権条約により独立的で公平かつ徹底した調査を求める資格がある、とした英国貴族院の判決をアムネスティは歓迎する。26歳で2児の父親であったバハ・ムーサは、2003年9月15日、バスラで英国部隊により拘禁され36時間に及ぶ拷問を受けて死亡した。検死の結果、彼の体には93カ所の傷跡が認められた。バハ・ムーサは、逮捕された職場のホテルとバスラの英国軍基地拘禁施設で虐待を受けた。英国貴族院の判決は、英国人権法が国外の英国軍を含めた当局関係者の行為および不作為に適用されることを確認している。

しかし、巡回中の英国軍から発砲を受けて致命傷を負った他の5人の家族による生存権侵害の申し立ては欧州人権条約の管轄権外にある、とする英国貴族院の決定にアムネスティは遺憾の意を表明する。英国貴族院は、英国軍による国際法違反の殺害の申し立てについては、英国は欧州人権条約ならびに英国人権法に基づくいかなる義務をも負わないとの判断を示した。

この英国貴族院の決定を残念に思いいつつも、アムネスティは、英国の人権に関する義務はその権限ないし実質的支配の及ぶ範囲にあるすべての人に対して、領土を超えて求められることを強調する。たとえば、国際司法裁判所と自由権規約委員会は、占領軍としての国家は、慣習法ならびに市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)や1948年ジュネーブ諸条約などの条約に基づく人道・人権法により人権に関する義務を負うと言明している。国際法および国内法に基づく人権に関する義務に対応して、英国はアルスケイニ事件と関連のあるイラク民間人5人の殺害を始めとする英国軍兵士による深刻な人権侵害の申し立てに対する迅速で独立的、公平かつ徹底した調査を実施する責任がある、とアムネスティは認識している。

ビンガム卿はその判断を次のように明らかにした。この決定は、海外駐留中の英国軍兵士が殺人、強かん、略奪などの行為について免責されることを意味しない。どこで犯罪が行なわれたか、誰が犠牲者であるかに関係なく、犯罪に関与した者は前述の陸海空軍の規律により裁判にかけられ、罰せられる。またジェノサイド(集団殺害)、人道に対する犯罪、戦争犯罪に関与した者は、2001年国際刑事裁判所法により裁かれる。イラクで起きているような状況において、英国は1907年ハーグ条約およびその規則を遵守しなければならない。ハーグ条約第3条は、交戦国は自国軍兵士が関与したすべての犯罪に責任があり、ハーグ条約の規則に違反した場合または判決が要求する場合には賠償金を支払う義務があると規定している。ジュネーブ第4条約第1条により英国はいかなる状況においても条約を尊重することを、また同第3条により交戦状態にない人間に対する殺害または残虐な取り扱いを禁止することを求められている。ジュネーブ第4条約第1議定書により、追加義務が条約加盟国に課せられている。

国際法に基づいて義務を果たすために、アムネスティは英国政府に次のことを要請する。
・上記の件に関係のあるイラク民間人6人の死亡について独立的で公平かつ徹底的な調査を開始すること
・関与が疑われる者すべてを裁判にかけること
・犠牲者の遺族に十分で実際的な補償を確約すること

アムネスティは、諸外国がイラク領土を占領している実情に関して重大な懸念を抱き、上記の事件についての訴えの原告となっている11の国内外の団体の1つである。このような占領状態は、法の支配を崩壊させる可能性があり、基本的人権の保護を確約する国内および国際法の基準ならびにその実施義務を弱体化することによって説明責任をも放棄することになる。

背景
この事件の核心であるイラク民間人6人の死亡は、国際人道法のもと英国が占領軍として認められ、駐屯している時期に管轄区域内で起きた。6人の内5人は、巡回任務中の英国軍兵士により発砲を受け致命傷を負った。ハジム・ジュマ・ガデ・アルスケイニ(23歳)は巡回中の指揮官に街頭で射殺された。ムハマド・アブドゥル・リダ・サリム(45歳、教師)は、ムハマドの義弟の家に強制侵入しようとした部隊の軍曹により発砲を受け致命傷を負った。アナン・マハイバス・サド・シュマイラウイ(33歳)は、自宅で家族と夕食中に英国軍巡回班との間に起きた銃撃戦の流れ弾が当たり致命傷を負った。ワリード・サヤイ・ムズバン(43歳)はマイクロバスを運転中、巡回中の下士官に発砲を受け致命傷を負った。ライド・ハジ・サビル・アルムサウイ(29歳、警察署長)は巡回中の伍長に街頭で発砲され致命傷を負った。6人目の犠牲者バハ・ムーサ(26歳、ホテル受付係)は、英国軍部隊により拘禁され、36時間以上に及ぶ拷問の末に死亡した。

2007年3月、バハ・ムーサ事件に関わった兵士7人に対し英国軍法会議の決定が出た。審理の結果、被告人6人はすべての容疑について無罪となった。1人が非人道的取り扱いの容疑(戦争犯罪)について自ら有罪を認めたが、他の容疑については無罪となった。軍法会議は、多くの兵士がバハ・ムーサと他の被拘禁者に対する不法な暴力行為に責任があることを公式に認めた。しかし審判官が述べたように、この事件に関わった者の多くが、「お互いの利益のために団結したことにより、単に証拠がないという理由でいずれの犯罪についても有罪とされなかった。」この事件の軍法会議の審理の結果は、バハ・ムーサの死亡に関する調査が重大な失敗に終わったことを明確に示した。したがって、英国軍兵士による深刻な人権侵害の信憑性のある申し立てを調査するために、現行制度を改革する必要性が一層重要視される結果となった。

以下は、英国貴族院に対し、この事件についての訴えを起こしている原告団体は以下の通り
:The AIRE Centre, Amnesty International, The Association for Prevention of Torture, The Bar Human Rights Committee, British Irish Rights Watch, Interrights, Justice, Kurdish Human Rights Project, The Law Society of England and Wales, Liberty, and The Redress Trust.
上記の組織は、勅撰弁護士ケア・スターマー、ドーティ・ストリート弁護士事務所のリチャード・ハーマー、チャールズ・バナーとアジーム・ステルワラ、およびバット・マーフィー事務弁護士事務所のラジュ・バットに手続きを委任する。

以下参照:Amnesty International’s world-wide appeal on behalf of Baha Mousa, United Kingdom: No justice for Iraqi man killed in UK custody
http://web.amnesty.org/appeal/index/ gbr-010607-wwa/eng

AI Index: EUR45/008/2007
2007年6月13日
 

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