イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:国連調査団の勧告実施が正義のために肝要

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:国連調査団の勧告実施が正義のために肝要
2009年9月15日
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争
すべての国連関係諸機関は、昨年12月末と今年1月にガザとイスラエル南部でなされた国際法違反について国連が委託したゴールドストーンの報告書にある勧告を実施するために、すぐさま連携して行動しなければならない。本日、アムネスティ・インターナショナルはそのように述べた。

イスラエルとガザの紛争でアムネスティの調査を率いたドナテラ・ロベラは、「国連人権理事会は報告書とその勧告を支持し、国連事務総長がこの報告書を国連安全保障理事会に付託するように要請すべきである」と述べた。

さらに「安保理と他の国連機関は、被害者たちが正義を手にし、支払われるべき賠償を得て、加害者たちが殺人の罪を免れることのないよう保証するために必要な手段を、今すぐ講じなければならない」と述べた。

紛争中とその後に起きた戦争犯罪や重大な国際法違反について強力な証拠があるにもかかわらず、イスラエルとハマス双方は信頼できる調査も責任者の訴追も行なっていない。安保理は紛争中の民間人に対する攻撃を非難し、両者に国際法を尊重するよう求めたが、両者が犯した戦争犯罪や他の重大な違反行為の申し立てに対しては、これまで見て見ぬふりをしている。

「加害者の説明責任と被害者に対する正義を保証するために断固とした行動をとる責任は、今や国際社会、特に国連のもっとも強力な機関である安保理にあるのだ。もしイスラエルとハマスが一定期間内に信頼できる調査を行なわないのであれば、安保理はゴールドストーンの調査結果を国際刑事裁判所(ICC)検察官に付託しなければならない」と、ドナテラ・ロベラは述べた。

国連人権理事会の指示によるゴールドストーン判事の事実調査団は9月15日に調査結果を公表し、575ページにわたる報告書の中で勧告を行なっている。その報告書は、イスラエル軍とパレスチナ武装グループ双方が、戦争犯罪や人道に対する罪にあたる可能性があるものを含む重大な国際法違反を犯したと結論付けている。

報告書の調査結果は、約1400人のパレスチナ人と9人のイスラエル人が殺害された2008年12月27日から2009年1月18日までの22日間の紛争についてアムネスティが自ら行なった現地調査の結果と合致している。イスラエル軍によって殺されたパレスチナ人のほとんどは、約300人の子どもたちを含む非武装の民間人であった。パレスチナ人のロケット弾攻撃は3人のイスラエル民間人と6人の兵士を殺害した。(他に4人の兵士が味方からの誤射・誤爆で死亡した)。イスラエル軍はまた、ガザ知区で恣意的に大規模な破壊行為を行ない、地域全体を廃墟にし、パレスチナ人たちを人間の盾として使った。

アムネスティは事実調査団の勧告を歓迎する。この勧告が実施されれば、正義と説明責任への一番の希望をもたらすことになる。アムネスティは以下のことを求める。

・国連人権理事会に対しては、事実調査団の勧告を支持し、その実施状況を定期的に審査すること。国連事務総長が報告書を安保理に提出するよう要請すること。そして、もしイスラエルとハマスが被害者に対して正義を保証できないのであれば、立件のため国際刑事裁判所検察官に対して安保理がその内容を提出するよう要請すること。

・国連事務総長に対しては、遅滞なく安保理へ報告書を付託すること。

・国連安全保障理事会に対しては、イスラエルとガザの事実上の統治者であるハマスによって設けられた国内手続きを監視、評価するための専門家委員会を直ちに設立し、イスラエルとハマス政権双方に対して国際人権法、国際人道法の重大な違反についての独立した調査と訴追をどう行なったかについて6カ月以内に報告するよう命じること。

・安保理は、もしイスラエルとハマス政権双方が一定期間内に国際基準に沿った信頼できる調査を行なわない場合、国際刑事裁判所検察官にその状況を付託すること。

・国連総会に対しては、国際法の重大な違反についての説明責任を確実にするために当事者たちによって講じられた対策について報告するよう安保理に要請すること。そして、違法な行為によって損失もしくは損害に苦しむ双方の側の被害者たちに妥当な金銭賠償がなされるよう基金を設立すること。

リチャード・ゴールドストーン判事に率いられた国連による国際独立事実調査団の主たる調査結果は以下の通り。

・イスラエル軍は戦争犯罪及びいくつかの人道に対する罪にあたる可能性のある国際人権法・人道法違反を犯した。とりわけ民間人や民間施設に対し致死的な攻撃を行なったおびただしい事例への調査で、このような攻撃が意図的であり、民間人の間に恐怖を広げる目的で正当な軍事的目的もなく行なわれた攻撃があること、そしてイスラエル軍がパレスチナ民間人を人間の盾として使ったことが明らかになった。

・イスラエル軍はジュネーブ第4条約への重大な違反を行なった。特に故意の殺害、拷問、非人道的処遇、故意に多大な苦痛や身体もしくは健康に対する深刻な害をもたらす行為、財産の広範な破壊である。これらは軍事的必要性で正当化されず、違法かつ恣意的に実行されたものである。重大な違反であるゆえにこれらの行為は個人の刑事責任を生じさせている。

・イスラエルはまた、ガザ住民の十分な食糧、水、住居を得ることなど適切な生活水準を保つ権利を尊重する義務に違反した。特に生計の手段や雇用、住居、水などをガザのパレスチナ人から奪った行為であり、彼らの移動の自由や自国に出入りする権利は否定され、効果的な救済を得ることも制限された。このような行為は迫害に匹敵し、すなわち人道に対する罪となる。

・パレスチナ人武装グループは、軍事目標に対する十分な精度をもたないロケット弾発射や迫撃砲攻撃で軍民区別の原則に違反した。また民間人居住地域への彼らの攻撃は軍事的目標物がなく、民間人に対する故意の攻撃にあたる。このような攻撃は戦争犯罪であり、人道に対する罪にもあたる可能性がある。

・パレスチナ人戦闘員は、常に民間人とはっきりと見分けがつくようにしていたわけではなく、民間のもしくは保護された建物に近い所から攻撃する際に民間人たちを不必要に危険にさらした。

・事実調査団は、パレスチナ人武装グループが攻撃のなされた地域に民間人を振り向けたり、民間人がその近隣にとどまるよう強制したこと、また病院施設が事実上の統治者であるハマスもしくはパレスチナ人武装グループによって軍事活動を隠すために使用されたこと、救急車が戦闘員を運ぶのに使用されたり、病院や避難所として使われていた国連施設でパレスチナ人武装グループが軍事活動をしていた、などの証拠は見つけられなかった。

アムネスティ発表国際ニュース
2009年9月15日