フィリピン:ミンダナオ和平交渉決裂で数万人に影響

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2008年10月30日
国・地域:フィリピン
トピック:地域紛争
フィリピン政府と南部ミンダナオの反政府勢力との間の和平交渉の停止は、数十万という住民を危機にさらし、激化する敵対行為に直面させていると、アムネスティ・インターナショナルは本日、新しい報告書の発表にあわせて語った。

去る8月、アムネスティ代表団は紛争状況を調査するために、激しい戦闘が始まった、その最中のミンダナオを訪問し、地元の機関の職員から聞き取りを行った。報告書では和平交渉が決裂して以来続いている人権侵害について明らかにしている。具体的には、8月以来少なくとも民間人100人の死者が出ていること、複数の住民がモロ・イスラム解放戦線(MILF)によって意図的に標的にされたこと、約140人の男性、女性、子どもが人質にとられたこと、40万人近い住民が戦闘から逃れるために自宅と、しばしば作物や家畜も捨てて避難キャンプでの生活を強いられていることなどが報告されている。多くの家屋が焼かれ、財産は、報道によるとMILFとフィリピン国軍の両者によって盗まれていること、また、訓練を受けていない無責任な民兵の行動などが報告されている。

8月に最高裁が政府とMILFとの間の和平交渉の覚書の実施を停止する判断を下した後、戦闘は激化した。覚書は、40年にもわたる長期内戦を終わらせるために続いている和平プロセスの一環であった。

「和平交渉に反対しているMILFと地元勢力は、交渉戦略として暴力を利用し、その結果、数十万という人びとが代償を払っている」と、アムネスティ・アジア太平洋副部長ドナ・ゲストは語った。

8月18日にMILFによって殺害されたと伝えられている94歳のミゲル・ダイティアとその息子ルーベン(33歳)について、アムネスティは地元の人権活動家に話を聞いた。「MILFは大きな岩を使って施錠を壊し、家に入り込んで2人を連れ去った。3人の男性の中には、94歳の老人もいた。MILFは3人を殺害した。家にいた女性たちに家から出るよう言い、女性たちが家を出ると、MILFの兵士らは家に火をつけた。カウスワガン市のラパヤンでは近隣22棟が焼かれた。」

ラナオ・デル・ノルテ州では、MILFを追跡していた治安部隊が、軍事作戦がとられていた地域に入る危険を冒した15歳の農民を殺したと、地元の住民がアムネスティ調査団に語った。彼は結婚を控えて持参金を作らなければならず、今年の収穫を見過ごすわけにはいかなかった。トウモロコシを収穫するためにもう一人の農民とともに村を出て、馬を連れて歩いているときに兵士の集団に出くわし脅された。もう1人の農夫はあわててその場から逃げたが、兵士らは15歳の少年を追いかけ、彼の頭を殴った。彼は峡谷に落ち、後に溝の中で発見された。遺体には30カ所ほどの切り傷があった。家族はすぐに遺体を埋め、身を隠した。

「フィリピン政府とMILFの双方は、部隊の司令官と一般兵士に対し、民間人への攻撃は許されないということを明示しなくてはならない。そのような暴力行為を犯した疑いのある者は解職されるか、人権侵害が再発し得る状況から引き離されるということを理解しなくてはならない。このまま標的とされ続けるならば、住民は厳しい状況に置かれたままであろう」と、ドナ・ゲストは語った。


背景情報
報告書「瓦解したミンダナオの和平:フィリピンの内戦における人的代償」は、最近ふたたび勃発した戦闘がピークに達したこの夏に行われた聞き取り調査と、同国の人権状況に関する継続した監視に基づいている。

2008年8月4日、フィリピン最高裁は、それ以前に「仮調印」されていた先祖伝来の土地の認知問題に関する覚書(MOA-AD)を一時的に停止する命令を出した。この命令から数日後、MILF兵士は北コタバト、ラナオ・デル・ノルテ、そしてサランガニの各州で一般市民を攻撃した。10月14日、最高裁はMOA-ADについて違憲の判断を出した。フィリピン南部のイスラム系住民の自治が紛争に関係している。

報告書 ‘Philippines: Shattered Peace in Mindanao: The human cost of conflict in the Philippines’(英語)は以下からダウンロードできます。
http://www.amnesty.org/en/library/asset/ASA35/008/2008/en/66dc6dde-a5ad-11dd-98b9-d503e38a5523/asa350082008eng.pdf

アムネスティ発表国際ニュース
2008年10月29日

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