イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:ガザとイスラエル南部での戦争犯罪の免責はさらなる苦しみを招く

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2009年7月 2日
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争
イスラエル軍は戦時国際法に違反する攻撃によって、ガザで数百人の非武装のパレスチナ民間人を殺害し、数千の家屋を破壊した。アムネスティ・インターナショナルは本日発表された117ページに渡る新しい報告書でそのように断じた。これは、今年初めの22日間の紛争について発表された初の包括的な報告書である。

「イスラエルが戦争犯罪などガザでの軍の行動について適切な調査を行っていないこと、リチャード・ゴールドストーンに率いられた国連の国際独立事実調査団への協力をイスラエルが拒み続けていることは、同国が公の調査と説明責任を避けようとしている証拠である」と、ドナテラ・ロベラは述べた。彼女は紛争中および停戦後にガザとイスラエル南部での現地調査団を率いていた。

「国連安全保障理事会が主導する国際社会は、ゴールドストーンの調査にイスラエルが十分に協力することを保証するよう、あらゆる影響力を行使すべきである。この調査は真実を明らかにするための最良の手段となるものだ」と彼女は述べた。

ハマスと他のパレスチナ人武装グループは、数百発のロケット弾をイスラエル南部に発射した。これによって3人のイスラエル民間人が死亡し、多数の人びとが負傷し、数千の人びとが家を追われた。「このような違法な攻撃は戦争犯罪であり、容認できない」と、ロベラは付け加えた。

軍事専門家を含んだアムネスティ・インターナショナルの派遣団により1月と2月の現地調査の間に収集された証拠に基づく報告書は、避難するすべもないガザに閉じ込められた民間人たちに対して、イスラエルが戦場で使用する兵器を使用したことを記録している。

ガザへの攻撃の規模と激しさは先例のないものであった。イスラエル軍によって殺害された1400人のパレスチナ人の中には、紛争に加わっていない約300人の子どもたちとその他数百人の非武装の民間人が含まれていた。

ほとんどの人びとは、非常に性能が高く標的を詳細に観察することができる無人偵察機を利用した高精度の兵器によって殺害された。一方で、以前はガザで使用されたことがなかった白リンを搭載した砲弾など、不精確な兵器も使われた。このような兵器は、人口密集地域で決して使用されるべきものではない。

アムネスティ・インターナショナルは、調査した攻撃の犠牲者たちが、パレスチナ戦士とイスラエル軍の間の戦闘に巻き込まれていたのではないこと、また、戦士たちをかくまったり他の軍事目標となるものを守っていたのではないことを突き止めた。多くは寝ていたときに家屋が爆撃されて死亡している。また、庭で座っていたり、屋上で洗濯物を干したりしているときに殺された者もいる。子どもたちは、寝室、屋上、家の近くなどで遊んでいるときに撃たれた。医療補助員と救急車は、負傷者を助けたり、死者を運んだりしている最中に、繰り返し攻撃を受けた。

「これほど多くの子どもたちや民間人の死は、イスラエルが主張するような『2次的被害』として簡単に片づけられるものではない。これらの攻撃、そして民間人の死者数の増加にもかかわらず攻撃が弱まることなく続いた事実について、多くの疑問が残されている」と、ドナテラ・ロベラは述べた。

イスラエルの攻撃によって、3000を超える家屋が破壊され、約20,000軒の家屋が損害を受け、ガザの全地域は瓦礫となり、廃墟の中にもともと極限状態だった経済状況がそのまま残された。破壊の多くは気まぐれに行われたもので、「軍事的必要性」という理由で決して正当化できないものだった。

アムネスティ・インターナショナルはこの5カ月間、報告書で詳説した具体的なケースについて、情報を提供するようイスラエル軍に求めてきた。また、アムネスティ・インターナショナルの調査結果について話し合う会合を開くよう繰り返し要求してきた。これらに対する軍からの返答はないままである。

「一方で、ハマスは22日間の紛争の間、その戦闘員や他のパレスチナ人武装グループによって毎日イスラエル南部の町村に発射されたロケット弾攻撃を正当化しつづけている。殺傷能力が低いとはいえ、具体的な目標に向けることができない非誘導弾を使用するこのような攻撃は、国際人道法に違反し、いかなる状況下においても正当化できない」と、ロベラは付け加えた。

地元で製作されたカッサム・ロケット弾に加え、パレスチナ戦士たちはより長距離射程のグラッド型ロケット弾をしばしば発射した。このロケット弾は、エジプトとの国境にあるトンネルを経由してガザに密輸されたものであり、イスラエルのより深部まで届き、より多くのイスラエル民間人を危険にさらした。

「5カ月たっても、双方ともにその態度を変えて国際人道法に従う意向を見せることもない。このことは、戦闘が再開したら民間人たちがまたもや矢面に立たされることになる可能性を増大させている」と、ドナテラ・ロベラは述べた。

国際法の下、戦争犯罪もしくは国際法上の犯罪の十分な証拠がある場合はいつでも、加害者と疑われる者を逮捕し裁判にかけるため、国家は普遍的管轄権を行使し、各国の裁判手続きで刑事事件として捜査を始めなくてはならないという責任を負っている。

「戦争犯罪やその他の重大な違反行為に責任がある者たちは、説明責任と法の裁きから逃れることは許されない」

また、アムネスティ・インターナショナルは報告書の勧告の中で、各国に対し、国際法の重大な侵害行為に使用される危険が事実上なくなるまで、イスラエルやハマス、他のパレスチナ武装グループへの軍装備品、軍事援助、弾薬のすべての移送を停止するよう求めている。

報告書はまた、イスラエルに対して、民間人への直接的、無差別もしくは不相応に過剰な攻撃をしないよう、また、砲弾、迫撃砲弾、白リン弾を人口密集地域に対して使用しないよう、そして、全住民に対する集団的懲罰となっているガザ地区封鎖を終わらせるよう求めている。

さらにハマスに対しては、イスラエルの民間人居住地域に向けての違法なロケット弾攻撃の方針を放棄し、他の武装グループにもそのような攻撃を行なわせないよう求めている。

報告書の原文(英語)は以下からご覧いただけます。
http://www.amnesty.org/en/library/info/MDE15/015/2009/en

アムネスティ発表国際ニュース
2009年7月2日