イラク:国際的無関心により広がる難民危機

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2007年9月24日
国・地域:イラク
トピック:難民と移民
悪化の一途をたどるイラクの難民危機に対して国際社会は適切に対処することができず、主要受入国のシリアとヨルダンに過剰な責任を負わせている、とアムネスティ・インターナショナルは9月24日発表の報告書で述べた。結果的に、これら2カ国は国境警備を強化し、イラクでの宗派間その他の暴力から逃げてくる人びとにとって重要な避難経路を封鎖している。

報告書『イラク:宙に浮く数百万人ーイラクの難民危機―』では、これまで国境の大部分を開放し続けているシリアとヨルダンを称賛する一方、現在受け入れ中の約200万人のイラク難民のニーズに応える膨大な要求と格闘しているこの国ぐにに対しほとんど支援しなかった他の国ぐにを批判している。

「イラク人避難民(国内避難民および難民)の絶望的な人道的状況を、世界はほぼ無視してきた」とアムネスティ中東・北アフリカ部長マルコム・スマートは述べた。「イラク難民の保護と援助に対する責任を公平に負担する義務を国際社会が負わなければ、深まる人道危機とさらに広がる政治的不安定が増大する。」

少なくとも400万人のイラク人が避難民となり、その数は1日に約2000人という割合で増加し、世界で最も急速に成長する避難民危機となっている。現在、シリアは140万人、ヨルダンは50万人以上といわれるイラク難民を受け入れているが、220万人の避難民がいまだイラク国内に留まっている。

「シリアとヨルダンで新しく導入されるビザの要件が、イラク人が必要な保護を受ける妨げになることを非常に危惧している。生きるために逃げてくる人びとに国境を開放するよう両政府に要請する」スマート部長は述べた。「しかし、健康、学校教育、そして他の避難民のニーズに見合う財政・技術・物品の二国間支援と、弱い立場にある難民の再定住受け入れにより、他国はこれらの国への支援を増加させるべきだ。」

また、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国内・国際的人道支援団体が支援を必要としているイラク人を保護し支援する現在の活動を続け拡大することを可能にするよう、国際社会による支援を継続するよう要請する。

「国際社会によるささやかな支援は、危機の規模に見合っていない」とスマート部長は述べた。「さらに、難民申請が却下された庇護希望者をイラクへ強制送還したり、援助を中止したり、一部のイラク人の難民の地位を取消すなど、否定的な措置をとる国もある。」 報告書は、拷問とその他の深刻な虐待の被害者など、ヨルダンとシリアのイラク難民の中で最も弱い立場にある人びとの再定住が遅々として進まないことを批判している。米国主導の侵攻でサダム・フセインが失脚した2003年から2006年まで、増え続ける政治的暴力にもかかわらず第3国に再定住するイラク難民の数が半分以下に減少していると報告書は言及している。UNHCRによると、2003年に1425人のイラク難民が第3国に再定住したが、2006年ではわずか404人だった。

「第3国での全体の再定住の割当てを増やす観点から、効率の良い方法で、もっとも弱い立場にあるイラク人をヨルダンとシリアから再定住させる共同責任を国際社会は担うべきだ」とスマート部長は述べた。「特に、紛争への直接関与という観点から、米国主導の多国籍軍に参加する国は、イラクに残留している人びと、シリア・ヨルダン・その他の国の難民も含む、暴力で故郷から逃れた人びとの窮状を打開するため、責任を分担する必要がある。」 アムネスティは、本日発表の報告書のほか、イラクのパレスチナ人の状況に焦点を当てた報告書『イラク:パレスチナ難民に対する人権侵害』も発表した。

報告書『イラク:パレスチナ難民に対する人権侵害』(英文)

報告書『イラク:宙に浮く数百万人-イラク難民危機-』(英文)

AI Index:MDE 14/042/2007
2007年9月24日

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