- 2017年9月26日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:英国
- トピック:武器貿易条約
アムネスティの調べで、ロンドンのペーパーカンパニーが、南スーダンなどの国への武器供給取引の仲介役を務めていることが分かった。英国の法律に抜け穴があるため、同国が違法な武器転移の温床となっているのだ。
入手した商取引文書によると、英国に法人登録する会社、S-プロフィット社は、2014年に少なくとも4,600万米ドル相当の小型武器と弾薬を、南スーダン政府に納入する仲介役を務めた。
また、英国政府が8年以上にわたり国内で同様の取引が行われていることを知りながら、何の法的措置も取っていないことも分かった。
この武器取引は、ウクライナ国営軍需企業とアラブ首長国連邦(UAE)の企業が、2014年に交わした南スーダン向けの1億6900万米ドルの武器調達契約の一部である。契約には、数千の機関銃、迫撃砲、対戦車ロケット弾発射器、数百万発の弾薬が含まれていた。
この額は、契約のすべてが履行されたなら、2013年末の南スーダン内戦開始以来、公表されている同国への武器移転の中で最大級になる。
これらの書類に記載された武器の一部あるいは全部が、南スーダンへすでに渡っているか否かは確認ができなかった。そもそも英国では、南スーダンへの武器取引に関わっただけでも、輸出規定に抵触する可能性がある。ウクライナ国営軍需企業とUAEの企業が、南スーダンへの武器供給へ関与することもまた、武器貿易条約の締結国としての両国の義務に反する可能性がある。
S-プロフィット社の役員はアムネスティに、南スーダンへ軍需品を供給したことを否定した。しかし、仲介役を務めたかなどの質問には回答しなかった。
S-プロフィット社は、南スーダン以外でも多数の国への、装甲車、武器、航空機などの供給取引に関わっているが、これらの取引が許可を受けたものなのか、確認することはできなかった。
法令の空白
英国では、世界中どこからでもインターネットを使えば、身分証明書を提示することもなく、起業することができる。
英国の法令では取扱品目を求められないため、登記内容に「武器取引」と記載する必要もない。
S-プロフィット社は、当局の規制の抜け穴を利用して違法な武器取引で利益を上げている企業の典型である。
このように緩い規制があるために、英国内の他の法律はいうまでもなく、世界やEUが条約や法律で武器移転をいかに厳格に規制しても、無意味になってしまう。
英国はこの事態を真剣に捉え、同国で登記する企業に対し透明性を求めるべきである。法人名と所在地を確認し、「武器仲介」という登録項目を設けるだけでも、武器商人にとって英国で登録するハードルは、よほど高くなる。
アムネスティ国際ニュース
2017年9月25日
関連ニュースリリース
- 2020年10月14日 [国際事務局発表ニュース]
英国:パンデミックの中 見捨てられる施設高齢者 - 2017年8月 2日 [国際事務局発表ニュース]
英国:電気自動車へのシフトで児童労働を増やすな - 2017年7月19日 [国際事務局発表ニュース]
英国:武器輸出を認める判決はイエメン市民への死の宣告 - 2015年7月31日 [国際事務局発表ニュース]
英国:国が企業犯罪を承認 - 2015年3月 5日 [国際事務局発表ニュース]
英国:北アイルランドの厳格な中絶禁止法